証券会社の元営業マンが語る、証券営業が嫌われる&きつい理由

日本における証券会社は、リテールやホールセールを有している昔ながらの大手証券会社と、マネックス証券や松井証券、SBI証券に代表されるようなネット証券に分類されます。

ネット証券は先進的な仕組みなので”リテール営業”ではありませんが、大手証券会社ではまだまだリテール営業が盛んに行われています。

そこで今回は、証券会社に就職を考えている人や、ビジネスモデルを知りたい人に向けて元証券マンが解説していきたいと思います。

出来る限り生々しい現場の実態をお伝えしたいと思うので、これから就職活動する人は参考にしてください。

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証券会社の営業職とは?

皆さんこんにちは、営業シークの「さの編集長」です。

私は2007年に「大手証券会社(?)」と言われる大和証券に総合職として新卒入社しました。

退職したのが2010年だったので、約3年ほど在籍したことになります。

その期間の業務内容は、個人富裕層を対象とするリテール営業でした。

ちなみに、証券会社の営業職には大きく2種類があるので、ここで押さえておきましょう。

証券会社の営業職
  • リテール:証券の販売
  • ホールセール:証券の仕入れ

ホールセールは証券会社の”花形職”とも言われますが、IPOする企業から主幹事に指名してもらったり、社債を発行する会社から幹事に指名してもらう為に営業する職種です。

いわゆる仕入れの営業になります。

それと比較してリテール営業とは、仕入れた証券を投資家へ販売する職種になります。

一般的な証券営業とは、この”リテール営業”を指すことが多いはずです。

ちなみに私はリテール営業だったので、顧客層は経営者や医者、弁護士など「地元の名士」と呼ばれる人達、又はキャッシュリッチな法人顧客でした。

そのような人達に対して、株式を提案したり、債券の販売などを行っていきます。

まさにこのような仕事が「ザ・証券営業」という感じですが、私が在席していた当時、会社として一番注力していたのは投資信託(ファンド、ラップ口座、SMAなど)でした。

投資信託には”純資産総額”という重要指標がありますが、これがつまり運用総額を意味しています。

この純資産総額を積み上げることが『証券会社における最重要ミッション』であり、これが積み上がらないと死活問題になってしまうのです。

なぜかと言うと、それは証券会社の収益体制が関係しています。

この辺りを次で解説したいと思います。

証券会社の収益体制を解説!

証券会社の収益は主に”ブローカレッジ業務”で成り立っています。

つまり仲介手数料で稼ぐのです。

例えば株式売買についてですが、株式市場は広く公開されていますよね。

誰でも市場(東京証券取引所など)を通じて売買できますが、そのためには必ず証券会社(=証券口座)を介しなければいけません。

これは大手証券会社でもネット証券でも同じはずです。

つまり市場に注文を流すのは、証券会社の独占業務となっているのです。

それゆえに、注文が入れば入るほど証券会社は儲かるという仕組みになっています。

証券会社の経営者(社長)が「今年の目標株価は○○万円です」とか「今年の株価は上がる」とテレビで語っていますよね。

あれはある意味でポジショントークなのですが、証券売買を活性化させるために言っているのだと思います。

ということで、「ブローカー」と呼ばれる証券営業マンは、とにかくお客様から注文を取り付ける必要があるのです。

それは株式の買い注文でも売り注文でも関係ありません。

債権も同様に売買手数料が発生するので、買い注文か売り注文をしてもらわなければ儲かりません。

このように証券会社の収益体制というのは、売買手数料で成り立っているので、「顧客の預かり資産をいかに動かすか?」がポイントになってくるのです。

このあたりが銀行のビジネスモデルと大きく違う部分だと思います。

しかしその一方で、管轄省庁である「金融庁」は、頻繁な回転売買を禁止するように通達しています。

「回転売買」とは金融商品を短い保有期間で「買って売る、もしくは売って買う」行為を指します。

投資は原則的に「長期投資」が基本となるので、金融庁は回転売買を「良し」としないのです。

そうすると仲介手数料が入らないので、証券会社は困ってしまいますよね。

この問題を解決するために、証券会社と金融庁が一緒になって作り出した商品が投資信託なのです。

つまり、投資信託とはスポット型の収益体制から抜け出すために考え出された「証券会社にとって都合の良い金融商品」ということです。

投資信託の仕組みとは?

