
少子高齢化の影響で採用活動は年々厳しさを増していくばかりです。
そんな中、昔から利用されている採用手法に”縁故採用”というやり方があります。
これは親族を経由した採用手法を言いますが、時代錯誤の採用手法とも言われています。
そこで今回は、昔ながらの採用手法である”縁故採用”にフォーカスして解説していきたいと思います。
目次
縁故採用の特徴とは?
縁故採用は全国各地で見ることができますが、特に田舎や地方都市と呼ばれるエリアでは、まだまだ縁故採用に頼るというケースが少なくありません。
縁故採用の特徴といえば通常の採用とは異なり「志望動機や応募理由などがしっかりしていなくても、落ちることが少ない」という点が挙げられます。
縁故である故に、採用する側も無下に断ることができないというのが正直なところでしょう。
また、縁故採用が行われているのは、決して一部の企業だけにとどまりません。
大企業や官僚、政治家など会社の規模に関係なく見ることができて、政治家の世襲制などは、典型的な縁故制度だと思います。
経営者の家族はもとより、取引先や親会社の親族というだけで、内定を出されている人が大勢いるのです。
縁故採用の意味とは?
企業がコンプライアンスやガバナンスなどを強く求められる時代を迎え、人材採用や人材開発などに対しても厳しい視線が注がれるようになってきました。
日本全国にはたくさんの企業があって、生き残りをかけた厳しい競争を続けていますが、いつの時代も経営課題に挙げられるのが「優秀な人材の確保」だと思います。
安定的な人材確保を目指すためには、人材採用&人材開発は極めて大きな意味があると言えますが、昔ながらの”縁故採用”というやり方が今注目を集めています。
これは、読んで字のごとく家族や親族などの人脈、つまり人と人との繋がりを利用した採用手法になりますが、果たして縁故採用にはどのようなメリット&デメリットがあるのでしょうか?
縁故採用のメリット
縁故採用を導入するメリットとしては、下のようなものが挙げられます。
- 採用コストが下げられる
- 採用に関する業務効率化が図れる
- 離職率が下げられる
まず一番大きなメリットと言えるのが、採用コストが下がることです。
縁故採用を実施することで、求人広告を出す必要がなくなります。
よって、無駄な広告宣伝費が削れるのです。
もちろん縁故採用に協力してくれた人に一定金額の報奨金を支払うかもしれませんが、それでも莫大な広告宣伝費と比べれば微々たるものだと思います。
次に、採用に関する業務効率化が図れることです。
人事担当者を悩ましている一つの大きな要因が、事務作業の時間が多過ぎるということです。
人気企業では、年間で数万件のエントリーが入るので、その履歴書に目を通すだけでも一苦労だと思います。
さらにその中から良さそうな人を選別して、個人面接や集団面接をしていかなければいけません。
面接時間は5分10分という訳にいかないので、とてつもない時間を費やすことになります。
しかし縁故採用であれば、エントリー数自体を大幅に減らすことができるので、業務効率化に役立ちます。
しかも面接する人は”本当に入社したい人ばかり”なので、面談ロスも少なくなるはずです。
この話と関連されるメリットは、離職率が下がるということです。
縁故採用で入社する人は、一般窓口からエントリーする人と比べて離職率が低くなる傾向にあります。
この辺りについては後ほど詳しく解説しているので、最後までご覧ください。
縁故採用のデメリット
縁故採用に多くのメリットがあるのは理解できたと思いますが、実はデメリットもあるのです。
例えば、企業によっては取引先や得意先などからの要請で、縁故採用を受け入れなければいけないというケースもあると思います。
このような場合、縁故採用を無下に断ることができないため、採用担当者にとっては厳しい局面と言わざるを得ません。
というのも、縁故採用では志望動機や応募理由などが明確になっていないケースも多いため、「本当に優秀な人材なのか?」ということが判断しづらいのです。
コネ入社ともなれば、本人の実力や適性に関係なく内定が出されるので、採用する企業側のリスクは計り知れません。
田舎や地方にオフィスを構える企業に多いとされる縁故採用ですが、担当する上司にとって扱いにくい部下になることは明らかだと思います。
他の同期社員と同じように接することが理想的ですが、やはりどうしても縁故採用した人には厳しく指導できないという側面があるはずです。
仮に著しく業務スキルや知識が乏しいとしても、安易に注意をすることもできません。
そのようなことをしてしまうと、身内にチクられてしまい、自分自身のキャリアに影響してくるからです。
このように特別な意図がなくても、無意識に配慮してしまうというのが縁故採用の実態になります。
縁故採用だと辞めづらい…
縁故採用は、実際に勤務する当事者(=社員)にとってもデメリットがあるのです。
