金銭により人の心を操るような報酬制度を京セラはとっていない。
アメーバ経営はユニット制なので、自分の所属するユニットが好成績を出した場合、そこにインセンティブを支払う気がしますよね。
しかし京セラでは、いくらアメーバが時間あたりの生産性を高めたとしても、それによって昇給したり、賞与が増えるということはないそうです。
もちろん長期的な処遇には反映されるのですが、大きく貢献したユニットには賞賛と感謝という「精神的な栄誉」が与えられるだけなのです。
この部分について稲盛和夫は「京セラの経営理念は、信じ合える仲間の幸福のために貢献することだから、会社への貢献を皆から賞賛されることが最高の栄誉であると考えている」と語っています。
むしろ成果主義で見られるような実績数に直結した金銭的インセンティブは、非常に危険であると稲盛和夫は警鐘を鳴らしています。
アメーバ経営は、経営者と従業員、従業員同士の間にある信頼関係をベースにした全員参加の経営である。
「どうすれば当事者意識を持ってくれるのか?」と経営者は頭を悩ましていますよね。
アメーバ経営であれば一人一人が「自分も経営者だ」という意識を持つので、自然に当事者意識が身につくのです。
組織運営をしていく上で重要なことは、本当に実力のある人がその組織の長につくことである。
稲盛和夫は年功序列や温情主義について警鐘を鳴らしています。
実力のない人物がリーダーになると、会社経営はすぐに行き詰まり、全従業員が不幸を背負うことになるのです。
よって、京セラでは「実力主義」を原則にしているそうです。
アメーバ経営における組織編成は「まず機能があり、それに応じて組織がある」という原則に基づいて、最低限必要な機能に応じた無駄のない組織を構築することが基本になっている。
会社には経理部、総務部、人事部、企画部、製造部、営業部…などの部署がありますよね。
そのような部署を先に作るのではなく、まずは会社運営に必要な機能を考えるのです。
もし人材採用を積極的にやらないのであれば「人事部は必要ない」ので総務部と一緒にします。
総務関係の仕事がそんなに無ければ、経理部と一緒にして「管理部」と命名しても良いでしょう。
このように会社運営に必要な機能を軸に、組織を構築していくのです。
組織変更においては「朝令暮改も必要である」という前提に立つ、ダイナミックな事業展開を心がけるべきである。
リーダーの中には「指示が二転三転すると現場が混乱する」と慎重に構える人は多いですが、スピード感をもった経営を心がけるのであれば、多少の歪みは仕方ありません。
誤った判断だと気付いた場合、もし最適解が閃いたのであれば、むしろ積極的に朝令暮改した方が良いと思います。
あらゆる創意工夫によって売上を増やす一方で、常に経費を徹底して切り詰めていくことが経営の原則である。
利益を増やすためのアプローチは、究極的に言えば2種類しかありません。
- 売上を増やす
- 経費(コスト)を削減する
どちらのアプローチでも利益を増やせますが、スピード感のある経営をしたいのであれば、まずは経費削減から始めていきましょう!
雑費というのは種々雑多な経費からなり、他の科目に比べて金額が小さいから雑費なのであって、無視できないような大きな金額であればそれを一括りにすべきではない。
これは雑費について語った名言です。
多くの企業では、他の経費科目より雑費の方が大きいという場合があります。
そのようなどんぶり勘定に対して警鐘を鳴らしたのです。
アメーバ経営では「コスト意識」が重要なので、一つの勘定科目についても真剣に捉える必要があります。
アメーバ経営では、営業部門と製造部門がそれぞれ独立採算(プロフィットセンター)であるために、アメーバの全員が少しでも付加価値を高め、採算を向上させるように努力する仕組みとなっている。
経営学の父と言われているピーター・F・ドラッカーは「営業部門以外全てコストセンターだ」と言いました。
経理部門や製造部門は直接的に利益貢献しないので、コストだと言い切ったのです。
しかし、アメーバ経営では全てのユニットがプロフィットセンターだという考え方になります。
ピーター・ドラッカーの考え方と比較したい人は下の記事もご覧ください。
「売上最大、経費最小」という原理原則は、時間あたり採算制度のベースとなるものである。
アメーバ経営を理解する上で「時間当たり採算制度」について、きちんと理解しなければいけません。
時間当たり採算制度は、アメーバ経営を実現するために稲盛和夫が考案した会計制度です。
そんなに難しい話ではありませんが、考え方は以下の通りです。
※あくまでも金額は一例です。
まず売上高100万円(社内販売、社外販売の両方がある)だった場合、その中から購入した金額30万円(社内購買、社外購買の両方がある)を差し引きます。
つまり売上から原価を差し引きます。
するとアメーバの儲けである70万円(粗利)が導き出されますが、そこから今度は諸経費(販管費)を差し引くのです。
もしその金額が20万円だった場合、差し引き50万円のアメーバ利益となりますよね。
そしてアメーバ経営の場合には、その金額の中に人件費が含まれていないことが特徴的です。
一般的な会計制度の場合、販管費の中には人件費を含めますが、人件費はユニットリーダーがコントロールできる部分ではない為、アメーバ経営の時間当たり採算性を測る上で除外すべき項目とされたのです。
あとはアメーバの総労働時間を計算し、その総労働時間とアメーバ利益を割れば時間当たりの採算金額が導き出されます。
「総労働時間=1日8時間×20日=160時間(残業があればその時間も含める)」
「50万円÷160時間=3,125円」
これは1名のアメーバだった場合を想定した計算ですが、もちろんアメーバ内に複数人のメンバーがいれば、その人達の労働時間全てを計算に加味する必要があります。
ここで導き出された3,125円というのが、このアメーバの「時間当たりの採算金額」になる為、時給1,000円で人を雇えば、1時間あたり2,125円の利益が出せるという計算になるのです。
ある部署で時間あたり労務費が平均3,600円かかっているとする。
そうすると1分間あたり60円、さらに言えば1秒間に1円の労務費が発生していることになる。
人件費について1秒単位まで計算する社長は少ないと思います。
稲盛和夫はとてもコスト意識の高い経営者でした。
大企業の経営者としては珍しいですが、たとえ1円だったとしても、決して無駄にしない意識を持っていたのです。
現在の企業経営ではスピードが何よりも重視されており、時間効率をいかに高めていくかが、競争に勝つためのカギとなっている。
アメーバ経営における時間あたり採算制度によって、現場の指標に「時間」という概念を持ち込みました。
それによって一人ひとりが時間の大切さを自覚するようになり、生産性を上げることに成功したのです。
アメーバ経営は革新的システム
ここまで京セラ創業者「稲盛和夫」の名言集をご紹介してきました。
読み終えた人はアメーバ経営というやり方が「いかに革新的な経営手法だったのか」が理解できたはずです。
- 従業員に当事者意識が芽生えない…
- 従業員のモチベーションが上がらない…
- コストを上げずに生産性を高めたい…
- 事業のボトルネックがすぐに見つからない…
- 企業経営を透明化したい…
このような課題を抱えている企業には、アメーバ経営がぴったりかもしれません。
「経営の神様」と呼ばれることも多い稲盛和夫なので、ぜひ残された「有益な知識(ノウハウ)」をあなたのビジネスに活かしてみてください。
稲盛和夫が好きな人は下の記事もぜひご覧ください。