営業職は「残業が多い仕事」だと言われていますが、それには営業独特の働き方や仕事内容が関係しています。
そこで今回は、「営業職の残業はなぜ多くなるのか?」という疑問について、また業務内容やみなし残業などもわかりやすく解説していきたいと思います。
既に営業職として活躍している人だけでなく、これからセールスに転職したい人もぜひご覧ください。
目次
営業職は残業が多いの?
営業職は残業が常態化している職種なので「きつい」とか「大変」と言われることが多い職業だと思います。
他の職種でも連日残業している職種はたくさんありますが、営業職の場合には残業続きが常態化していますよね。
残業はもともと仕事の延長線なので、あくまでも労働時間にカウントされていきます。
企業から求められている仕事をこなせていない場合、その社員は残業を指示されることになりますが、その間はもちろん”割増賃金”を含めて給与が発生することになります。
営業ノルマが残業原因になっている
営業職の場合には明確なノルマや予算が定められているため、残業せざるを得ない状況に陥りやすいと言われています。
ノルマがどのように設定されているかは会社によって異なりますが、一般的には毎月これだけはクリアしなければいけない最低基準(営業予算)が定められているので、それが営業スタッフごとの”採算ライン”となっているのです。
それは売上金額で定められていることもあれば、契約件数、粗利金額などで決まっていることもあり、現場で何が重視されているかによって営業ノルマは多少違ってきます。
ただ、そのノルマが達成できないと減給になったり降格させられるなど、自分にとっての不利益となるため、ノルマ未達成の状況で月末が近づいてくると、気軽に帰宅することができず、毎日残業して目標達成するために邁進しなければいけません。
そうならないように月初から必死に働いている営業パーソンはとても多くて、結局いつも忙しくなってしまうのです。
営業職には残業代が出ない!?
たとえ営業職に配属されても「残業した分だけ残業手当が出るから全然大丈夫!」と思っている人がいるかもしれません。
しかし「働いた時間に見合うだけの残業代が出ない現場が多い」という事実を知っておいた方が良いでしょう。
それどころか「そもそも残業代すら出ない…」というブラック企業もたくさんあるので、営業職への就職を目指す人は注意が必要です。
このような待遇になってしまうのは、営業という仕事内容が特殊だからです。
先ほども少し触れましたが、セールス職にはほぼすべからく”営業ノルマ”が設定されています。
このノルマは絶対に達成しなければいけない数字なので、営業職は死に物狂いで達成する方法を日々考えていることでしょう。
なぜかと言えば、営業ノルマが達成できないということは、営業職にとって「仕事をしていない」ことと同義になるからです。
営業職に求められることは「売上を作ること」なので、与えられたノルマが達成できていないと、売上も作れないことになります。
そのような事実は社内共有されてしまうので、周りからの冷たい視線に耐えられない人もいるはずです。
このような事情があって、営業職の人は自ら進んで残業してでも「絶対にノルマを達成したい!」という気持ちになるのです。
それでも一定数は”ノルマ未達成”の営業スタッフが出てきてしまうというのが経営者の悩みのタネになっています。
このような状況を、営業マンは会社視点(経営者の目線)で考えてみる必要があると思います。
経営者が従業員へ支払う給与というのは、端的に言ってしまうと「労働力の提供」に対して支払われています。
つまり指示した仕事をこなしてくれた対価として給料が支払われるのです。
そのような観点で見た場合、ノルマ達成できない営業職の人は仕事をしてないことになるので、支払った給与に見合うだけの労働が提供できてないことになります。
そのような状況なのに営業職の人が「自分が提供できなかった労働力を提供したいので、超過する分の残業代を別でください!」と言ってきたら、経営者はどう感じるでしょうか?
- ノルマ未達成の無能営業マンに約束通り月給を支払ったのに、さらに残業代まで要求されている。
- 仕事が出来ないなら、自分の費用と責任で業務遂行するべきではないか?
- なんでダメ営業マンの仕事をフォローするのに私が身銭を切らなければいけないのか?
もしあなたが雇用主なら、このように憤慨するはずです。
このような状況を外注先でイメージしてみると、大きな矛盾に気が付くはずです。
外注先の営業代行会社に月50万円の業務委託費を支払いました。
依頼した業務内容は「30日間で新規受注10件を獲ること」です。
新規受注10件をコミットメントしていましたが、30日間経過した段階で新規受注は6件という着地になりました。
残り4件が不足しているので、営業代行会社は追加予算として30万円を請求してきました。
いかがでしょうか?
