
「営業は足で稼げ!」と昔から言われていますが、そのような旧態依然の営業活動は終わりを迎えつつあります。
現代営業では、「如何にデータを効率よく収集して、合理的な営業をするのか?」がテーマになっています。
その為に必要なことが「営業現場の見える化」です。
そこで今回は、「見込み案件を管理して営業現場を可視化する」ことについて解説したいと思います。
営業職の人はもちろんですが、営業責任者の人もぜひご覧ください!
営業プロセスを可視化する意味
かつての営業現場では、営業担当者が自ら顧客ごとに営業戦略を練って、それを実践し、契約を受注する、というのが一般的でした。
しかしこのようなやり方は、以下のような問題点があると言われています。
- 営業マンの力量によって結果が大きく変わる
- 営業担当者が自分のセールスノウハウを隠してしまう
- 成績が伸び悩んでいても改善点が見えにくい
営業活動にはどうしても”属人的”な部分があるので、「仕組み化することが難しい…」と言われています。
なので、どの営業スタッフであっても、常に一定以上の成績を上げ続けるために、営業フローを見直す必要があるのだと思います。
つまり、営業プロセスごとに条件を設定し、例えば「アタック件数からの受注数は適正なのか?」などを検証することが必要なのです。
また、ターゲットリストにアプローチをして、商談してからクロージングするまでの進捗を確認することも必要不可欠です。
この「行動管理×案件管理」を標準化することで、どの営業スタッフでも一定以上の成果が挙げられる基礎が出来上がります。
営業スタッフ毎の力量判断や分析はとても難しいのですが、「行動管理×案件管理」で数値化すれば改善点が見えやすくなるはずです。
もし成果が上がらない場合は、営業マンごとのアタック件数や面談数、成約率などを確認すれば、容易に問題点が見つかるはずなので、まずは実績データを確認してみてください。
このようなデータをまとめる営業支援ツールはたくさんありますので、まずはその辺りに触れていきたいと思います。
営業を”見える化”するツールとは?
営業活動を支援してくれるITシステムはたくさんあります。
その中でも代表的なのがCRMとSFAです。
CRMとは、Customer Relationship Managementの略で顧客管理ツールとも呼ばれていて、大きく3つの機能があります。
- 顧客情報や履歴を入力するデータ管理機能
- 顧客へのメール配信などのプロモーション機能
- 顧客のデータ分析などのサポート機能
CRMでは顧客とのやり取りを履歴として保存できるため、営業担当者の日報としても活用することができます。
プロモーション機能では、セミナーの案内から顧客の満足度調査などアンケートの集計も行うことができます。
SFAは「セールスフォースオートメーション」の略で、営業支援ツールとも呼ばれています。
営業担当者をサポートしながら生産性を高めるためのツールという位置付けなのですが、顧客管理や行動管理、スケジュール管理機能があるので、日々の営業活動のToDoリスト機能にもなりえます。
そしてCRMとSFAには共通している機能もあるのですが、
- 顧客情報を管理したり、関係構築に特化しているのがCRM
- 営業担当者の行動管理やサポートに特化しているのがSFA
といった大雑把なイメージで大丈夫だと思います。
現代のITツールはこの両方を兼ね備えているケースが多いので、もはや分ける必要がないかもしれません。
とにかく営業員&管理者が使いやすくて、月額料金(=ランニングコスト)が安いものを選ぶことが選定ポイントになるでしょう。
営業プロセスを見直そう!
ここまで営業活動を可視化する意味や、それを支援するITツールについて解説してきました。
次にやるべきことは「営業プロセス」を理解することです。
営業プロセスには主に6つのフェーズがあると言われています。
- ターゲットリストを抽出
- リストからのアポイント獲得
- アポイント先への訪問、面談
- 提案営業
- クロージング
- 契約手続き
各フェーズごとに目標となる数値を設定するのですが、もし営業活動が上手くいっていないのであれば、一度営業プロセスを見直してみるべきでしょう。
例えば「1日の電話件数は●件」という数値目標を設定し、電話からのアポイント率や、面談からの受注数などから”受注率”を割り出すのです。
そうすれば逆算的に、絶対必要数が導き出せるので、「ターゲットリストの数やアプローチ数が足りているのか?」という部分を論理的に理解できます。
法人営業の場合は、「確実にキーマンに面談できているのか?」ということもポイントになります。
もしあなたがセールスマネージャーなら、各営業マン毎にこの数字を比較してみてください。
横並びで比較すると、受注率に個人差が出てくるのですが、この個人差は能力差ではなく、ごく微妙な違いによって生じてくる差だと言われています。
ほんの少しのズレでも、母数が多くなると大きなズレになっていくことは理解できると思いますが、まさにその現象が起こっているのです。
このような場合には、営業マン毎のセールスフローを確認してみる必要があるでしょう。
例えば、以下のようなセールスフローを営業担当者に確認してみましょう。
- 身だしなみはしっかりしていて、清潔感があるか?
