会社の給与形態を考える場合、「歩合はどうするか?」という問題が出てくるはずです。
歩合制は多くの企業で導入されているので、もちろんあった方が良いように思われます。
そこで今回は、歩合制度を導入する場合の注意点や、歩合率の設定方法に関して解説していきたいと思います。
目次
歩合制の仕組みとは?
歩合制は「インセンティブ制」とか「出来高制」と呼ばれることもある仕組みです。
その特徴は成果報酬であることです。
一般的なサラリーマンは毎月決まった給与が支給されますが、それと別に支給されるものが歩合給なのです。
このような仕組みは営業職に多いのですが、例えば以下のようなイメージになります。
※10月の月給が30万円、10月の歩合給は5万円だった場合
30万円+5万円=35万円
月給に歩合給がプラスされるので、結果的に総支給額が多くなることになります。
これはとても嬉しいことだと思いますが、営業マンごとに歩合給の金額が変わるので、人によっては歩合給ゼロということもあり得るので、それが歪みとなって営業部全体がギクシャクする可能性も否定できません。
つまり、トップセールスの人には毎月歩合給が10万円出ている場合、毎月歩合給0円のできない営業マンと比較した場合、年間で120万円以上もの所得差になってしまうのです。
もちろんこれは個々人の成果に応じるので仕方がありませんが、優秀な人だけを生かして、できない人材を切り捨てていく経営方針の表れなので、全ての人が気持ちよく働ける環境ではないと思います。
そのような会社は常に人材を採用しては切り捨てる自転車操業をするので、いつまで経っても採用コストが負担になり続けます。
このような企業経営は決して理想的と言えないので、歩合制を導入する場合には注意しましょう。
歩合率とは?
歩合制についてお伝えしましたが、それを導入する場合「歩合給をいくら還元するのか?」という問題が発生します。
つまり歩合率の問題です。
先ほどの例では「歩合給5万円」とお伝えしましたが、それは固定金額ではなく、毎月変動することが前提になります。
なので、人によっては固定給よりも歩合給の方が多くなったり、歩合給ゼロということが十分あり得るのです。
歩合制を導入する場合には、「どんな仕事に対して、いくら還元するのか?」という歩合率を決めなければいけません。
歩合率の相場
歩合率を決める場合、「何%にするのか?」という問題が発生しますが、その金額に正解はありません。
あくまで企業経営なので、会社として利益が出た分から還元するという考え方で良いと思いますが、決して無理をしないことが重要です。
なぜかと言うと、会社員というのは経営者と雇用契約を結んでいる関係なので、フルコミッション営業マンとは違うからです。
フルコミッションというのは「完全歩合制」を意味する言葉で、個人事業主の人などを指す言葉です。
フルコミッション制度について解説すると長くなってしまうので、詳しくは下の記事でご覧ください。
つまり、フルコミッションの人はリスクを負っているので大きく還元されなければ「リスク&リターン」が成り立ちませんが、会社員の場合たとえ歩合給ゼロだったとしても「給料ゼロ」ということにはなりません。
サラリーマンには必ず固定給が出るので、そういった観点ではリスクが低い働き方なのです。
このようにリスクオフしている人に対して、歩合給をたくさん還元する必要はありません。
あくまでも「頑張りに対しての謝礼」という感覚で良いはずです。
なので、決して歩合給に相場などはなく、無理のない金額で支払えば良いと思いますが、おおよその目安としては「月の固定給×10%」くらいが一般的だと思います。
つまり、毎月30万円の給料を受け取っている営業マンであれば、インセンティブ金額は3万円ぐらいが妥当なのです。
もし粗利率が高い製品サービスであれば、20%(6万円)くらいを支給しても良いと思います。
歩合給を固定金額にするのもアリ
歩合給を支払う場合、社内規定で歩合率を設定すると思いますが、その金額を固定給にすることも可能です。
その場合には、「月間賞」「年間MVP」などの制度を設けることが良いと思います。
例えば、今月の売り上げ上位3名の営業マンには、一律5万円を支給するような歩合制度になります。
このようなやり方であれば、予算組も簡単になると思います。
つまり、歩合率で計算してしまった場合、その金額は毎月の変動費になりますが、歩合給を固定にした場合は毎月決まった金額の販管費で済みます。
この方が企業経営する上では支出が少なくなりますし、上位3名に選ばれた営業マンの自尊心をアップさせることもできます。
もちろん上位3名ではなくて、上位5名は上位10名でも構いません。
また、社内表彰制度は入賞できなかった営業マンを鼓舞することにも繋がるので、営業部全体の士気を上げる為には効果的だと思います。
ノルマ達成に対して還元する