普通の感覚を持ち合わせているのであれば、この営業代行会社は正気ではないと思うはずです。
営業職の人が残業代を請求するということは、このような感覚と似ているのです。
このようなロジックが理解できている当事者意識のある営業パーソンは、あえて残業代を申請せずに、サービス残業をしながらノルマ達成することを目指しています。
もちろんサービス残業を推奨するわけではありませんが、実態としてこのようなケースが多いはずです。
正当な手続きを踏めば残業代は申請できると思いますが、なかなかそれを申請しづらい職種が営業職なのです。
なので営業職として働くのであれば、基本的に「残業代は出ない」ものだと考えた方が無難だと思います。
このような結果になるのは、自分の力不足が大きな要因になっています。
ただ逆説的に考えれば、フルパワーを発揮してノルマ達成さえすれば、いつでも仕事を休めるというメリットもあります。
営業職は経理や総務のような『労働集約型の働き方』ではないので、月初5日でノルマ達成ということも十分あり得ます。
そんな時には有休を使ったり、昼間からカフェでゆっくりお茶して過ごすこともできるのです。
もちろんノルマ達成している状態であれば、誰から文句を言われる筋合いもありません。
ビジネスパーソンとしてそのような働き方が正しいかどうかは別として、ロジック的にはそういうことになります。
外回り営業しても残業にならない!?
営業活動は顧客主体なので、必ずしも一般的な就業時間帯に仕事をすれば良いというわけではありません。
お客様が「土日に来て欲しい!」というなら、その要望に応じて出向かなければいけませんし、夜遅くや朝早くにしか対応できないと言われたら、その時刻でも訪問しなければいけないのです。
もちろん自分の判断で「土日は一切対応しません」ということもできますが、それでノルマ未達成になっているのであれば目も当てられません。
そのような働き方は”お金のために働いている”状態なので根本的に間違っていて、更なる高みを目指すビジネスパーソンの動き方としてはふさわしくありません。
仕事をする理由は、あくまでも”自分自身のため”であるべきだと思います。
自分自身のキャリアを考えたり、自分自身を成長させるために仕事するべきなのです。
少し話が逸れましたが、お客様が土日に来て欲しいと言うのであれば、残業代は出ないかもしれませんが、できる範囲内で極力対応した方が良いと思います。
例えば、休日にお客様から電話が掛かってきたとします。
その電話がもし追加発注の連絡だった場合、営業マンにとっては吉報だと言えるでしょう。
そして、この電話対応を残業代(休日手当)として請求する営業マンは現実的にいないはずです。
電話が夜中にかかってきたり、休日の早朝にメールが届くこともあるでしょう。
それらへ迅速に対応することで、顧客からの信頼を勝ち取っていくのが営業職の務めとも言えます。
正規の時間に働いた分については残業代を出す企業もありますが、このような臨時の対応については、残業代はあってないようなものが現実だと思います。
中小企業はみなし残業が多い
ここまでを理解した人は、営業現場の実態がある程度理解できたと思います。
営業は顧客主導なので、その時々で臨機応変な対応が求められるはずです。
そのような理由もあって、営業職には”みなし残業”が適用されているケースが多くなっています。
みなし残業とは固定残業代を支給するシステムで、実際にどれだけ残業をしていたかにかかわらず「毎月●時間残業した」とみなして、事前に取り決めた残業手当を支給するという仕組みです。
例えば、みなし残業時間が40時間と定められていた場合、たとえ10時間しか残業しなかった月でも、40時間残業をした月でも同じ金額がみなし残業手当として支給されます。
これだけ聞くと、なんかお得な制度に感じますが、実態としては経営者にとって都合良い仕組みになっています。
みなし残業手当は基本給に基づいて計算されるので、基本給が上がれば残業代が高くなるのは一般的な残業代と同じですが、給与明細上では毎月同じ残業時間として表記されているので、どんなブラック企業であってもそれほど長時間の残業をしていないように見えてしまいます。
このような点が経営者にとっては好都合なのです。
みなし残業は廃止されるかも?!
