
営業支援サービスは数多ありますが、その中に「営業代行」というのがあります。
営業代行というのはその名前の通り、何らかの『商品・サービスを販売支援する仕事』のことです。
しかしながら、具体的にはどういったサービスを提供してくれるのか、また営業代行サービスを利用するメリット&デメリット、営業代行サービスの使い方については、あまり認知されていないように思います。
そこで今回は、気になる”営業代行サービス”に関して触れてみたいと思います。
営業代行サービスの利用を検討している場合には、ぜひご覧ください。
目次
営業代行とはどんなサービスなのか?
営業代行を簡単にまとめてしまうと「売上アップの支援をしてくれるサービス」ということになります。
これだけ聞くと、利用しない手はないですよね。
しかし実際には、思い描くサービス内容とギャップがあるので、もし営業代行サービスを検討しているのであれば、その内容や定義を理解しておくべきでしょう。
例えば、ある商材「A」を拡販したい場合、その要望を営業代行会社に伝えて、営業支援を依頼することになります。
この時に注意すべきことは「どのようなやり方でAを拡販したいのか?」などを整理整頓しておくことです。
営業代行会社は「セールスのプロフェッショナル」なのですが、決してなんでもかんでも売れるわけではありません。
あくまでも『人よりセールスに慣れているだけ』なので、ある程度の商品知識や事前情報が必要となります。
そこで重要になってくるのが”クライアントニーズ”です。
営業代行を依頼する企業(=クライアント)が「どのような売り方をしたいのか?」というのは、営業代行サービスを提供する上で重要な項目となってきます。
- テレアポ営業で売りたい
- 飛び込み営業で売りたい
- リファラル営業で売りたい
このように様々な要望があるのですが、そのニーズに応じて営業代行会社のサービス内容も大きく変化していくのです。
例えば「テレアポ営業はできるけど、飛び込み営業ができない」という営業代行会社があったり、「飛び込み営業ができるけど、リファラル営業できない」という営業代行会社もあるはずです。
このように営業代行にも”得意不得意”がある為、事前に要望をまとめておく必要があるのです。
営業代行会社の特徴を理解する
営業代行サービスを依頼する場合、ある程度の要望をまとめる必要があることはお伝えした通りですが、それと同時に『要望を実現してくれる営業代行会社』へ発注しなければいけません。
先ほども触れましたが、営業代行会社には”得意不得意”があります。
- テレアポ営業が得意
- フォーム営業が得意
- クロージングが得意
- 即決営業が得意
- 営業の仕組みづくりが得意
このように、それぞれの得意分野があるため、テレアポ営業であれば『アポイント代行会社』へ発注し、営業の仕組みづくりであれば『営業コンサル会社』へ発注することが求められるのです。
そしてテレアポ代行だったとしても「アルバイトを活用する」会社もあれば、「全て正社員のアポインターで対応する」、「営業フリーランスを活用する」というケースまで様々です。
ただ単に「テレアポをお願いしたい」というニーズであっても、
- そのアプローチ先は個人か法人か?
- アルバイトは使っても良いのか?
- 固定報酬は出るのか?
