「総代理店」という代理店制度をご存じでしょうか?
これは独占的な代理店の仕組みと言われていますが、メーカーにとって大きなメリットがあるので様々なシーンで利用されています。
ここでは総代理店の仕組みのご紹介や、儲かる仕組みを解説していきたいと思います。
目次
総代理店とは?
代理店制度を構築する際、しばしば総代理店という仕組みを使うことがあります。
総代理店とは、「複数の代理店を統括してくれる代理店」のことをいいます。
つまり代理店の中のボス的な存在なのです。
一次代理店と混同されてしまう場合がありますが、役割にはかなり大きな違いがあります。
総代理店と一次代理店の違い
代理店制度はピラミッド型の構造にするのが一般的で、そのトップに位置して、メーカーと直接取引をするのが一次代理店になります。

その下で営業活動をするのが二次代理店になり、さらに下には三次代理店、四次代理店・・・と階層が設けられていきます。
一方、総代理店はこのような階層構造の中に位置付けられるわけではなく、一次代理店の選定や管理を行うのが主な業務になります。
つまり、メーカーと対等な位置に属していて、立場的にはメーカーの代理店営業部のようなイメージなのです。
総代理店の業務内容とは?
総代理店が見込み顧客を探して営業活動をするかはケースバイケースですが、取引量の多い一次代理店ができた場合、その管理や統括に回るのが一般的です。
メーカーから営業全般をアウトソーシングされているので、代理店開拓する権限はもちろん、セールスにかかる全権限を持っていることになります。
ただし、メーカーが扱うすべての製品サービスの代理店を管理するわけではなく、管理するエリアも限定されるのが通例です。
このようにエリア別に管理されている代理店制度を、「エリア代理店」と呼んでいます。
そのような意味では、総代理店とはいえ、ある程度限られた範囲内で営業活動の全権を握ることになります。
独占販売権が手に入る
総代理店になるメリットとして挙げられるのが、その商材の独占販売権が手に入ることです。
独占販売権とは商品サービス、営業エリアや市場などに制約を設けた上で、その範囲内で独占的に販売できる権利を指します。
例えば、メーカーが開発した新製品について、中国市場に限定して全ての販売活動をその代理店に任せるといったものが典型的です。
総代理店は他の代理店を使って、適切な形で営業活動させるのが主な役割なので、エリアや市場などの枠内では決裁権限を持つことになります。
一つ一つの決定を全てメーカーに確認していては、営業活動に支障をきたすので、ある程度の裁量権を付与しておいた方が良いと判断される為です。
そのため、セールスだけでなく営業活動に関わるあらゆる権利と、代理店を開拓して任命する権利が与えられているのが一般的です。
総代理店の仕組みは違法?
総代理店はメーカーと対等な立場で業務を執行していくので、「総代理店が何社もある」という状態にはなり得ません。
他の会社が総代理店になれないとすると、「独占禁止法に抵触するのではないか?」と考える人がいるかもしれません。
公正取引委員会の流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針というガイドラインには、違反と考えられる事項について述べられていますが、基本的に総代理店の仕組みは合法的です。
なぜならば、総代理店になれなくても、代理店にはなれるからです。
独占権を有しているといっても、代理店開拓に関する部分のみなので、特に問題が無いということになります。
二次代理店を構築するメリット
代理店制度を作り上げる上で、重要な役割を果たすのが二次代理店です。
一次代理店の下で、顧客を増やす役割を担っているのが二次代理店なので、二次代理店を活用すれば販売網を飛躍的に拡大させることができます。
基本的には一次代理店の下に複数の二次代理店を用意し、それぞれにエリアを割り振ったり、役割を分担させたりするのが通例です。
しかし、二次代理店を増やせば増やすほど対応コストなどの手間がかかることは否めません。
また、中にはルールを逸脱する二次代理店も出てくるので、コンプライアンス研修も実施しなければいけません。
代理店の対応コストは、代理店数に比例して増えていくので、この辺りは注意が必要だと思います。