みなし残業は労働者にとって不利な条件であるケースが多いので、大企業ではみなし残業を廃止する傾向が強まっているものの、中小企業やベンチャー企業ではみなし残業がまだまだ商習慣として残っています。
例えば、創業したばかりのベンチャー企業はスタッフの数が少ないので、一人当たりの生産性を最大化できる”みなし残業”はとても都合が良いのです。
さらに、成長スピードの速いベンチャー企業に就職する人は「たとえ残業代が出なくても自分や会社のためにもっと働きたい!」という熱意ある人が多い傾向にあります。
そういったケースでは、労使の双方が同意した上でみなし残業が導入されています。
モチベーションの高い人にとっては残業代などどうでもいい話だと思いますが、労働基準法に違反するような働き方をしているケースも目立っているため、全体としては廃止する方向にあるのが実態でしょう。
どちらにしても、みなし残業制度を使うのであれば36(サブロク)協定をきちんと締結しなければいけないので、この辺りは注意しておきましょう。
残業制度を確認する
国は労働基準法などで残業制度の基本となるガイドラインを定めているものの、必ずしも企業側がその通りに制度運用する必要はありません。
企業は労働基準法に違反しないような残業制度を採用しているはずですが、中には労働基準法あまり理解していない経営者も散見されるので、もし不安感があるのであれば、上場企業などコンプライアンスがしっかりしている会社に就職することをお勧めします。
必ず就業規則を確認する
就職&転職をするときには、必ず「どんな残業制度になっているのか?」を確認しましょう。
会社に就職するタイミングで必ず労働者には”就業規則”が渡されるはずです。
就業規則には働く上でとても重要な情報が記載されているので、全てに目を通す必要がありますが、最低でも給料や残業制度については読んでおきましょう。
もし会社がみなし残業制度を採用しているなら、「みなし残業を何時間にするか?」という情報も明記されているはずです。
しかし、「みなし残業代がいくらになるか?」という金額までは明記されていないかもしれないので、その時には36(サブロク)協定を参照する必要があります。
36協定によって月ごと、年ごとの残業時間の上限や、一定時間を超えたときの超過分の残業代についても確認できるので、あらかじめ情報収集しておきましょう。
毎月支給されている給与明細を確認するのも良いと思います。
その給与明細には「実際にどれだけの残業手当が支給されているのか?」が明記されているので、すぐに確認できるはずです。
残業代を当てにしない
営業職という仕事の性質上『残業ゼロ』という状態になることはあまり期待できません。
むしろ「残業をするのが当たり前」というスタンスで仕事をした方が無難だと思います。
そして、残業代も”みなし残業”になっていることが多いので、あまり当てにしない方が賢明です。
しかも営業職の基本給は低めに設定されていることが多いので、残業代も出ないとなれば、もはやダブルパンチですよね。
実際に、ほとんどの営業パーソンはそんなに高い給料をもらっていません。
しかし一般的に「営業職は高収入」という印象があると思います。
なぜかといえば、営業職はインセンティブで稼いでいるからです。
営業職の給与構成で一番大きなウエイトを占めているのは”歩合”や”インセンティブ”です。
自分の営業実績や出来高に応じて支給されるインセンティブは、多い人だと基本給を超えるケースもあります。
稼ぎ頭と言われている上位2割のトップセールス達は、多額のインセンティブを受け取っているので、そのぶん年収が高くなっているのです。
仕事のやりがい&意義を優先する
ただ、残業代や目先の給与を考えるよりも、「何のために働くのか?」ということを良く考えてみて欲しいと思います。
仕事の意義を再考し、営業職として働くやりがいを見つけられたなら、残業代など気にせず前向きに働けるはずです。
例えば、将来独立起業を目指す人にとっては、残業なんて苦になりません。
残業代がいくら貰えるかなど目先の利益は考えず、ただ自分のライフプランに沿ってひたすら自己成長を目指しているからです。
他にも「将来は今いる会社の社長になりたい!」と考えてる人にとって、誰よりも働くことは当たり前のことですよね。
ただ単にお金のために働く人と、何か目的を持って働いてる人では、将来的に雲泥の差ができてしまいます。
せっかく人生の大半を使って仕事をするのであれば、目的意識を明確にした方がいいと思います。
もちろんどのように働くかは人それぞれですが、個人的にはそのような働き方をお勧めします。