など、営業代行会社によって受けられる内容は変わってくるのです。
これは一言に「医者」といっても、内科や外科、耳鼻科があったり整形外科があったりするのと同じです。
同じ「営業代行会社」だったとしても、それぞれに得意分野があることを理解しておきましょう。
営業代行を依頼するメリット&デメリット
営業代行会社にセールスを依頼することは、多くのメリットをもたらします。
まず代表的なのが、簡単に”営業人材を確保できる”ことです。
現代は「人材難」と言われる時代なので、とにかく営業人材の確保が難しいと言われています。
また、たとえ仮に営業人材を確保できたとしても、毎月の人件費が経営を圧迫するので、そこまで大胆に増員することもできないはずです。
しかし、営業代行会社へアウトソーシングすれば、適した人材をすぐにアサインすることができます。
しかも、その契約は比較的短いので、毎月の人件費に悩まされることもないはずです。
外部の視点を取り入れることができる
自分達は営業を頑張っているつもりでも、傍から見たら「全然ダメ」というケースもあります。
ほんの少しボタンが掛け違うだけで、成果は大きく変わってくるのです。
営業代行会社は「セールスのプロフェッショナル」なので、そのような視点で営業活動を見てくれるはずです。
そう考えた場合、これまで自分たちが気づかなかったようなアプローチ対象(顧客ニーズ)に気が付いたり、思いもつかなかったセールス手法を編み出してくれる期待感があります。
直販営業だけでは起こりえない「ダイバーシティ(多様性)」が生まれるかもしれないので、それだけでも営業代行サービスを依頼する価値があると言えるでしょう。
営業代行を利用するデメリットもある
営業代行を利用する大きなメリットを享受できますが、その反面デメリットもあるので注意しましょう。
まず代表的なデメリットは、『自社の直販営業が育たない』ということです。
外部へ営業活動をアウトソーシングすることになるので、セールスノウハウが社内に溜まっていかないのです。
そうすると必然的に直販営業マンが育たず、セールスはずっと外部依存する羽目になります。
元々営業代行サービスを利用する目的にはコスト削減もあったはずです。
直販営業マンが育たないと、それと真逆な状態になっていくので十分注意が必要です。
そして、営業代行サービスは『決して成果が確約されたサービスではない』という点も見逃せないでしょう。
営業活動とは「やってみなければわからない」部分がどうしてもあります。
それ故に、「セールスのプロフェッショナル」である営業代行会社だったとしても、サービス品質にバラツキが出てしまうのです。
これは営業活動をアウトソーシングするときのデメリットと言えるので、ここで押さえておきましょう。
営業代行を利用するべき業種・業態
営業代行を利用することが多い業種には一定の共通点が見られます。
その共通点とは、主に『法人営業』をしている業種・業態です。
実は「個人宅向け」の営業代行サービスを提供している企業は少なく、ほとんどの営業代行会社は「法人向け」だけに特化しているのです。
なぜかと言うと、個人顧客は”感情的”なので、「営業のプロ」と言われている営業代行会社でも手に余るからです。
個人顧客はその時の気分で「買うよ!」と言ったり、次の日には「やっぱりやめた」と言うので、とても扱いづらいのです。
それに比べて、法人顧客はきちんと社内検討して、会社の稟議を通過すれば、基本的にキャンセルということは起こり得ません。
このようにわかりやすいことが法人顧客の特徴と言えるので、法人営業をしているのであれば営業代行サービスの活用は”検討のテーブル”にのるでしょう。
営業代行の報酬形態
営業代行サービスを依頼する場合、やっぱり気になるのは料金ですよね。
営業代行の報酬は、大きく分けて「固定報酬」と「成果報酬」が存在しています。
厳密に言うと、以下の3種類になると思います。
- 固定報酬
- 成果報酬
- 固定報酬+成果報酬
固定報酬というのは、月額固定制の報酬制度を指します。
おおよその目安としては、1ヶ月フル稼働して一人当たり月額100万円前後が一般的だと思います。
なので、営業代行会社から営業マンを5人アサインしてもらえば、月額500万円ということになります。
なんとなく高いように感じるかもしれませんが、自分たちで正社員を5人採用した場合でも、月額250万円程度の人件費が発生すると思います。
その2倍の金額ではありますが、営業代行会社は業務委託契約なので、必要がなくなったらすぐに切ることができますよね。
しかし月額250万円発生している正社員は、必要がなくなったとしても解雇することが難しいはずです。
このような『使い勝手の良さ(=スポットでのアウトソーシング)』が営業代行サービスの特徴なのだと思います。
成果報酬の内容とは?
