
営業職であれば、誰もが”既存営業”を経験したことがあると思います。
実は「既存営業こそが収益の要(かなめ)」と言われるほど、企業にとって重要な営業活動なのですが、意外なことに、多くの企業では既存営業よりも新規営業が重要視されています。
この辺りは『理想と現実のギャップ』があるかもしれませんが、今回は既存営業について解説していきたいと思います。
この記事を見れば「なぜ既存営業は必要なのか?」という質問にも答えられるので、ぜひ最後までご覧ください。
既存営業とは?
前述した通り、本来は既存営業を強化するべきなのですが、ほとんどの企業は新規開拓営業ばかりをやっていて、既存顧客のフォローアップが疎かになっています。
このような状態になってしまうのには、いくつかの理由があります。
- 取引社数、取引実績が重要
- 既存顧客はすでに収益化している
- 新規開拓営業の方がラク
サービスを成長させるためには”取引社数”という指標が求められます。
例えば「取引実績30社」よりも「取引実績3,000社」の方が凄そうですよね。
このような実績を定量的に表すために、多くの企業は新規開拓営業を重要視しています。
そして既存営業がほっとかれる理由として、最も大きいのが「既存顧客はすでに収益化している」ということが挙げられます。
定期的にルート営業さえしておけば、勝手に注文が入ってしまうので、わざわざ既存顧客へのフォローアップ営業などしない企業が多いのです。
逆に、下手に触れてしまうと「取引停止」ということにもなりかねません。
それであれば、ある程度はサポートしつつ、適度に距離を保っておこうと考えるのは無難ですよね。
そして意外かもしれませんが、「新規開拓営業の方がラク」という側面も見逃せません。
これは個人的な感想になるかもしれませんが、既存顧客へのアップセル&クロスセルより、新規開拓営業の方が楽に感じます。
この感覚を持っているのは、おそらく各企業のトップセールスでしょう。
トップセールスは見込案件を集めることができるので、新規開拓営業が苦ではないのです。
それと引き換え、既存顧客は現在までの取引状況を把握したり、現在の取引を改善するようなソリューションを提供しなければいけないため、新規開拓営業よりも難易度が上がってしまう感覚があります。
つまり、誤解を承知で端的に表現してしまうと「提案がめんどくさい」のです。
しかし新規開拓であれば、『必要最低限のソリューション』を提供すればOKなので、とても楽に感じるのです。
「深耕営業」「リテンション営業」とも呼ばれる
既存営業は「深耕営業」「リテンション営業」とも呼ばれているのをご存知でしょうか。
「深耕(しんこう)営業」は、ネーミングの通り”顧客ニーズを深堀する”ことを目的にした営業活動です。
そしてリテンション営業とは、既存顧客との良好な関係を保つための営業活動全般を指します。
つまり、両方とも顧客との関係構築を目指す『リレーションシップマネジメント』だと言えます。
この事実から、既存営業のポイントが見えてくると思います。
新規開拓営業の場合には”顧客ニーズ”に基づいたソリューションが必要になるため、ある意味では製品(サービス)力が試されることになります。
逆に言ってしまうと、優れたプロダクトであれば、それほど営業力がいらないのです。
それに引き換え、既存顧客は既にサービス提供を受けているため、製品力の訴求だけでは弱くなります。
商品力だけではなく、さらに「営業力」とも言えるリレーションシップマネジメントが加わらなければ、アップセルやクロスセルは実現しないでしょう。
既存営業が多い業種・業界
既存営業は個人営業、法人営業問わずに実施されていますが、ある程度の共通点はあると思います。
- 商材単価が高い
- コンサルティング要素がある
例えば、100円均一のような小売店で既存営業は行われませんよね。
もちろん『リピーター』という概念はありますが、商材単価が低いので、わざわざ既存営業を実施することはありません。
しかし、個人向け営業であっても「保険」「証券」「住宅リフォーム」などは顧客単価が高いため、毎日のように既存営業が実施されています。
それと同時に「コンサルティング要素がある」という部分も、既存営業が実施されるポイントだと思います。
つまりお客様自身で意思決定しづらいほど『コンサルティング要素』は強くなるので、そのようなケースでは既存営業が必要とされるのです。
なので、もしそのような業界に就職するのであれば「日常的にルート営業を行う」ものだと理解しておきましょう。
新規営業とは何が違うの?