- 言葉遣いや敬語は正しいか?
- ビジネスマナーができているか?
- 顧客へのヒアリングは適切か?
- どのような営業資料を使っているのか?
- テストクロージングをしているか?
- きちんとネクストアクションを決めているのか?
実績が出せていないダメ営業マンとトップセールスマンでは、このような質問に対して明確な違いが出てくるはずです。
営業責任者としてチームを底上げしたいのであれば、その違いを探り出しましょう。
確実に受注をとるためには、きちんとクロージングすることも必要です。
ただ、そのやり方は各営業マンによって違うので、クロージングのポイントや必要なヒアリング項目を標準化することが大切です。
法人営業の場合は、提案をしてから顧客側がすぐに結論を出してくれることは少ないはずなので、テストクロージングを活用することも有効的です。
もし相手(担当者)が前向きに検討してくれていても、社内稟議や申請で却下されるかもしれないので、法人営業の場合は進捗状況を確認する「案件管理」が重要となってくるのです。
見込み案件を”見える化”する方法
営業担当者がターゲットリストからアプローチした結果、将来の売上に繋がりそうなので、これからも継続アプローチを仕掛けていく案件を「見込み案件」と呼んでいます。
受注確度を上げるためには見込み案件を見える化することが重要だと言われていますが、具体的には見込み案件に見込度合い(案件レベル)を付けて管理していきましょう。
例えば以下のようなイメージになります。
レベルA:今月受注できる案件
レベルB:3ヶ月以内に受注できる案件
レベルC:半年以内に受注できる案件
レベルD:着地が未定のペンディング案件
営業部は「今月の数字」を追っているはずなので、「今月の見込み案件」を把握することが一番重要なはずです。
なので、原則的には「期間」で案件管理することがおすすめです。
その期間で区切った上で、受注確度も管理しましょう。
つまり、「期間×受注確度」を把握して、できる限り正確な案件管理を試みていくのです。
ちなみに、受注確度は以下のようなイメージになります。
見込度A:99%受注できる案件
見込度B:50%受注できる案件
見込度C:20%受注できる案件
見込度D:未定のペンディング案件
このように「レベルA:今月受注できる案件」の中に「見込度Aが何件ある?」という管理をすれば、当月の受注数がある程度想定できるようになります。
例えば、毎月初に営業担当者から見込み案件リストを提出してもらいます。
その見込み案件リストの「レベルA」が以下の通りだったとします。
見込度A:99%受注できる案件×5件
見込度B:50%受注できる案件×3件
見込度C:20%受注できる案件×6件
見込度D:未定のペンディング案件×10件
もし商材単価が100万円だった場合、その数字を見込み案件のリスト数に乗じていきます。
すると以下のような数字(今月の受注見込み)が導き出せます。
見込度A:99%受注できる案件×5件×100万円=495万円
見込度B:50%受注できる案件×3件×100万円=150万円
見込度C:20%受注できる案件×6件×100万円=120万円
見込度D:未定(0%)のペンディング案件×10件×100万円=0円
この数字を合計すると「765万円」という数字が出てきます。
もし今月の売上予算が1,000万円だった場合、「765万円-1,000万円=-235万円」と不足金額が導き出せますよね。
つまり、月初の段階で不足分が出ているので、「目標達成するためにはどうすればいいのか?」という課題が明確になるはずです。
後は、不足する235万円を埋めるだけの見込み案件を探し出す動きを部下へ指示するだけです。
これを数か月繰り返せば、「営業マンAは正確に見込み案件を管理できているが、営業マンBは全然正確じゃない」ということが可視化されていきます。
これによって、「営業マンAはそのままの数字でOKだが、営業マンBの見込み管理は曖昧なので、見込度Bは35%、見込度Cは10%に修正しよう」という改善も行えるようになります。
このような改善を繰り返すことで、「確度の高い見込管理」が出来上がるのです。
見込み探しを自動化する
ここまで読み進めた人は、「どうすれば営業活動が見える化するのか?」という部分が理解できたと思います。
結論としては「見込案件を見える化」すればいいのですが、これが理解できたら次のステップに移行できます。
