
あなたは「ドブ板営業」という言葉をご存知でしょうか?
現在ではあまり使われることがない言葉ですが、一昔前までは一般的に使われていた表現になります。
現代の営業スタイルにも通ずるものがあるので、今回はドブ板営業について解説していきたいと思います。
目次
ドブ板営業の意味とは?
「ドブ板営業」という語感から、なんとなく泥臭いイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし実際にはそのイメージ通りで、過酷かつ地道な泥臭い営業手法の一つです。
その語源は、「ドブ板選挙」に由来すると言われています。
ドブ板選挙とは、まだ政治家による戸別訪問が禁止されていなかった頃の選挙活動のことです。
候補者自らが一軒一軒の家を訪ねて、自身への投票を呼び掛けるので、いわゆる「足を使う営業スタイル」で選挙区全ての家を歩き回るのです。
当然ドブだらけの裏路地にあるお宅もしらみ潰しに足を運ぶので、候補者はドブの上にかかった”橋代わりの簡易的な板”を一枚一枚踏みしめて、有権者に挨拶して回ります。
その結果、自分の足を使って票を集める地道な選挙活動は、やがて「ドブ板選挙」と呼ばれるようになりました。
同じような流れで、セールスマンが一軒一軒訪ねて回る営業スタイルを「ドブ板営業」と呼ぶようになったのです。
飛び込み営業とは違うの?
「ドブ板営業」と「飛び込み営業」は、いずれも同じ意味合いの言葉です。
両方ともアポなしで、見込み顧客に対してアタックしていきます。
その前提ですが、泥臭い地道な努力が必要な場面では、ニュアンス的に「ドブ板営業」と呼んでいるのです。
ドブ板営業はその名の通り、いわゆる「最底辺の営業スタイル」と認識されています。
経歴や学歴などが関係なく、希望する人なら誰でも就けるような職業なのです。
ドブ板営業ではアポなしの飛び込み訪問が主流なので、ターゲットの絞り込みもしません。
指定されたエリアのターゲット全てに、営業をかける、いわゆる「ローラー営業」の方式を取ります。
流石に現代社会ではドブ板を渡るようなケースは減ったと思いますが、見込み度合いが低い相手にも突撃するような、泥臭い営業努力が求められる点は昔と変わりません。
体力と精神力の両方を激しく消耗する営業スタイルなので、この方法で成果やノウハウを得てきた”叩き上げの営業マン”も少なくないのです。
ドブ板営業は銀行や証券に多い
色々な業界で営業活動は行われていますが、その中でも特に銀行や証券の営業パーソンは過酷な仕事内容で知られています。
銀行や証券営業マンは過酷な口座開設ノルマ、預かり資産の増加を命じられており、それを達成するために自力で新規開拓しているのです。
会社にもよりますが、年間100件前後の新規口座開設を命じられるケースが多いと思います。
年間稼働日は200日強なので、2日に1件ぐらいは新規開拓しなければノルマ達成できません。
このような数字を達成するためには、テレアポだけでは不足します。
そんな時にドブ板営業を選択する場合があるのです。
ドブ板営業は顧客の「質」だけでなく、アタックする「量」も重視する営業スタイルなので、体力に自信があれば誰でも結果が出せます。
営業スタイルとドブ板営業がマッチしている
銀行や証券業界で「ドブ板営業」が使われるのは、商品の差別化が難しいからとも言われています。
金融商品は法律や規制との兼ね合いもあって、条件面(利率など)で差別化しにくいのです。
つまり各社で商材が似通ってしまうのです。
このような場合、ライバルと差別化するためには人(営業マン自身)を売り込むしかありません。
そのため、営業マンは同じ家に何度も足を運んで、挨拶を続けるわけです。
顧客としてはフットワークが軽く、担当者が気軽に来てくれるのは安心感があります。
相談したいことがあったり、何か問題が生じたりしても、すぐに担当者が来てくれるのは大きなメリットだと思います。
そのような信頼を勝ち取るために、営業マンはドブ板営業で地道な努力を積み重ねていきます。
この方法なら、大学卒業したばかりの新卒営業でも、受注できる可能性が高まります。
40歳過ぎのベテラン営業マンが飛び込み営業してきたら引いてしまいますが、20代前半の営業マンだった場合は誰でも応援したくなるものです。
何度もお宅へ訪問するうちに、やがて顔と名前を覚えてもらって、ある程度の「情」も湧いてくることでしょう。
それを何度も続けていると、ふとしたことがきっかけで、契約締結に至るのです。
