
営業を強化するには営業活動のマネージメントが必要不可欠ですよね。
しかしマネージメントのやり方がわからなかったり、マネージメントについての知識が少ないと、そもそも営業マネージャーが動けなかったりもします…
そこで今回は、営業マネージャーが組織強化する為の方法やプロセスについて、営業経験20年以上の”さの編集長”が解説したいと思います。
目次
営業マネージメントが必要な理由とは?
営業マネージメントとは、営業職が目標を達成するために、目標数字やモチベーションを管理することです。
営業の仕事は明確な数字(売上)として現れるため、他の仕事とは違った特殊性を持っていますよね。
つまり、経理や総務など毎日コツコツと仕事すれば必ず結果に結びつく仕事ではなく、毎日努力をしていても”売上ゼロ”という状態もあり得るということです。
このような特殊性があるのにも関わらず、営業職の場合は”売上ゼロ”という状態では「仕事をしてない」とみなされてしまいます。
それではなぜ一生懸命頑張っているのに”売上ゼロ”という結果があり得るのでしょうか?
その理由とは、営業現場には様々な利害関係者(ステークホルダー)が絡んでいるため、個人の力だけで実績を出すには限界値があるからです。
例えば営業活動に関係してくる関係者とは以下のような人々がいます。
- 現場でセールスする営業パーソン
- 商品を考える営業企画部
- 営業パーソンをサポートする営業事務
- 請求書を発行したり売上を管理する経理部
- 部品を供給するサプライヤー
- 製品サービスを購入するお客様
ここで挙げたのは代表的な関係者なので、製品・サービス、ビジネスモデルによってはもっと登場人物が多くなるはずです。
このようにたくさんの関係者が出てくるので、営業活動の複雑さは増していくばかりです。
そのような複雑な営業活動を管理するために求められるのが、営業マネージメントや営業管理能力ということになります。
営業を管理するポイントとは?
複雑な営業活動を管理するためには、ある程度のコツをつかむ必要があります。
まず押さえておきたいのは、営業マネージメントをする意味についてです。
営業活動をマネージメントする理由とは、営業スタッフの目標達成を支援し、チーム全体の数字目標を達成する為だと言えるでしょう。
そのために、営業マネージメントでは5つの項目をマネジメントしてきます。
- 基礎管理
- 行動管理
- 案件管理
- 意欲管理
- 実績管理
この5つについて詳しく解説していきたいと思います。
①基礎管理とは?
基礎管理とは、営業活動するための基礎知識やスキルを管理することです。
例えば以下のような項目が挙げられます。
- 敬語や丁寧語、謙譲語の使い分けができるか?
- ビジネスマナーが身についているか?
- 正しい名刺交換ができるか?
- 要点を押さえたコミュニケーションができているか?
これはつまり、「営業活動する上で絶対に必要な基礎要件を身につけているか?」という部分を管理するということです。
新入社員や中途社員はもちろんですが、営業に慣れているベテラン社員もチェックする体制が必要だと思います。
仕事に慣れたベテラン社員は、基礎部分を適当にこなしていることが多いので、逆に注意が必要です。
これができていない人は「そもそも営業現場に出てはいけないセールススタッフ」なので、漏れがないように管理しましょう。
その上で自己研鑽を含めた努力も促していきましょう。
具体的には「読書すること」が効果的なので、マネージャーである管理職から推奨本を提示しましょう。

➁行動管理とは?
行動管理とは、営業スタッフごとの行動を管理するということですが、管理する行動には以下のようなものが挙げられます。
- 営業リストの作成方法
- テレアポの件数
- アポイントの獲得率
- 商談数
- 受注数
- 失注数
- 販売した製品サービスの種類
管理すべき指標は会社毎に変わると思いますが、とにかく会社にとって重要な指標を管理するのが良いと思います。
これはKPI(Key Performance Indicator)とも呼ばれていて、事業を運営する上での重要指標と言えるでしょう。
KPI設定について詳しく知りたい人は下の記事を参考にしてください。
また、出来る限り詳細に数字を管理することもお勧めします。
営業スタッフを横並びに見た時、定量的な数字を見ることで、新たな気付きがあるかもしれません。
そのためには徹底した行動管理が必要なのです。
➂案件管理とは?
