
個人企業とは個人事業主やフリーランスを指す言葉として使われています。そのような個人事業から法人成りするには様々なステップがあると言われています。
そこで今回は、個人事業主として独立するメリットや起業する方法について解説していきたいと思います。
概要
個人企業として独立する
会社に勤めていたサラリーマンが、会社を辞めて独立・起業するとき、大きく分けると個人企業(個人事業主)として独立するか、法人登記をして事業会社を設立するかの2択になります。
法人登記した方が良いような気がしますが、実際はそんなことありません。
個人だろうが法人だろうが、仕事して稼いだ所得を申告して、きちんと税金を支払えば何も問題はありません。
ただ、開業届を出して個人事業主になるか、法人登記をして会社を設立するか、どちらにもメリット&デメリットがあることは事実です。
事業として継続的に行なう意志がある人は、「どちらの事業形態で起業した方がメリットがあるのか?」を慎重に選ぶ必要があります。
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個人事業には開業届が必要
個人企業として独立するのはとても簡単ですし、費用は無料です。
自分が事業をしたい地域を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(いわゆる開業届)を提出するだけで済みます。
そこに記載する内容は、納税地や氏名などの基本情報と、事業に関する記述だけなので、たった1枚の書類を提出するだけですし、記入方法は役所の人に聞けば教えてもらえるので、全然難しくありません。
提出した書類に不備がなければ、その日から個人事業主として活動することができます。
ただし、個人事業主として独立したからには、「自分は経営者(社長)」であるという自覚が必要になります。
たとえサラリーマンをしている人でも、個人事業主は自分の事業なので、甘えは許されません。
もし専業の個人事業主なら、社会保険や残業代、給与&厚生年金はありませんし、自分や家族の生活を保証するのは全て自分自身になります。
その代わり働いて得た所得は全て自分のものになります。
税務署に認められる範囲で、経費(所得を得るために必要と見なされるお金)を自由に使うこともできます。
経営と経理の知識を最低限勉強しなければいけませんが、自分のやりたい仕事で目標(以上)の所得を得るのは、個人企業として独立することの大きな魅力と言えます。
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個人企業と法人企業の違い
個人企業と法人企業の違いは手続きと税制上のメリットにあります。
個人企業の開廃業が税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を出せば済むのに比べて、法人企業は法人登記をしなければなりません。
この手続きはかなり複雑で時間もかかり、登記費用は全て自分でやったとして約30万円(株式会社の場合)ほどかかります。
また、会社を設立するために銀行口座の開設や社印の作成などの準備も必要です。
このため、一人で独立するときはまず個人企業からという人も多いです。
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合同会社という選択肢もある
会社を設立する上で、株式会社以外にも選択肢はたくさんあります。
その代表例が合同会社です。
合同会社とは法律で認められた法人形態ですが、株式会社と比較してあまりメジャーではありません。
その理由は合同会社として設立される数が少ないからです。
外資系の会社は会計上のメリットがあるので、AppleやGoogleなど名だたるグローバル企業は合同会社として登記されています。
つまり、合同会社は株式会社と比較して経済的なメリットが大きい仕組みといえます。
例えば、株式会社は設立するのに30万円ほど掛かりますが、合同会社は6万円ほどで法人登記できます。
これだけでも、資金の乏しい設立当初は大きなメリットと言えます。
しかし、合同会社が選択されないのには様々な理由があります。その主な理由は以下の通りです。
- 法人登記のコストが安いので、お金がない会社と思われる
- 株式会社よりも世間的なイメージが悪い
- 合同会社とは取引しないという企業もある
この他にも、合同会社では「代表取締役」という肩書が使えないので、「代表社員」という肩書になります。
しかし、「代表社員」という言い回しがカッコ悪いので、名刺では「代表」という肩書にしているケースが多いです。
このように、自分自身でも合同会社のデメリットを実感している人も多いのが実態です。
この辺りは慎重に選ぶ必要があると言えるでしょう。
個人事業主から法人になるタイミングは?