ここから具体的に投資信託の仕組みを解説していきますが、投資信託には2つの収益ポイントがあります。

  1. 買付手数料
  2. 信託報酬

買付手数料とは、投資信託を購入する時に発生する手数料を言います。

原則的に解約する時にはかからないので、購入がたくさん発生するほど儲かる仕組みになっていますが、ネット証券では「買付手数料無料(ノーロード型)」が出てきているので、今後はこれに頼るのが難しいかもしれません。

そして二つ目の信託報酬…

実はこれが証券会社にとって非常に重要な収益源となっているのです。

信託報酬を簡単に言い換えてしまうと「運用手数料」となります。

投資信託はバスケット取引になるので、それを運用するファンドマネージャーという人がいます。

他にもファンド運営に携わる人がたくさんいるので、そのような人たちの給料を賄う信託報酬(=運用代行料金)が必要となるのです。

そのパーセンテージは様々で、近年は低コスト型も多くなってきましたが、大手証券会社では年間1%~2%がおおよその目安だと思います。

例えばある投資信託Aの信託報酬が1%だった場合、1億円の純資産総額であれば年間100万円の運用手数料が証券会社に入ることになります。

これが証券会社にとってはストック収益(継続収入=不労所得)になるのです。

純資産総額に応じて1%が毎年キャッシュインするのであれば、とにかくその純資産総額を積み上げてしまえば、安定的な経営が実現しますよね。

なので、新規設定の投資信託は1,000億円規模(※大和証券の場合)で設定されることが多く、その募集が完売すれば、毎年10億円のストック収益が確定することになるのです。

これを積み上げる為に、証券会社は手を変え品を変えながら投資信託を新規設定しているのです。

投資信託は解約できない?

よく「証券会社は投資信託の解約をさせてくれない」という噂を耳にしますが、それは事実だと思います。

なぜかといえば、せっかく積み上げた信託報酬が減ってしまうからです。

証券会社の営業マンは”投資信託の販売”が最重要項目に設定されているため、その純資産を減らす行為は営業成績にマイナス効果をもたらします。

なので、証券会社の営業マンはなんとしても投資信託の解約を阻止したいのです。

現役だった頃、高齢のお客様が「1億円分の投資信託を解約したい」と支店を訪れていました。

その担当者はライン課長でしたが、さすがに1億円分の投信解約は支店長の成績にも大きく響くので、支店長と一緒になって一生懸命に解約させないように説得していました。

それでも結局解約となったので、支店長は頭を抱えていたのを覚えています。

先ほどもお伝えしましたが、旧態依然の証券会社のビジネスモデルは「売買手数料=スポット収入」だったので、相場が下落した時に”預かり資産”が動かず、それに伴い「収益も上がらない…」という悪循環に陥っていました。

そのような問題点を解決した画期的な金融商品が”投資信託”です。

なので、証券会社に就職するのであれば、本位&不本位は関係なく、とにかく投資信託を売りまくらなければいけません。

投資信託であれば相場下落時にも信託報酬が入るため、経営の安定化が実現します。

これは経営者にとって非常に重要なポイントとなるので、証券会社の営業マンはひたすら投資信託の販売を命じられるのです。

証券営業プロフェッショナル
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証券営業はきつい…

証券会社の営業は非常にきついと言われています。

一般的には「3年もてば凄い」と言われるほどなので、どれだけ激務なのかなんとなく想像できますよね。

実際、大和証券時代にさの編集長がこなしていた1日のスケジュールをご紹介したいと思います。

1日の勤務スケジュール

AM6:00 起床

AM6:10 朝ごはんを食べながら、テレビ東京の「モーニングサテライト」を見る

AM6:30 出勤する支度を始める

AM7:00 出勤する為に自宅を出るが、時間がないので移動しながら日経新聞を読む

AM7:20 出社したデスクで日経新聞を読みながら、全世界の株式相場を確認する

AM8:00 全体ミーティングに参加する(基本的には支店長が怒鳴るだけの無駄会議)