案件管理とは、見込み案件を管理することです。
見込案件は営業マンが個人個人で管理していると思いますが、それ以外にも会社として案件管理する必要があります。
見込み案件の詳しい管理方法については下の記事を確認して欲しいですが、新規見込みや既存顧客を問わず、案件を管理するということは、目標達成に近づくための絶対条件だと思います。
どれだけ正確に見込み案件が管理できているかで結果は変わってくるので、リクルート発祥の「ヨミ表」なども参考にしてみましょう。
④意欲管理とは?
意欲管理はなかなか難しいですよね。
むしろ人材マネージメントの中で「一番難しい」と言えるのではないでしょうか。
「意欲」とは営業スタッフのモチベーション管理を意味しています。
仕事に対する考え方は人それぞれなので、全員のモチベーションを引き上げることは難しいと思いますが、それでも仕事へは意欲的に取り組んでもらわなければいけません。
自分の担当する営業スタッフ全員が最高のパフォーマンスを出せるようにバックアップするのも営業マネージャーの仕事なのです。
モチベーション管理について語ると長くなるので、詳しくは下の記事をご覧ください。
➄実績管理とは?
実績管理とは、原則的には売上実績のことを指します。
ただし、会社によっては「粗利」を重視したり、「純利益」を重視する、「売上」を重視するケースもあるでしょう。
なので会社によって管理する実績は変わってくると思います。
他にも、様々な実績値があると思います。
- 新規開拓件数
- 既存顧客の活性化率
- インバウンドからの受注率
- アウトバウンドからの開拓数
実績管理も会社によって様々だと思うので、ビジネスモデルに合った最適な数値を管理してみてください。
営業部のマネージャーは、組織全体のパフォーマンスを上げること、そして、個人の数字目標を達成させるために動きます。
その全てを営業マンに一任するのではなく、結果が出ない問題を一緒に解決するようにマネージメントしていくのです。
そのためには、営業スタッフに強い目標達成意識を持たせることが絶対必要なのです。
マネージメントについての考え方とは?
「マネージメント」と聞くとなんか小難しい気がして、少しとっつきにくいですよね。
マネージメントは”経営管理”という意味を持つ言葉です。
経営管理とは、組織の目標を設定し、その目標達成のために経営資源を効率的に活用し、リスク管理等を実施することになりますが、マネージメントについての考え方は、アメリカの経営学者 ピーター・F・ドラッカーが生み出した概念だと言われています。
そのため、ピーター・F・ドラッカーは「マネジメントの父」と呼ばれていて、彼の著書「マネジメント」は、世界中でベストセラーになっています。
この本は難解な本として知られていますが、3回ほど繰り返して読めば、きっとその内容が理解できるはずです。
もしまだ読んでないのであれば、絶対に読むことをお勧めします。

ピーター・F・ドラッカーが提唱するマネジメントには、大きく分けて5つのポイントがあります。
- 目標を設定する能力
- 組織化する能力
- コミュニケーション能力
- 評価測定能力
- 問題解決能力
目標を設定する能力とは、目標に対して深く向き合い、具体的に設定する能力のことを言います。
これは組織が目指すべきゴール地点みたいなものなので、設定を間違うと大変な目に遭います。
組織化する能力とは、人を束ねて、組織化するマネジメント力のことです。
これは「リーダーシップ」と言い換えられるケースもありますが、「統率力」と言った方が正確かもしれません。
リーダーシップについて知りたい場合には、下の記事をご覧ください。
コミュニケーション能力とは成果を上げるための、チーム内における高いコミュニケーション能力のことを指します。
営業現場におけるコミュニケーションとは少しニュアンスが違うので、この部分は注意しましょう。
評価測定能力とは、人を測定して評価するマネジメント能力のことです。
これが一番マネージャーらしい仕事かもしれませんね。
人を評価するコツというのがあるので、詳しくはドラッカーの著書をご覧ください。

そして、問題解決能力とは、問題を見極めて、適切に処置する力を表現しています。
マネージャーは、マネージメント力の高い仕事をするために、このようなマネジメント戦略を学ぶ必要があります。
これはとても奥深い話なので、ここで語り尽くすことはできません。
なので、ぜひ一度ピーター・F・ドラッカーの著書「マネジメント」を読んでみてください。

営業マネージャーの役割とは?