周囲の社員からしてみれば「優遇されて羨ましい…」と思うかもしれませんが、本人にとっては決して口にすることができない悩みを抱えることになります。
例えば、仕事を斡旋してくれた身内に恥をかかすことはできない為、突然に会社に来なくなってしまう、いわゆる「バックレ」することなど絶対できません。
社会人としてあるまじきバックレ行為をすれば、紹介してくれた知人や親などのメンツを潰すことになるので、大きな罪悪感が生まれることでしょう。
なので、もし万が一「会社を辞めたい…」と思った場合でも、通常採用とは異なる故に、退職のやり方にも苦慮するはずです。
縁故採用する時には、他の一般社員と同様に扱われることを望んで入社したものの、何かと特別待遇されることも多いのが縁故採用の特徴でもあります。
このような特別待遇がもし周囲にバレれば、同期や同年代の仲間が自然に離れていくはずです。
縁故採用を禁止にする理由
徐々にではありますが、縁故採用を禁止する企業が増えているのも事実です。
この動きは田舎や地方にも広がっていて、大企業はもとより、中小企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業にも例外なく広がりを見せています。
多くの企業が縁故採用の禁止に踏み切っている理由は、デメリットが多いこともさることながら、縁故採用が多様性を求められる時代に逆行しているからです。
永続的な企業経営をするためには「多様性」が求められるのは周知の事実なので、多くの企業経営者が縁故採用に対して疑心の目を向けています。
もしコネ入社した社員が「あいつは無能だ…」と言われるようなお荷物だった場合、社内のリスク要因にもなり得るので、そのような観点では縁故採用を続けるリスクは想像以上に大きいはずです。
縁故採用は時代遅れ
いわゆるワークライフバランスや働き方改革などの取り組みが加速している現代社会において、縁故採用は「既に時代遅れのやり方」と言っても過言ではありません。
もちろん違法行為や不法行為には当たりませんが、頑張って採用された社員からしてみれば、自らの努力や苦労がバカバカしく思えることでしょう。
そのような事実を知った社員の中には、会社に対してのロイヤリティが下がってしまう人も出てくるはずです。
グローバル社会が求めているのは、ありとあらゆる面における自由で平等な社会です。
そのような社会をつくるためにも、縁故採用は求められていないのかも知れません。
リファラル採用が流行中
ここまで縁故採用についてネガティブな情報が多かったかも知れませんが、実は縁故採用を見直す動きも一部で出ているのです。
それはリファラル採用というやり方です。
リファラル採用とは、既存の社員、又は外部パートナーから求職者を募るという採用システムであり、インターネットの発達と共に台頭してきました。
人事部や総務部の人であれば既に知っている仕組みだと思いますが、このトレンドがさらに変化してきています。
それは、既存社員の紹介に特化したリファラル採用を重視する企業が出てきたことです。
これはつまり、昔ながらの縁故採用に原点回帰したことを意味しています。
ただし、旧態依然の縁故採用とは違って、面接審査が一般採用レベルに厳しくなっていることが特徴的です。
実際に採用するためには、面談や適性試験に合格する必要があるので、社員から紹介された全ての人が無条件で採用されるということにはなりません。
この辺りは昔ながらの縁故採用との違いと言えるでしょう。
縁故採用のように既存社員から紹介されるのであれば、ある程度の採用見込みが立つのも事実だと思います。
よって、リファラル採用は今までの採用活動と縁故採用の長所を掛け合わしたような採用施策だと言えます。
リファラル採用する理由
リファラル採用の導入がここまで急速に進んだのは、そのメリットの大きさに起因しています。
リクナビ、マイナビなどの求人媒体を使った採用活動には莫大なコストが掛かりますし、人材紹介会社を通した採用活動も同様だと思います。
その点、既存社員からの紹介であれば、格段に少ないコストで優秀な社員を採用できる可能性が大いにあるのです。
というのも、あらかじめ自社の社員から求職者の評判を聞けるので、スキルを含めてミスマッチが起こりにくくなる為です。
また求職者側としても、すでに働いている社員からの口コミであれば、「入社してみてギャップを感じた…」ということが無くなります。
このように両者にとってメリットの多いリファラル採用ですが、日本ではまだまだ始まったばかりです。
しかし既に海外では当たり前のように活用されているので、むしろ日本が出遅れてると言えるでしょう。
自社に在籍する社員のネットワークを最大限に活用して人材確保に取り組むリファラル採用は、これまでの人材確保の常識を変えるほどのインパクトやポテンシャルがあると思います。
もし人材難に直面している場合には、一度リファラル採用を検討してみることをお勧めします。