とはいえ、ドブ板営業が効率の良い営業スタイルとは言えないので、苦しい戦いになることは必須だと思います。
ドブ板営業は辛い…
ほとんどの営業経験者が、「ドブ板営業は辛い」と口を揃えます。
見込み度合いが低い相手に対して、足を使って営業していくので、成果はほとんど期待できません。
人によっては1週間や1カ月間、断られ続けることも珍しくはないのです。
これだけでも苦しい仕事だとわかりますが、営業マンは更に、会社への報告があります。
毎日のように「今日は成果がありませんでした…」と上司に報告するのは非常にしんどいですよね。
説教されるのはもちろんですが、それを打開するための術を持っていないことが一番つらいはずです。
自分自身では何も解決できないのに、問題点だけ指摘されて、暗中模索の状態になってしまうと思います。
しかも周りが成果を出している場合は、精神的にも追い詰められてしまいます。
ドブ板営業は新人営業の登竜門
このようなキツイ「ドブ板営業」ですが、新入社員にとっては避けて通れない道です。
なぜかと言うと、優良顧客はベテラン営業マンに任せるからです。
万が一新人営業に大切なお客様を任せてしまって、トラブルが起こった場合、目も当てられません。
なので、営業力が乏しい新入社員は、失敗しても被害が少ない「ドブ板営業」から始めるわけです。
過酷な営業スタイルを未経験者が担うので、当たり前のことですが短期間で次々と脱落していきます。
営業ノルマが達成できず、入社して数年のうちに大半の社員が辞めていくのです。
ただ、厳しい反面、得られるモノもあります。
営業トークや精神力が鍛えられる他、この経験を通して営業の基礎を学んだ人も多いのです。
営業マンとして成長するための要素が詰まっている営業スタイルなので、辛い時期を乗り越えれば飛躍することも夢ではありません。
多くの社員が脱落しますが、それを切り抜けた営業マンは将来に希望が持てるのです。
このような観点では、ドブ板営業こそが営業職における登竜門と言えるでしょう。
ドブ板営業のコツとは?
ドブ板営業の場合は「初めまして…」から始まる営業スタイルなので、とにかく第一印象を良くしなければいけません。
お客様は営業マンが持ってきた情報(製品サービスなど)だけではなく、人柄で判断することも多いです。
現代社会は詐欺が横行しているので、消費者側も疑り深くなっています。
もしも「人間的に信頼できない」と判断されると、全ての営業トークが胡散臭く感じられてしまいます。
なので、まずは身なりを整えるようにしましょう。
この辺りについては下の記事をご覧ください。
誠実さをアピールする
誠実さをアピールするためには、身なりを整えることが大切です。
その上で約束事をきちんと守りましょう。
「次は何日の何時に、お伺いしますね」と言ったら、それを必ず守ります。
「次回は、パンフレットをお持ちします」と約束した時も、決して忘れてはいけません。
このような些細な事が、後々の信頼関係に繋がっていくのです。
ターゲットを分析する
ドブ板営業の基本はローラー営業です。
つまり、営業するエリアを特定して、そのエリア内にあるお宅を全てしらみつぶしに回るのです。
しかし、このようなやり方は決して効率的とは言えません。
なので、予めターゲットになりそうな人物(ペルソナ)を想定し、そのようなお宅をリストアップしておきましょう。
戸建住宅に営業する場合、独居老人や主婦、一人暮らしの若者など、色々な相手を対応することになるはずです。
そこでしどろもどろになるのではなく、それぞれに適したアプローチ方法(営業トークなど)を事前に用意しておきましょう。
この時には特定商取引法にも注意しなければいけません。
訪問営業でやってはいけないことが法律として明記されているので、ドブ板営業をやる場合には必ずチェックしておきましょう。
実際に相手と対面した時には、
- どのような悩みを持っているか?
- 何に興味がありそうか?
というようなヒアリングを重視します。
まずはお客様が「潜在ニーズ」なのか「顕在ニーズ」なのかを探り出す必要があるのです。
それに合わせてセールスを展開していきます。
これは難しいと感じるかも知れませんが、慣れてしまえば問題ありません。
「ドブ板営業」は数をこなす分、たくさん失敗できるので、その成長が早いと言われています。
なので、愚直に&真面目にドブ板営業を実施していきましょう。
そのような経験が、きっとあなたの財産になるはずです。