営業マネージャーは”管理職”ですよね。
なので営業メンバーのマネジメントを行いますが、求められることは多岐にわたります。
- チーム全体の数字管理
- 営業職個人の数字管理
- モチベーション管理
これらをすることで、個人成績を上げて、チーム全体の数字を上げて、最終的には会社全体の業績を押し上げることを目指していきます。
そのため、営業マネージャーという役職は「会社の経営幹部である」ことを自覚する必要があります。
会社の売上を担う立場なので、経営理念やビジョン、そして経営戦略など、会社全体の方向性をきちんと理解しておくべきでしょう。
その上で、組織全体の最適化、そしてチームの最大化を考えて動く必要があります。
ただ、ここで注意して欲しいのは『闇雲に組織を拡大させない』ことです。
「売上の最大化を目指す為には、組織の最大化を目指す!」と単純に考える人がいますが、これは経営的な観点ではとても危険な行為だと言わざるを得ません。
組織の最大化を目指すことは、同時に固定費を上げることに繋がっていくからです。
日本の法制度では、一度採用したスタッフを簡単に解雇できないので、もし不測の事態が起こった場合、抱えている人件費が大きな足かせになる可能性があります。
なので、出来る限り身軽な状態で経営するのが理想的だと言えます。
それでは、どうすれば組織の最大化を目指すことができるのでしょうか?
その答えはアウトソーシングを活用することです。
アウトソーシングとは、「業務を外部に委託すること」を意味する言葉なのですが、アウトソーシングできる業務は「ほぼ全ての業務」なので、もちろん営業活動もアウトソーシングできます。
つまり管理職である営業マネージャーは「自社の正社員は営業をしない」という選択肢もあるということです。
例えば映像制作の会社だった場合、正社員は全てクリエイターにして、営業活動はアウトソーシングしてしまう、というやり方だってあります。
もしアウトソーシングに興味があれば、下の記事をご覧ください。
良いマネージャーになるには優秀な営業スタッフに依存するのではなく、役割や責任を明確にしチーム全体を底上げするように管理していくことが大事なのです。
プレイングマネージャーという働き方もある
営業職と同様に数字を持ちながら、管理職としても活躍する「プレイングマネージャー」という人がいます。
そのような人は、
- プレイヤーとしての業務
- 管理職としてのマネージメント業務
の双方を担っている貴重な人材だと言えます。
そのため、プレイングマネージャーは、絶妙なバランス感覚が求められる仕事だと言われていて、「伸びている組織には優秀なプレイングマネージャーが必ずいる」と言われるほどなのです。
その一方で、プレイングマネージャーは優秀すぎるので、営業組織が属人的になりがちです。
一般的なマネジメントとは、部下に権限を少しずつ譲渡していき、自立性を促すようなやり方になると思います。
すると部下は「信頼されている」と感じて、自分から率先して動くようになるのです。
このような組織が理想的なのですが、やはりどうしても立ち上げ段階ではプレイングマネージャーがその役割を担っていくので、その立ち回り感で組織の成長度も変わっていくと思います。
プレイングマネージャーを上手く活用すれば、組織を飛躍的に成長させることができるので、積極的に活用すべきでしょう。
プレイングマネージャーは中小企業で多く見かける役職なので、気になる人は下の記事をご覧ください。
組織強化の具体的な施策を伝授!