AM9:00 株式相場が開くと同時に顧客からの注文が殺到する

AM11:30 前場終了

AM11:45 お昼休憩(昼休憩は原則15分以内、30分休めれば御の字)

PM12:15 休憩から戻り午後の相場に備える(休憩から戻ると顧客からの入電連絡が5件~10件ほど溜まっている)

PM12:30 後場開始

PM15:00 後場終了(ここから訪問営業に切り替える)

PM16:00 顧客宅に訪問して募集物(投資信託や外債など)を提案する

PM17:00 顧客に提案した募集物をインプット(注文)する

PM18:00 本日の業務を日報にまとめる

PM19:00 退社して同僚と飲みに出掛ける

PM23:00 帰宅して就寝

上記のようなスケジュールが基本ですが、上司に飲みへ連れて行かれると午前1時、午前3時に帰宅というのが当たり前でした。

※私個人の感想ですが、とにかく証券会社の人は体育会系なのでお酒を飲む印象が強かったです。

それでも翌朝6時に起きなければいけないので、かなり辛かったですが、少しお酒が残っている方がセールストークは走るので、その方が意外と売れるんですよね。

一番ショッキングだったのは、午前4時まで上司に連れ回されて、ベロベロに酔っ払って帰った結果、次の日5分だけ遅刻してしまいました。

すると、連れまわした本人(上司)は何事もないように出社していて、自分が連れ回したことは蚊帳の外で、とりあえずメチャクチャ怒鳴られたことを覚えています。

私は心の中で「お前が連れまわしたんだろ(怒)!」と感じていましたが、それと同時に「本当に証券会社って体育会系なんだなぁ~」と実感した瞬間でした。

このような愉快な日々を過ごしていましたが、数字の管理は30分ごとなので、上司から30分ごとに進捗状況を聞かれることになります。

上司
30分経ったから報告して!
さの編集長
○○は1件300万円の約定、▲▲の進捗はありません。
上司
▲▲がボウズ(ゼロ)ってどういうこと?遊んでたの?話にならんな。その300万円の約定はインプット(注文)したの?
さの編集長
いえ、まだお客様の入金が確認できないので、入金が確認でき次第インプットします。
上司
それいつ?何時?
さの編集長
あ、はい。お客様はこれから銀行に行くと言っているので、おそらくあと1時間後くらいには…
上司
それインプットできなかったらどうすんの?本当に今銀行に行ってんの?
さの編集長
はい、そうだと思います。お客様がそう言っていたので…
上司
金が必要なんだよ!今お客さんがどこにいるか電話で確認して。
さの編集長
あ、はい。電話してみます…

これじゃ、借金の取り立てと同じですよね。

お客様に「早く金を振り込め!」と催促することになるので、このような仕事はとてもストレスを感じます。

IPO(新規公開株)の販売をしていた時、お客様が入金日を間違えていて、あと1時間でインプット(注文)の締め切りというギリギリな場面がありました。

そのお客様は高齢な上、足が悪かったため「今からすぐ銀行へ行くのは無理だ」と言われてしまいましたが、インプット(注文)しないと非常にマズいので、その時にはお客様の自宅まですぐ車で行って、郵便局ですぐに振り込んでもらえました。

ギリギリ5分前のインプット(注文)だったので、冷や汗をかいたのを覚えていますが、それと同時に高齢のお客様を連れ回した罪悪感はひどかったですね。

しかもその後、購入したIPO(新規公開株)は大きく値下がりして、お客様にとっては踏んだり蹴ったりでした。

話はそれましたが、後場が終わってからも仕事があります。

退社するまでの間に、投資信託や外国債券の契約を取らなければいけないので、とにかく時間がありません。

5分単位でスケジュール管理しなければいけないので、移動中は常に走っていた記憶があります。

個人的には「証券会社と佐川急便はあまり変わらないな」と思っていました。

それほどきつい仕事が証券会社のリテール営業なのです。




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