固定報酬はシンプルなので分かりやすいですが、成果報酬は馴染みのない人が多いかもしれません。
成果報酬の設定ポイントは、大きく分けて2種類となります。
- 商談成立
- 受注(成約、申し込み)
このどちらかを成果とするケースが多いので、まずはその辺りを押さえておきましょう。
まず商談成立についてですが、これは「アポイント報酬」とも呼ばれており、アポイントを難易度によって金額にバラツキが出てきます。
- 難易度低⇒商談成立一件につき1万円~3万円
- 難易度中⇒商談成立一件につき5万円~8万円
- 難易度高⇒商談成立一件につき10万円~15万円
このような相場感はありますが、「年商100億円以上、大手自動車製造メーカーの人事役員」というような、かなり絞ったアプローチ対象だった場合は『商談成立一件につき30万円~40万円』というケースもあります。
そして”受注”を成果ポイントとして設定する場合は、定義があいまいになるので注意が必要です。
一言で「受注」とまとめても、申込書の回収を「受注」とするケースもあれば、契約が半年経過した段階を「受注」としたり、初回入金が確認できたタイミングを「受注」とするケースもあります。
このように、人によって認識にばらつきが出てしまうので、この辺りは契約時に定義付けしておく必要があるでしょう。
完全成功報酬もある
営業代行サービスを探す場合、多くの人は「完全成功報酬でお願いしたい」と考えるはずです。
完全成功報酬とは、イニシャルコストゼロ円で、かつ受注した時に報酬を支払うスキームのことです。
つまり、営業代行サービスを依頼するクライアントにとっては”ノーリスク”という理想的なカタチなのです。
もしこれで受けてくれる営業代行会社がいれば、願ったり叶ったりですよね。
しかし現実はそんなに甘くありません。
クライアントにとって都合の良いことは、営業代行会社にとって都合の悪いことなのです。
よく考えてみて欲しいのですが、「完全成功報酬でお願いしたい」という企業がいる一方で、「固定報酬を払うからお願いしたい」という企業もいますよね。
このような2社がいた場合、果たして営業代行会社はどちらに注力するのでしょうか?
もちろん「固定報酬を払うからお願いしたい」という会社だと思います。
つまり完全成功報酬で依頼すると、横に置かれる程度ならまだマシですが、全く取り扱ってもくれないケースが出てくるのです。
そうなってしまうと、「そもそも営業代行サービスを利用する意味があったのか?」という疑問すら湧いてきます。
このような背景が理解できれば、完全成功報酬で依頼することは『双方にとってよくない仕組み』だと理解できるはずです。
しかし世の中には「完全成功報酬でお受けします!」と謳っている会社もありますよね。
そのような企業は「ただ取引実績が欲しい」だけなので、あなたの商材を売ってくれることは決してありません。
もしくは”完全成功報酬”という言葉を餌におびき寄せて、とにかく固定報酬を支払うように仕向けてくるのです。
営業代行会社にも人件費や家賃、交通費、通信費などコストが発生しているので、当たり前の話ですが”ボランティア”のような動き方はしてくれないということです。
営業フリーランスを活用しよう!
ここまで読み進めた人は、「営業代行サービスは意外と高いなぁ…」と感じたかもしれません。
良くも悪くも、”成果が出るかわからない”のが営業代行サービスです。
そのような不確定なサービスに、毎月数百万円を支出するのは勇気がいりますよね。
体力のある大企業であれば問題ないかもしれませんが、中小ベンチャー企業にとっては死活問題だと思います。
そんな時には『営業フリーランスを活用する』という選択肢を検討してみましょう。
現在は副業解禁の流れもあり、営業フリーランスが増えてきています。
営業代行会社は法人なので、どうしても月額料金が高くなりますが、営業フリーランスは個人なので、低コストで営業支援を依頼することができます。
これはおおよその目安なのですが、法人の営業代行会社に依頼するよりも、営業フリーランスであれば1/3~1/5程度のコストで同等程度のサービスが受けられるはずです。
結局、営業代行会社も”人”であり、営業フリーランスも”人”なので、そこまでサービス内容に差がないのです。
そう考えた場合、営業フリーランスにお願いするのは”経済的合理性”があるような気がしてきます。
営業フリーランスの探し方
それではいざ「営業フリーランスを探そう!」と思っても、どうすればいいかわかりませんよね。
一番メジャーな探し方はSNSを活用することだと思います。