営業組織を強化するためには、いくつかの具体的な施策があります。
例えば社内研修を実施することです。
社内研修はほとんどの企業が実践している方法ですが、成果を上げるための原理・原則を学ぶことができます。
売れる営業マンになるための、アプローチから商談、クロージングまでの総合力の強化、又はスーパー営業マンから学ぶ営業手法など、営業パーソンが生産性を上げる為の研修内容が盛り沢山です。
しかし会社内に研修コーチとなる人材がいないのであれば、外部のコンサルティング(コンサル)を導入するという方法もあります。
コンサルティングは営業職へのテコ入れよりも、営業組織に対して、より効率的・効果的な営業組織の構築を目標として業務改善することができます。
しかし、コンサルタントを入れる場合、注意して欲しいことがあります。
それは、必ずマーケティングとセットで考えることです。
セールスのコンサルタントが教えてくれるのは、主に営業ノウハウや営業テクニックの話ですよね。
しかしそのような「机上の空論」である営業テクニックを学んでも全く意味がありません。
本質的には”マーケティングノウハウ”と”セールスノウハウ”がセットなっていなければ全く意味が無いのです。
もう少し具体的にお伝えすると、
- 見込み顧客を集客すること(=マーケティングノウハウ)
- 集客した見込み顧客をクロージングすること(=セールスノウハウ)
この2つがセットになっていなければ、営業活動は完結しないのです。
なので、営業コンサルタントを採用する場合には、その人に「マーケティングノウハウがあるのか?」というポイントも同時に確認しておきましょう。
もしマーケティングノウハウを持っていないということであれば、そのコンサルタントに依頼する価値はありません。
辛辣な意見かもしれませんが、会社内にいるトップセールスから営業ノウハウを共有してもらった方がまだマシだと思います。
チームビルディングを行う
営業組織を強化する場合、チーム力の向上も目指さなければいけません。
営業活動は属人化しやすいので、その仕組みでは組織全体の底上げにつながらないからです。
これはあくまでも一般論ですが、優秀な営業パーソンのセールスノウハウは社内共有されていないケースが多いはずです。
なぜか分かりませんが、経営者は会社内に優秀なトップセールスがいるのに、そのセールスノウハウを会社内に共有して、セールス全体の底上げをしようという発想があまり無いように感じます。
このような経営者は、会社内に優秀なセールスパーソンがいるのに、なぜか外部のコンサルタントへ研修を依頼してしまうのです。
そんな時には少し冷静になって欲しいと思います。
あなたの会社の中にも、きっと「トップセールス」と呼ばれる優秀な営業パーソンがいるはずです。
そのような優秀な人材が身近にいるのに、そのリソースを使わず放置しておくのは「宝の持ち腐れ」と言わざるを得ません。
そんなことをしていては遠回りになるので、研修を外部にアウトソーシングすることを「下策」とまでは言いませんが、決して「良策」とは言えません。
なので、まずはチーム力向上の取り組みとして、優秀な営業マンのナレッジを社内共有していきましょう。
その為にはCRMやSFAなどのツール導入が必要不可欠と言えるでしょう。
このようなツールを導入して、営業活動を定量化していくのです。
そこで蓄積したデータを基にして、定期的な営業会議を開きます。
営業チーム全員で、「どうすればトップセールスのようなパフォーマンスを発揮できるのか?」という糸口を探してみてください。
こうすることで、チームビルディングが実現していくはずです。
チームビルディングとは、目標達成のためにチームのメンバーが主体的に行動して、協力し合う組織づくりの手法をいいます。
チームビルディングは、成功するための組織づくりとして欠かすことができないので、ぜひ参考にしてみてください。

目標設定の具体例
営業戦略において、目標設定が重要であることはこれまで解説してきた通りです。
目標設定の具体例には様々なものがありますが、有名なものではリクルート社のヨミ表や目標管理シートがあります。
ヨミ表は上の記事を読んで欲しいのですが、目標管理シートとは達成率をもとにして、営業活動の進み具合を可視化したものです。
例えば、あなたの6月度の目標数字が売上150万円だったとします。
6月の日数は30日なので、「150万円÷30日=5万円」という数字が出てきます。
ということは、毎日5万円の売り上げがなければ、営業活動の進捗が良くないと判断されるのです。
つまり営業活動においては、目標までの道のりが曖昧ではいけないので、目標達成するまでの道筋を明確にすることが大切なのです。
そうすることで業務効率化が実現でき、最短距離で成果を上げることができるはずです。
特に新卒社員は手探りな状態がしばらく続くはずなので、自ら目標設計シートを作成して、自分が進むべき道筋を描いてみましょう。
そして、少しずつ目標達成できるようになると、大きな目標達成にも近づいてきます。
無理な目標ではなく、頑張れば到達できる目標を確実に押さえていくことで自信もつくはずです。
もし営業目標の達成方法がわからない場合、下の記事をご覧ください。
まとめ
営業のマネジメントは多くの会社で属人的、かつ感覚的に行われていると思いますが、営業は「全てを数字に落とし込むことができる仕事」なので、実はとても管理しやすい職種だと言えます。
この記事で得た情報を参考にして、自分の会社に合った営業管理のやり方を見つけてみてください。