営業職にとって失注することは怖いことですよね。
しかしこの壁を乗り越えなければ、一流の営業パーソンになることはできません。
そこで今回は、失注の意味や使い方などから、失注した時の対応方法、失注の防ぎ方まで解説していきたいと思います。
目次
「失注」の使い方とは?
ビジネス業界で用いられている「失注」とは、提案した商材の購入が見送られた場合や、受注や入札がキャンセルになった状況を意味しています。
営業マンであれば、誰もが聞きたくない単語に挙げると思いますが、実際の「失注」とは会社内のコミュニケーションでしか出てこない言葉なのです。
つまり、決してお客様(見込顧客)と営業マンの会話の中で出てくるような用語ではないということです。
この言葉は社内会議やミーティング、又は案件の進捗状況を上司に報告する場面で使用されるケースが多くなっています。
例えば、自社の商品・サービスに興味を持っていた顧客が最終決定を渋っている場合、「失注する可能性がある案件」と表現します。
もちろん一度失注した見込み顧客でも再び見込案件として浮上してくる可能性もあるので、たとえ今回は失注だったとしても決して無下にしないことが大切です。
失注の定義とは?
失注の定義は会社によって様々だと思います。
会社ごとに”見込みランク”を設定して、「ある一定のランク以下になっている案件は失注とみなす」という定義を設定しても良いと思います。
見込みランクの作り方については下の記事で解説しています。
ただ一般的には、「お客様に断られたタイミング」を失注にしているケースが多いと思います。
しかし、見込み案件の中には「ペンディング」というステータスがあるので、この扱いがとても厄介になります。
ペンディングとは「検討中」を意味する言葉で、まだ決定していない状態や保留になっている状態を指します。
なので、ペンディング案件は明確にお客様から断られていることが少なく、ズルズルと案件が長引いてしまうのです。
それでは、もしペンディング案件が出ている場合にはどうすれば良いのでしょうか?
その定義は様々だと思いますが、おすすめのやり方は今月~来月のあいだに受注できる自信が無いのであれば、一旦は失注扱いにすることです。
着地の見えないペンディング案件にしがみついても目標達成できることは少ないですし、その案件があることで新規開拓営業をさぼってしまう傾向も見られます。
なので、見込みが薄い案件なのであれば、一旦見限ってしまうことも重要なのです。
失注した時の対応方法
営業活動をしているのであれば、一定数は失注が出ても仕方ありません。
実際に、新規開拓営業をする中で受注できるのは2割ほどなので、残りの8割は失注すると言われています。
しかし「この案件は失注した」と判断するのは、ベテラン営業でも難しいとされています。
せっかくの見込み案件なのに、自己判断で「この案件は失注した」と決めつけて、対応を疎かにしている間に競合他社と契約されてしまうケースもあるのです。
逆に、既に顧客の心は離れているのに、いつまでも追い続けるのは時間の無駄ですし、相手にとっても「うざい」と思われてしまいます。
そこで重要なのは、出来る限りペンディング案件にせず、お客様の購入意志を明確にしてもらうことです。
とはいえ、人は急かされるのを好みませんし、何回もしつこく催促するのは良くありません。
こちらからの提案を終えている段階なのに、
- 上司に確認をとれていない
- 決裁の通過に手こずっている
- まだ社内検討できていない
などの言葉を耳にした場合は、失注案件になった可能性を視野に入れましょう。
相手の声色やテンション次第では、その意向を汲み取り営業活動を一旦中止することも大切です。
いつまでも執拗に連絡し続けることはマナー違反ですし、お互いにとって時間の無駄でしかありません。
クライアントに悪い印象を与えるだけでなく、今後の営業活動にも支障が出る可能性が否めません。
失注を防ぐ方法
営業活動していれば失注は出てしまうものなので、失注を100%防ぐ方法はありません。
しかし、失注する割合を下げる方法はあります。
それは一次対応を丁寧にすることです。
一次対応とは、見込み顧客から問い合わせがあった時のヒアリングや、テレアポ営業での商談前ヒアリングなどが該当します。
つまり、具体的な商談や打ち合わせに入る前に、基本となる「顧客になり得るか?」という精査をする段階になります。