TwitterやFacebookなどで「営業フリーランス」と検索すれば、ある程度ヒットするはずです。
その人たちにDM(ダイレクトメッセージ)を送信して、営業活動を依頼してみるのです。
しかし先ほど解説した通り、「営業のプロフェッショナル」といっても得意不得意があります。
もし販売を依頼したい商材が得意でなければ、営業のフリーランス探しは困難を極めることでしょう。
そんな時は、営業フリーランスを斡旋してくれる人材紹介サービスを活用してみましょう。
代表的なサービスには、14,000人以上の営業フリーランスが登録している「side bizz(サイドビズ)」などがあります。
基本的にはイニシャルコストゼロ、月額費用ゼロでフリーランス探しを依頼できるはずなので、まずは要望を伝えてみるのが良いでしょう。
営業代行会社には注意する
ここまで営業代行サービスについて解説してきました。
これから営業代行を依頼したい場合、ある程度準備しておくことが必要だと理解できたはずです。
あくまでもこれは個人的な意見ですが、全く何も考えずに営業代行会社へ相談してしまうと、名前の通り「カモ」とみなされます。
前述した通り、『成果のわからないものが営業代行サービス』という側面があるため、そういった意味では霊感商法に近いサービスだと言えます。
よって、何も考えずに相談するクライアントがいた場合、とにかく不安を煽って、難易度が高いことを伝え、ぼったくることだけを考えている業者がとても多いように感じます。
この辺りは”業界の闇”なのですが、もし営業代行会社を探すのであれば、十分注意した方が良いでしょう。
例えば、以前取引のあったアポイント代行会社の事例をご紹介したいと思います。
※今でも存在する大手企業なので、社名は伏せたいと思います。
その会社はアルバイトを雇ってテレアポ営業させるアポイント代行会社だったのですが、「絶対にアポイントが取れるリスト」というのを持っていました。
つまり「ヒマな人リスト」を持っていたのです。
色々なクライアントからテレアポ営業を受託するうちに、「▲▲会社の○○さんは必ずアポイントを取れる」ということが徐々にわかってきます。
そのような人達は「窓際族」と言われる人だったり、とにかく暇な人なので、なんとなく仕事をしている感を出したくて、必ずアポイントに応じてくれるのです。
おそらく暇だと言っても、常にデスクにいると周りからの目が気になるので、なんとなく商談をこなしている雰囲気を出したいのでしょう。
なので、そのアポイント代行会社はA社でアポイントを取り付けて、次に同じ人へ電話しB社としてアポイントを取り付けていきます。
このように見た目は『アポイント成立』となるのですが、その人は社内で決裁権を持っておらず、あくまでも暇人でしかないので、絶対に受注することができません。
このように予算消化できる方法(アポイント代行会社だけが儲かるロジック)を編み出しているケースがあるので、依頼する営業代行会社によってはコストだけが出ていく羽目になります。
ですが、これはある意味で仕方のない現象なのです。
というのも、営業代行をお願いするクライアントからすれば、1件のアポイントで受注が取れれば百発百中ですよね。
それを理想とするのですが、アポイント代行会社からすると百発百中に近づくほど儲からなくなってしまうのです。
これはつまり、そもそも利益相反している前提があるということです。
それは月額固定報酬をもらっている営業代行会社も同じです。
月額固定報酬をできるだけ長く支払ってもらうためには、極力成果を出さずに間延びさせる必要があります。
つまりなんとなく成果を出しつつ、お茶を濁して、出来る限り予算を引っ張り続けるのです。
クライアントとしてはできるだけ短期間で成果を出したいと思うはずですが、営業代行会社は真逆の考え方なので、それが一致することはないでしょう。
それではお互いの利害が一致する完全成功報酬型にすれば良いと思いますが、そこには市場原理が働いて「固定報酬でもOK」というクライアントが出てきてしまいます。
すると先ほど解説したように、完全成功報酬型を希望するクライアントは相手にされなくなるのです。
このように考えた場合、ある程度動きがグリップできる営業フリーランスの方がクリア(不正が起こりにくい)で、費用対効果が最大化するかもしれません。
もちろん全ての営業代行会社があくどいとは言いませんが、実際にそのような会社があることは事実なので、これから営業代行サービスを利用する場合には十分注意しましょう。