ただ、二次代理店を増やすことで固定費(直販営業を増やさなくて済む)を実質的に軽減できるなど、コスト削減につながる部分もあります。
全体としてのコストはそれほど単純に計算できるものではないですが、アクセルとブレーキを上手く使い分けながら慎重に前進していきましょう。
二次代理店を増やすメリット
二次代理店を活用するメリットとして、一番大きいのは「営業や販売のやり方にバリエーションが生まれる」ことだと考えられます。
個々の代理店にある程度の裁量を与えることで、代理店は独自のアイデアで顧客開拓をしてくれます。
すると、今までは思いつかなかったような営業手法や販路を見つけることができるので、商品サービスの拡販にも繋がっていきます。
二次代理店は業種業態に狙いを定めて開拓するのでもOKですが、公募して代理店希望者を集めることもできます。
公募すると代理店開拓の手間が省けるので、パートナー開拓を任されている担当者は一度検討してみても良いと思います。
その場合には、代理店募集サイトなどを利用されることをオススメします。
代理店が仕入れると儲かる
一般的な代理店制度では、「代理店がどれだけ売ったか?」ではなく、「代理店がどれだけたくさん仕入れたか?」によって売り上げが変わっていきます。
代理店は商品を販売するために、本部(メーカー)から仕入れをすることになります。
もちろん全ての商材に仕入れが発生するとは限りませんが、このようなケースが多いのは事実だと思います。
そのため、代理店が大量仕入れをすればするほど、メーカーは儲かることになります。
代理店制度では、仕入れたものを販売代理店が売っていき、さらに仕入れるとまたメーカーが儲かる、という循環型の仕組みになっているのです。
これが、一次代理店、二次代理店、三次代理店・・・という階層構造になっていると、仕入れる人(=販売する人)が増えていくので、その分だけ売り上げが増えやすくなります。
一次代理店が儲かる仕組み
一次代理店が儲かる仕組みも、メーカーが儲かる仕組みとほぼ一緒です。
二次代理店が商品を売って、在庫を仕入れようとすると、一次代理店から仕入れることになります。
よって、たくさんの二次代理店を持っている一次代理店では、常に大量に在庫を用意して、それぞれの代理店からの要望に応えられる体制作りが求められます。
結果として、比較的初期段階から大量の仕入れをすることになり、メーカーの懐がかなり早い段階で潤うことになるのです。
このように、消費者の手に渡るときではなく、代理店が仕入れた時点でメーカーに利益がもたらされるのが、代理店制度の特徴といえます。
メーカーは代理店制度を活用することで、キャッシュフローを改善することができ、次の商品の開発や事業展開を早めることができるでしょう。
一次代理店が儲かる仕組みは、下の記事で詳しくまとめていますのでぜひご覧ください。
総代理店は独占禁止法に注意
先ほど、総代理店という仕組みは独占禁止法に当たらないと解説しました。
しかし、傘下の代理店(一次代理店など)と契約締結するときには、独占禁止法に抵触する可能性があることに留意しておきましょう。
独占禁止法とは、価格協定を結ぶなどの方法で商品の価格を一部の業者が独占的にコントロールできないようにし、価格競争が行えるようにすることを目的に制定されています。
そのため、価格統制が行われる可能性がある内容が契約に盛り込まれていると、独占禁止法に違反する可能性が高まります。
この辺りについて、もう少し詳しく解説していきたいと思います。
独占禁止法違反の例
独占禁止法違反の代表例として挙げられるのが、再販売価格の制限です。
- メーカーが総代理店の販売価格を制限する
- 総代理店が傘下の代理店に再販売価格を指示する
契約書の内容が上記のような形式になっていると、それは法令違反になるかも知れません。
あるいは、メーカー(代理店本部)の競合製品の取り扱いを制限することも、独占禁止法に抵触すると言われています。
また、総代理店や販売店に対して、取引先を制限するようにメーカーが指示することも禁止されています。
この他にも「販売方法について制限できない」など、問題となり得る項目はガイドラインにいくつか挙げられています。
公正取引委員会:独占禁止法のホームページ
独占禁止法に違反しないかどうかは、メーカーや総代理店である以上、よく確認しておく必要があります。
きちんとルールを守りながら代理店展開するようにしましょう。