ここまで既存営業について解説してきましたが、そもそも『新規営業との違い』についても理解しておくべきだと思います。
新規営業は「新規開拓」と呼ばれることもあるので、”開拓すること”が目的になっているのだと理解できますよね。
つまり、アカウント開拓こそが『新規開拓営業』なのです。
そう考えた場合、新規開拓営業での売り上げは低くても良いことに気が付くはずです。
つまり「新規開拓=アカウント開拓」なのであれば、まずはハードルの低い”フック商材”などを使って取引を開始し、その後クロスセルやアップセルをしていく方が合理的ですよね。
「フック商材って何?」という人は下の記事をご覧ください。
これは営業戦略に関わる話ですが、ハードルの低い商材の方が、きっと新規開拓は捗ると思います。
例えば、弊社が運営するside bizz(サイドビズ)では、完全無料掲載のプランを作っているので、それがフック商材として機能しています。
これは「フリーミアム戦略」と呼ばれていて、ある意味ではマーケティングの常套手段と言えますが、もしそのような戦略が取れないのであれば、他社商材を仕入れるというやり方もあります。
例えば、飲食店向けに営業したいのであれば、「飲食店向けの無料求人サイト」をフック商材にするイメージです。
その商材でアカウント開拓できれば、あとはルート営業した時に”メインの収益源”となる商材をクロスセルすればいいだけです。
こうすることによって、「新規営業=アカウント開拓」「既存営業=クロスセル」という役割分担が出来上がりますよね。
そうすればおのずと、営業マンの役割も決まってくるので、KPIが設定しやすいはずです。
実はこれが既存営業を成功させる秘訣なので、次で詳しく解説していきたいと思います。
既存顧客を掘り起こすコツ
前述した通り、既存営業を成功させるためには「KPIを設定する」ことが重要となります。
KPIとは(Key Performance Indicator)の略称で、目標達成するプロセスで重要となる指標を定量化したものです。
例えば新規受注5件を目標とした場合、それを達成するためには20件の面談が必要で、20件のアポイントを獲得するためには1000件のテレコールが必要…、という具合に数字へ落とし込んだものがKPIと呼ばれています。
もしこの方程式が機能するのであれば、そもそもテレコールが1000件できなければ、目標達成は不可能という話になってきます。
先ほどもお伝えした通り「既存営業=クロスセル」となるので、既存顧客を掘り起こすためにはKPI設定をしなければいけません。
適当にルートセールスするだけでは絶対ダメなのです。
例えば、既存顧客へ収益性の高い商材Aを10件販売したい場合、以下のような仮説を立てます。
- 商材Aを10件販売するためには、30件の商談が必要(受注率33%)
- 30件の商談を獲得するためには、100件のテレアポが必要(アポイント率33%)
- 100件のテレアポをするためには、既存顧客500社が必要(不在もあり得る為)
- 既存顧客500社に電話するためには、5日間の稼働が必要(1日100社へ電話した場合)
この商材Aの売上は30万円で、粗利が10万円だったとします。
そうすると、5日間稼働すれば「将来収益として100万円の粗利が稼げる」という仮説が出来上がります。
これを1ヶ月(20日稼働)繰り返せば、将来収益は400万円にアップします。
このように営業戦略を考え、それを戦術へと落とし込み、KPIを設定して、実際の行動へとつなげていくのです。
行き当たりばったりのセールスをしている営業マンは多いですが、このようにロジカルな営業活動を心掛ければ、必ず結果はついてきます。
ここまで読み進めた人は、「既存営業はなぜ必要なのか?」というシンプルな質問に答えられるようになったはずです。
とてもシンプルな結論ですが、既存営業を実施する理由は以下の通りです。
- 営業活動を合理化し、収益性を高めるため
- 営業KPIを設定し、役割を明確化するため
- 信頼関係を構築し、長期取引を実現するため
先ほどのシナリオで解説した通り、既存顧客であれば「アポイント率33%」という数字も夢物語ではありません。
※新規営業で「アポイント率33%」は現実的じゃありません。
既存顧客を上手く活用すれば、営業活動は合理化していくので、ぜひ一度チームの営業活動を見直してみてください。