老子(ろうし)は紀元前の中国春秋時代に生きた哲学者です。
あの有名な”孔子”と同じ時代に生きた偉人ですが、諸子百家のうちでも「道家」は有名ですよね。
孔子の名言集は下の記事をご覧ください。
老子の思想を基礎とした宗教が「道教」なので、その始祖として認識している人も多いでしょう。
そういった側面から見た場合、老子は”宗教家”なので数多くの名言を残しているのです。
そこで今回は、老子が残した名言をわかりやすく解説したいと思います。
老子(ろうし)の教えとは?
老子の思想といえば、道教の頭文字にもなっている「道」ですよね。
道とは、世の中のありとあらゆるしがらみから抜け出し、常に心穏やかで、心豊かに暮らせる境地のことを指します。
例えば、たくさんお金を手に入れたとしても、それが無くなってしまえばリセットされますよね。
たとえ大企業の経営者や、大人気のプロ野球選手だったとしても、引退すれば普通の人です。
そのようなしがらみ(地位や名誉、お金など)に囚われて生きていると、心穏やかに過ごすどころか、余計な心配事が増えてしまいます。
そうしたものを排除して、あるがままの心で生きることを推奨したのです。
老子の名言一覧
天は長く地は久し
生きていると悩み事が尽きませんよね。
そんな時には視点を変えてみましょう。
地球は46億年前から存在していると言われています。
そのような長い目で見た場合、人間の人生など一瞬の瞬きでしかありません。
つまり人生で抱える悩みなど、ちっぽけなモノでしかないです。
我は愚人の心なり、惷惷(しゅんしゅん)たり
人間には物欲がありますよね。
新しい車が欲しいと思ったり、人が持っているバッグを欲しいと思ったことがあるはずです。
ライバルに勝ちたいと思って、一生懸命勉強する人もいると思います。
周りと競争することは、老子曰く”愚かな行為”でしかありません。
老子の提唱する「道」という生き方から外れているからです。
つまだつ者は立たず
「つまだつ者」とは、無理してつま先立ちをしている人のことを言います。
自分の実力に合わない背伸びをしても、結局は長続きしないのです。
善く敵に勝つ者は与(あらそ)わず
これはつまり、”戦わずして勝つ”ことを述べています。
孫氏の兵法にも通じる言葉なので、気になる人は下の記事もご覧ください。
牝は常に静を以って牡に勝つ
これは男女関係を表した名言です。
老子は「男はプライドの高い生き物なので、それを逆手に取るのがいい」と言っています。
女性が常に穏やかでいれば、男性を思い通りにするのは簡単なのです。
物壮んなれば、則ち老ゆ
栄枯盛衰という言葉がある通り、一生勝ち続けることはできません。
それであれば、誰かに勝つことを目指すのではなく、精一杯自分の力を出し切るだけでいいのです。
功遂げて身退くは、天の道なり
この言葉は「成功したらいづれ退くことになるが、それは自然なこと」という意味です。
今の地位や名誉に固執するのではなく、潔く第一線から身を退くようにしましょう。
自らに勝つ者は強し
人間は弱い生き物なので、すぐ怠けたり、すぐに諦めてしまいますよね。
そのような弱い心に打ち勝てる人は、本当に強い人だと思います。
不争の徳
これは「争いを避けると得するよ」という意味の名言です。
争いを避けることで、あなたにはメリットがもたらされます。
そのメリットとは”協力者の最大化”です。
人間は一人で生きれないので、周りの人に助けてもらわなければいけません。
そんな時に周りが敵だらけだと、どうでしょうか?
上手に世渡りする為には、あなたを助けてくれる協力者を最大化しておいた方が良いと思います。
多くなれば則ち惑う
選択肢がたくさんありすぎると悩みは増えますよね。
ミニマリストを推奨するつもりはありませんが、余計なものを抱えるのはやめましょう。
無の以って用をなせばなり
この言葉は、「何もなくても、それでなんとかなる」という意味の名言です。
あなたが暮らす部屋の中を想像して欲しいですが、物がたくさんありすぎると、それ以上モノを運び込むことができませんよね。
もちろん身体を休めることもできません。
なので、モノは少なければ少ないほど良いのです。
何も無いことを貧しく感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
モノが少ないことは可能性の塊(=余裕がある)なのです。
この道を葆(たも)つ者は、盈(み)つるを欲せず
常に100点満点(=盈つる)を取り続けるのは大変ですよね。
「60点くらい取れれば十分」という気持ちで生きた方が、きっと幸せになれると思います。
聖人は積まず
「積むもの」とは不満や不安のことです。
つまり、幸せな人は不満や不安を溜め込まないのです。
シンプルな話ですが、これが実践できれば、きっとあなたも幸せになれるはずです。
私を少なくし、欲を寡(すくな)くす
私とは「私心」のことです。
私心をなくして、欲を少なくすれば、人との争いが無くなるはずです。
逆にその心が強くなると、悩み事が増えるはずです。
十分注意しましょう。
我恒に三宝あり、持してこれを宝とす
- 誰に対しても慈しみを持つこと
- どんな人に対しても情け深くあること
- 争いで傷ついた人に心を寄せる気持ちを持つこと
これが老子がいう”3つの宝”です。
知らずして知れりとするは、病なり
知ったかぶりをしたり、わかったつもりで過信することは、「もはや病気である」と老子は言っています。