これをきちんとやるだけで、失注率は格段に改善します。
その分、見込み顧客の数が減るかも知れませんが、この段階のフィルターに引っかかる見込客は「どうせ受注しない案件」なので、対応する無駄(=工数)が排除できただけでも十分プラスだと思います。
そうではなく、いかに「良質な見込顧客を増やすか?」という本質的な部分に注力するようにしましょう。
失注が出るとショック…
営業マンは、何度も商談を繰り返す中で、顧客との信頼関係を築き上げていきます。
同時に、自社の商品・サービスを売り込むチャンスを模索していきます。
営業活動は決して簡単ではないので、根気強く続けていかなければ、見込み案件を受注することはできません。
そのため、長期間にわたって懸命に交渉を進めてきた見込み顧客にもかかわらず、メール返信だけで失注を知った時には、とても残念な気持ちになることでしょう。
今までの努力が無駄になったことを受け入れられず、やる気を失ってしまうケースもあるのではないでしょうか。
しかし、そのような後ろ向きな気持ちは一旦ぐっとこらえて、まずは状況を伝えてくれたお客様に感謝のメールを返信しましょう。
取り急ぎ、検討してくれたことに対して感謝の気持ちを述べるとともに、わざわざ見送りになったことを教えてくれたことにも感謝の気持ちを伝えましょう。
今回はペンディングになったとしても、来年は受注する可能性もありますし、二度と買ってくれない訳ではありません。
「自分の売り上げ目標が未達になるかも…」という雑念は一旦捨てて、まずはお客様第一に考えることが大切なのです。
残念な気持ちを切り替える
失注が出てしまうと、どうしても残念な気持ちが出てしまうので、ウジウジしてしまう営業スタッフは多いと思います。
しかしながら、企業経営とは決して慈善事業をしている訳ではありません。
売上&利益を生み出し、雇用している社員に給与を支払う必要があります。
そのための源泉になっているのが、外回りしている営業マンが持ち込む「売上」なのです。
よって、失注が出たからといってクヨクヨしている暇はありません。
気持ちを切り替えながら次々に新規受注を獲っていかなければならないのです。
失注理由を聞こう!
先ほども解説したように、営業現場では絶対に失注が出てきます。
なので、失注が出てしまうのは仕方がないと割り切って、失注した理由を必ず確認するようにしましょう。
これがわからないと、その後も同じような失敗を繰り返してしまう危険性があるので注意が必要です。
まず取引先の担当者に連絡します。
失注してから数日が経過した後では、相手の記憶が薄れてしまい、正確な失注理由を聞き出せないかもしれないので、できる限り早めに対応することがポイントです。
そして、体裁が整えられる(=考える余裕のある)メールなどではなく、相手の本音が聞ける電話か訪問で聞くようにしましょう。
失注した理由を聞く時に大切なことは、「相手の本音を聞き出す」ことです。
表面上の取り繕った理由などを聞いても、全く意味がありません。
とはいえ、相手(見込み顧客)からしたら、わざわざ導入を見送った理由を伝える義務や義理はありません。
なので、自身の力不足、意向に沿った提案ができなかったことを詫びた上で、丁寧な姿勢で失注になった理由を聞き出すのです。
この時の聞き方としておすすめなのは、まず自分を蔑むことです。
例えば以下のような聞き方が代表的になります。
- 今回何か私の不手際がありましたでしょうか?
- 今回見送りになった理由は、私の対応が原因でしょうか?
失注する理由の中には、担当営業マンが無礼で導入を見送るケースもありますが、そのようなケースは実際ほとんどありません。
なので、上記のような聞き方をしたとしても、「そんなことありませんよ」と言われるはずです。
このように一つ情報を聞き出すことで、お客様の防衛心理は一気に下がるので、本音で失注理由を話してくれるようになります。
もし本音の失注理由が聞けた場合、自分では気付かなかったクセや提案ミスが発覚したり、競合他社の優位性、製品の欠陥が見つかったりするケースもあります。
このような現場の意見はとても重要なので、それをフィードバックとして真摯に受け入れましょう。
そのような失敗の積み重ねが、あなたをトップセールスに押し上げてくれるのです。
失注案件はどうする?