個人事業主と比較して、税制上のメリットは法人企業の方が大きくなります。
まず個人企業は所得税を納めますが、累進課税で4,000万円以上は最大の45%の税率がかかります。
それに比べて、法人税は最高で23.4%(平成30年4月1日以後の開始事業は23.2%)です。
よって、所得が大きくなるほど個人企業の方が税金を多く納めることになります。
ただし、個人企業は赤字なら税金を払わずに済みますが、法人は赤字でも税金を払う必要があります。
状況にもよりますが、年収が800万円を超える辺りから法人の方が税率が小さくなるので、この辺りで法人化することも考慮しましょう。
また損益通算については個人企業は3年で、所得の種類によっては別計算になりますが、法人企業は9年で事業分野に関わらず通算できます。
経費についても法人企業の方が認められる範囲が広く、節税効果については法人企業の方がかなり有利になります。
関連記事:フリーランスとは個人事業主|副業から自営業として独立する方法
個人事業主のメリット
独立して開業届を出して個人事業主になることのメリットは4点あります。
メリットその1
1つ目は自分の好きな仕事を自由に選択できることです。
会社員であれば、雇用先である会社の意向を無視して仕事をすることはできませんが、個人事業主は自分が責任を負う代わりに自分のやりたいように仕事を選ぶことができます。
よって、自分がやりたいことを優先して、やりたくないことは「やらない」と自分で判断することができるのです。
サラリーマンではこのようなことができませんので、この点は個人事業主のメリットと言えます。
メリットその2
2つ目は働いて得た所得は全て自分のものにできることです。
会社員はボーナスなどの査定で、ある程度仕事の内容を評価してもらえますが、基本的に給料は同じ職種・職能なら同額になります。
しかし、個人事業主は自分の裁量で収入を増やして、所得に応じた税金を払えば、残りは全て自分のものにできます。
もちろん失敗のリスクはありますが、成功すれば会社員時代より多くの収入を得ることができます。
この点は独立起業することの魅力と言えるでしょう。
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メリットその3
3つ目は副業をしたり、投資をしたり、収入源を複数持てることです。
働き方改革により、副業を解禁する企業も出てきましたが、副業を禁じている企業はいまだに多く、自由に副業できるようになるにはまだまだ時間が掛かります。
しかし、個人事業主はサラリーマンと違って就業規定などが無いので自由に副業できます。
また、所得が増えれば余剰資金で株式投資や不動産投資をして不労所得を増やしていくこともできます。
会社員も投資することはできますが、あまり規模が大きくなってくると、会社の副業禁止規定に触れるリスクがあるので、個人事業主ほど自由にすることができません。
関連記事:副職はみんな何してる?おすすめの副業ランキング1位~5位
メリットその4
4つ目は様々な節税ができることです。
まず青色申告を行なうことで、複式簿記による帳簿付けが必要ですが、青色申告特別控除額65万円を収入から控除できます。
また税務署を納得させる根拠さえあれば、ほぼ上限なく経費(仕事のために必要なお金)を収入から引くことができます。
経費による節税効果は抜群で、サラリーマンでは考えられないほどの節税効果があります。
その方法は様々なものがあるので、ネットや本などで調べた知識を活用すればかなりの金額が節税できます。
関連記事:個人事業主の副業はどれだけお得?気になる節税やメリット&注意点
個人事業主の副業
サラリーマンの副業は就業規則で禁止している企業が多いですが、個人事業主は関係ないので、本業がおろそかにならない限り副業に取り組んでもいいでしょう。
特に独立してから事業が安定するまでの時期は収入面で苦労することが多いので、副業で補うことも必要になります。
個人事業主は自分で仕事の配分を行なう為、副業する時間を作りやすいという点もポイントです。
収入の多面化は無理がなければ生活が安定するので、検討する価値がありそうです。
関連記事:ストック型ビジネスの副業は個人事業主に最適|ストック収入の作り方
個人事業主におすすめの副業
個人事業主がすべき副業は、アルバイトなど長時間拘束されるものはあまりおすすめできません。
株式や不動産などの投資関連や、本業の空いた時間に入れられる在宅ワーク、ネットオークション、クラウドソーシングなどが向いているでしょう。
投資関連は資金がネックになりますが、手元資金に余裕があるのであれば、本業に支障が出ない範囲で積極的にすべきでしょう。
本業の業種・業態や種類によっては、忙しい時間が午前や午後に集中するなど、労働時間に偏りが出てしまう場合があります。
このような仕事をしているのであれば、パソコンやスマートフォンでもできる在宅ワークが相性が良いと言えます。
それほど労働時間に偏りがなくても、自分の裁量で時間配分ができることが多いので、好きな時間に作業ができる在宅ワークは個人事業主向けの副業と言えるでしょう。
個人企業を法人化するタイミング
前述しましたが、個人事業主は年収が多くなるほど累進課税で納める税金が多くなってしまいます。
よって、ある程度所得が増えたら法人化して節税することを検討するようにしましょう。
法人化するタイミングの目安としては、年収が800万円~1,000万円のあたりと言われています。
このあたりで法人化した方が税金が安くなるので、年収がこのレベルになったら法人化するようにしましょう。
個人事業主が法人登記して会社を設立することを「法人成り」と言いますが、収入が500万円を超えたぐらいで、さらに今後の収入増が見込めるのであれば、少し早くても法人成りを視野に入れましょう。
関連記事:フリーランサーとしての働き方|フリーランスと自営業の違い
法人化の手続き
法人化の手順を株式会社設立の例で簡単に説明していきたいと思います。
まず最初にすべきことは、会社定款を作成することです。
定款は会社の基本的な運営規則を書面にしたもので、会社法に則って作成する必要があります。
また株式会社の場合、定款に法的拘束力を持たせるために公証人による認証が必要です。
その為には最寄りの公証役場に出向かなければいけません。
定款認証を受けて定款の謄本が作成できたら、次に資本金の出資を行ないます。
この時点では会社は設立されていないので会社の銀行口座はありません。
よって、個人事業主本人の口座に資本金を払い込みます。
必ず本人名義の口座(口座の一致)でなければならないので注意しましょう。
最後に設立登記を行ないます。
法務局がホームページで公開している「株式会社設立登記申請書」をダウンロードして内容を記入します。
届け出先は自分が会社の「本店」を設立する地域を管轄する法務局になります。
「株式会社設立登記申請書」と定款の謄本以外にも、申請内容に応じて必要な添付資料があるので調べておきましょう。
不備があったときは法務局から連絡があるので、補正して出し直します。
不備がなければ1週間~2週間ぐらいで登記が完了します。
費用は前述したように全て含めて約30万円ほどになりますので、あらかじめ予算として組むようにしましょう。
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