大いなる者は、よろしく下となるべし
優秀な人は、わざわざ偉ぶったり、虚栄を張る必要がありません。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という格言もありますが、そのような生き方が理想的なのです。
ことわざが好きな人は下の記事もぜひご覧ください。
功を成し事を遂げ、而して百姓は我自ら然りと謂う
これはリーダーが知っておくべき考え方について語った名言です。
部下には「やらされた」と思われるのではなく、「自分で成し遂げた」と思わせるのが優れたリーダーなのです。
矜(ほこ)らず、故に能く長ず
優秀な人は周りに自慢しないので、かえって評価されるケースが多いです。
あるがままに生きるということは、余計なことをしないことなのです。
光りて輝かず
この言葉は「能ある鷹は爪を隠す」と同じ意味の名言です。
あえて才能を見せない賢さを語ったのです。
真言は美ならず
本心から出る言葉は、素朴で飾り気がないものです。
逆に美しい言葉ほど毒が潜んでいるのです。
止まるを知るは、殆うかざる所以なり
進むことだけが正解ではありません。
時には立ち止まって考えることも必要でしょう。
学を絶てば憂いなし
ここで言う「学」とは、勉強というよりは常識のことです。
常識に捕らわれてしまうと、盲目になる可能性があるので注意しましょう。
足るを知るの足るは、恒(つね)に足る
これはとても有名な名言ですよね。
人間の欲望は果てしないので、今現在の自分で満足することが重要なのだと思います。
生を出でて、死に入る
人間は生まれたら必ず死ぬ運命にあります。
アップルを創業したスティーブ・ジョブズは、毎日鏡に映る自分にこう投げかけていたそうです。
「もし今日が人生最後の日だったら、今日やろうとしていることを“やりたい”と思うだろうか?」
常に死を意識しながら生きることで、人生を充実させることができます。
人生は有限(=時間が限られている)なのだと認識できるからです。
ジョブスの名言を知りたい人は、下の記事をご覧ください。
多聞なればしばしば窮す
周りからの意見が多かったり、知識が増えすぎると人は行き詰まります。
答えが見えなくなった時には、原点回帰することも重要なのです。
千里の行も、足下より始まる
何事もコツコツ一歩一歩進めるしかないのです。
近道など考えず、焦らず着実に前進しましょう。
敵を無みするは吾が宝を亡うに近し
この言葉は「動くべきでないところで動くから、人は大切なものを失ってしまう」という意味の格言です。
敵を侮って、考えもなしに攻撃することは、弱者が絶対にやってはいけない行為です。
競合他社を軽く見ず、慎重に行動しましょう。
大器は晩成す
「大器晩成(たいきばんせい)」というのは、有名な四文字熟語ですよね。
とてつもなく大きな器(=才能)は、完成するまでに多くの時間がかかるものです。
四文字熟語が好きな人は、ぜひ下の記事もご覧ください。
天地は不仁なり
人間は思惑で動きますが、自然はえこひいきすることがありません。
ありのままの自分で生きるということは、自然体で生活することなのです。
善く戦う者は怒らず
この言葉は「賢い人は怒らない」という意味の名言です。
相手と口論しても仕方ないので、冷静に話し合うことを心掛けましょう。
もしそれができない場合には、アンガーマネジメントを身につけた方がいいでしょう。
上善は水の如し
これはとても有名な言葉ですが「一番いいのは水のように生きること」という意味の名言です。
水というのはしなやかで抗うことなく、その状況に応じて変化するので、まさに老子が提唱する「道」そのものだと思います。
ありのままに生きる理想型なのでしょう。
怨みに報ゆるに徳を以ってす
この言葉は「怨みには恩恵を与えましょう」という意味の名言です。
キリスト教にも「右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ」という格言がありますが、何か通じる部分があると思います。
イエス・キリストの名言を知りたい場合は、下の記事をご覧ください。
上徳は徳とせず
あるがままに生きるというのは、虚栄を捨て、傲慢さを捨て、常識を捨て、欲望を捨てることで実現します。
老子の言う「道」を体現する為には、儒教で言う「仁」や「義」でさえも、心を曇らせると言っているのです。
老子曰く最高の徳はあるがまま、「道」のままに生きることだと言います。
孔子の言う「仁」や「義」が知りたい場合には、下の記事をご覧ください。
柔弱は強に勝つ
この言葉は座右の銘にぴったりだと思います。
「弱者は強者に勝てない」と言われますが、柔軟さを持ち合わせた弱者は、強者に勝るのです。
例えばフットワークが重くて考え方が古臭い大企業と、フットワークが軽い小企業では、圧倒的に小企業の方が有利になります。
なぜかと言えば、ビジネスにおいては行動力が何より重要だからです。
それを体現した経営戦略論が「ランチェスター経営」です。
もし気になる場合は下の本を読んでみてください。
まとめ
ここまで道教の始祖であり、偉大な賢人と言われている「老子」の名言集を解説してきました。
最後まで読み進めた人は、老子が提唱する「道」という考え方が少し理解できたはずです。
この考え方は、心理学者のアルフレッド・アドラーが提唱する個人心理学と似た部分があるので、もしアドラーの考え方を知りたい場合には下の記事をご覧ください。