失注案件の管理方法は会社によって異なると思います。
CRMやSFAで全て管理しているという会社もあれば、失注案件は管理していないという会社もあります。
結論から言えば、失注案件でも必ず管理するようにしましょう。
その理由はとても明確で、人の心や考え方は移り変わるからです。
例えば、1年前と考え方が全く一緒というビジネスパーソンはいないはずです。
つまり、人の考えが変われば、ニーズも変化するということです。
失注案件へのアプローチ方法
再び案件が失注になることを恐れ、お客様に対して積極的なアプローチができていない営業マンは多いと思います。
せっかくのご縁で知り合った見込み顧客に関わろうとしないのは、営業マンらしからぬ愚行だと思います。
過去に失注したということは、少なからず自社の製品サービスに興味がある証拠なので、「失注案件=見込顧客」と考えて定期的にお伺いを立ててみてください。
このような営業活動はリードナーチャリングと呼ばれていて、新規開拓営業においてとても重要だと言われています。
失注案件の掘り起こしでは、見込みリストを作成するための宣伝費用や労力がかかりません。
また、過去に1度くらいは接触しているため、商材について細かく説明する手間を省けます。
つまり、とても効率的な営業活動が実現するのです。
失注案件の掘り起こし方
では、どのような方法で見込み顧客を掘り起こせば良いのでしょうか?
色々な営業手段がありますが、失注案件を掘り起こすには、メール営業がおすすめです。
メール配信システムは、比較的リーズナブルな価格帯で使用できる上に、顧客の反応を把握しやすいからです。
まずは、どんな名目でも良いので、過去に失注した見込み顧客に対して一斉メールを送信してみましょう。
- 新機能が追加されました。
- サービス導入数が1,000件を突破しました。
- キャンペーン実施中です。
その中で一定数は「改めて条件を聞かせて欲しい…」という人が必ず出てきます。
このようにアプローチ数を最大化させながら、購買意欲を刺激することが重要なのです。
もう少し深堀したい場合は、マーケティングオートメーション(MAツール)を導入して検証しても良いと思います。
出来る限り業務効率化するために、ITツールを積極的に取り入れるようにしましょう。
失注は怖くない!
営業職を続けている限り、失注を避けて通ることは極めて難しいと思います。
失注は非常に残念なことですが、過敏に恐怖感を抱くことなく、むしろ果敢にセールスする姿勢が大切です。
成果を上げられなかった時の精神的なショックは、営業マンとして成長する糧になるはずです。
なので、営業活動をする中で「失注が出るのは当たり前」と認識するようにしましょう。
実際にトップセールスマンと呼ばれている人達も、日常的に失注を繰り返しています。
しかし、彼らは案件が失注になった時点で即座に気持ちを切り替え、前を向いて歩き出しています。
このように前向きな姿勢で仕事する為に重要なのが「保有している見込案件数」になります。
見込案件をたくさん保有する
失注が出ると落ち込んでしまうのは当たり前の話です。
しかし、なぜ失注が出ると落ち込むのでしょうか?
それには大枠で2つの理由が考えられます。
- 一生懸命に提案&対応したから
- ノルマの達成に支障が出るから
1については感情論なので仕方ありませんが、それも含めて2が達成できればチャラになるはずです。
つまり突き詰めると「ノルマ達成」さえできれば、失注はさほどショックではなくなるということです。
例えば、あなたは既に今月のノルマを100%達成していたとします。
そんな状況で、返答待ちの見込み顧客から連絡があって「今月の導入は見送ることにしました。」と言われたらどんな気持ちになるでしょうか?
もちろん見送りになったことは残念に感じると思いますが、既にノルマを達成しているので、さほどショックは受けないはずです。
むしろ来月の見込み案件になるので、それはそれでOKくらいの気持ちだと思います。
つまり失注という壁を乗り越える為には、自身が保有する見込案件数を増やすしかないのです。
見込み案件の増やし方には、色々なやり方がありますが、個人的に増やすやり方と、会社として取り組むやり方の2種類があります。
この辺りについては下の記事をご覧ください。
まとめ
たとえ見込み案件が失注したからといって、いつまでもクヨクヨしていては時間が勿体ないです。
後悔して十分反省した後は、ぜひその経験を次の仕事に活かしてください。
心が折れそうな時でも顔を前に向けて、新規見込客を増やす為の努力をしながら、常に新しい施策を考えましょう。
愚直に取り組む中で、同僚や顧客からも信頼が得られるはずです。
入社した直後から大口顧客を次から次へと開拓できるスーパー営業マンなんて殆どいません。
目先の利益にとらわれることなく、地道に努力を重ねていきましょう。