次のステップとは「見込み探しを自動化する」ことになります。
現在の営業活動は、営業マンがテレアポして見込客を探すような時代では無いので、できる限りリード獲得は自動化することをオススメします。
つまり、インバウンドマーケティングを実施するということになります。
そのやり方にはいくつかあるのですが、大別すると下の2種類に分類されます。
ローテク:代理店展開、営業代行、異業種交流会への参加など
ハイテク:純広告、オウンドメディア、SNSマーケティングなど
ローテク(ロー・テクノロジー)に代表されるのは、代理店展開や営業代行、名刺交換会へ参加することになります。
どれも人が動くことによって見込顧客を探し出すので、ある意味では昔ながらの人海戦術といえるでしょう。
代理店展開をする場合には、代理店制度を構築して、代理店募集する必要があります。
この辺りについて詳しく知りたい人は下の記事をご覧ください。
営業代行は依頼する業者選定から始めていきます。
一口に「営業代行サービス」といっても様々な種類があって、かなり奥深い話になるので、詳しくは下の記事をご覧ください。
名刺交換会も効果的な営業方法ですが、上手な活用方法があるので、そのやり方を知りたい人は下の記事をご覧ください。
ハイテク(ハイ・テクノロジー)に代表されるのはトリプルメディアを活用することです。
マーケティングに詳しくない人は「トリプルメディア」を知らないかもしれませんが、以下のようなモノを言います。
- ペイドメディア:純広告媒体
- オウンドメディア:コンテンツマーケティング
- アーンドメディア:SNSマーケティング
メディア運営を成功させるためにはコツがあるので、こちらもかなり奥深い話になってきます。
また、メディア運用には専門的な知識が必要なので、もし検討したい場合には下の記事を参考にしてください。
営業成績を見える化しよう!
営業業務を見える化するというのは「問題を顕在化させる」ことを意味しています。
これは業務改善をする為には必要なことだと思いますが、営業成績を見える化することには注意が必要です。
例えば、売上数字だけを担当者ごとにグラフ化して、それを会議で発表しているとしたら、そのような愚行は今すぐにやめてください。
そんなことをやっても、売上達成できず営業不振の解決策も見いだせない営業スタッフのモチベーションは下がる一方です。
売上実績という結果のみで担当者を叱責したとすれば、現代ではそれを「パワハラだ!」と捉える人もいるはずです。
そのような一方的にプレッシャーかけるやり方はもはや時代遅れで、時代錯誤なやり方だと認識しましょう。
営業活動について「気合い&根性論」で語る人がいますが、これはまったくロジカルではありません。
このようなやり方をしている人は「自分で解決策を探し出せ!」という指示しているのも当然なので、センスが良いスーパー営業マンであれば問題ありませんが、8割方の営業マンは困ってしまいます。
つまり大切なことは、売上グラフを作ることではなくて、担当者ごとに実績を見える化し「その目標を達成するために何をすればいいのか?」という明確な道標を示してあげることなのです。
目標達成できない人のあるあるネタになりますが、「目標達成するためのやり方が分からない…」というケースが大半だと思います。
これは受験勉強も同じなのですが、「どうすればテストの点数が上がるのか?」というロジック(勉強のやり方)を学校では教えてくれません。
これと同様に、会社では「どうすれば営業実績が上がるのか?」という具体的なロジックを教えてくれることがありません。
これでは全体を底上げできるはずありませんよね。
ノルマ達成については下の記事でも解説しているので、もしよければご覧ください。
つまりやるべきことは、営業活動を可視化して、そのデータを基にした細やかな指導をすることなのです。
データを集めて営業を見える化すれば、
- どれだけの件数にアプローチをかけているか?
- 何件商談しているのか?
- どれぐらいの見込み案件を持っているのか?
という営業現場が可視化されていきます。
あとはその状況を確認して「事実に基づいた指導」を行うだけです。
これは主観的な話ではなく、事実に基づいた客観的な話になるので、かなり説得力があるはずです。
このような話し方をすることで、営業スタッフも素直に受け入れることができるのです。
ぜひ営業フローを改善して、売上アップを目指しましょう!