もっとシンプルな考え方としては、ノルマを達成した営業マン全員にインセンティブを還元するという考え方もあります。
例えば今月のノルマが売上100万円だった営業マンがいて、そのノルマ100万円を無事に達成したとします。
その営業マンに対して、歩合給5万円を支給するような仕組みのことを言いますが、このやり方も非常に効果的だと思います。
まず、営業マン自身がノルマ達成することのモチベーションに繋がりますし、企業経営する上でも非常に読みやすい予算組みができます。
つまり、ノルマ達成した場合は売上100万円が確定するので、その粗利が50万円だった場合、その10%である5万円を支給するという構図になってきます。
すると、残り45万円が会社の粗利になるので、きちんとノルマ達成してくれる営業マンが100人いれば、4,500万円の粗利が確定することになります。
このような計算式が成り立つのであれば、事業責任者は全ての営業パーソンに対して「絶対にノルマ達成の歩合給を取るように!」という指示が積極的にできるようになります。
そして、この言葉を受け取った現場の営業マン達は、とても前向きな気持ちで仕事ができるはずです。
企業経営者からすると歩合給はなんとなく「コスト(無駄金)」のような見え方になってしまいますが、上記のような考え方であれば、むしろ「積極的にインセンティブを支払いたい!」という気持ちになれるはずです。
このような仕組みは、社長と従業員双方にメリットのある仕組みだと思います。
歩合率は変更できるの?
会社の規定として歩合率を設定した場合、その後に割合を変更できないと思っている人がいますが、決してそんなことはありません。
経営方針によって歩合率は柔軟に変更しても構いません。
例えば、景気が悪くて業績が悪化した場合、「当面の間は歩合給なし」とするのでも大丈夫なのです。
あくまでも相手は会社員なので、毎月の固定給さえ払っていれば何の問題もありません。
歩合給とは社員のモチベーションを上げるためのカンフル剤なので、絶対に支給しなければいけない給与ではありません。
先ほどもお伝えした通り「日頃の頑張りのお礼」くらいの感覚が歩合給になります。
しかし、この歩合給を期待している営業パーソンがいるのも事実だと思います。
例えば、前職でバリバリ歩合給をもらって稼いでいた優秀な営業マンがいた場合、「歩合給ゼロ」という会社には恐らく転職しないと思います。
なぜかと言うと、年収が減るのを嫌がるからです。
そう考えた場合、営業部がある会社ではある程度の「歩合制」や「インセンティブ制度」を設けておくべきだと思います。
歩合給はモチベーションアップに繋がる
先ほども少し触れましたが、歩合給を支払うことは営業パーソンのモチベーションアップに繋がっていきます。
ものすごくシンプルに考えてしまうと、人のモチベーションをアップさせる動機付けは「金銭の支給」がわかりやすいと思います。
ほとんどのサラリーマンはお金を稼ぐために仕事をしているので、お金がもらえることは嬉しいはずです。
なので歩合給を支払うことは、社員のモチベーションアップに繋がるはずです。
しかし何でもかんでもお金で還元してしまうのは決して良くありません。
お金というのはあくまでもツールでしかないので、本質的には仕事に対するやりがいを提供しなければいけません。
この辺りをはき違えている事業責任者や経営者をたまに見かけるので注意が必要です。
お金に依存した組織を作ってしまうと、
- 歩合給がもらえればモチベーションがアップする
- 歩合給がもらえなければモチベーションがダウンする
というチームになってしまいます。
これは大いなる矛盾をはらんでいます。
先ほども解説しましたが、サラリーマンは毎月固定給をもらっています。
この固定給が本来の労働対価であって、歩合給はあくまでも謝礼でしかないのです。
そう考えた場合、「歩合給がもらえないからモチベーションがダウンする」ということは矛盾していることが理解できます。
つまり、本来は毎月の固定給だけでモチベーションアップしなければおかしいのです。
なので、歩合給を多く払いすぎることは絶対にやめるべきだと思います。
大量の歩合給を支払った場合、薬物のように止められなくなる可能性があるので、そのような中毒症状の組織はいずれ崩壊するはずです。
組織づくりで目指すべき理想の姿は、ビジョンやミッションが共有されたやりがいある職場だと思います。
これはまさに経営者の仕事だと思いますが、歩合給はあくまでも「従業員の頑張りに対する謝礼程度のもの」だと理解しておきましょう。
まとめ
経験の浅い経営者の場合、とにかく成果報酬である歩合給を手厚くしようとします。
しかしこれは非常に危険なやり方なので、絶対にやめるべきだと思います。
そして、コミッション制度とフルコミッション制の違いをきちんと理解して、適切な仕組みづくりをしなければいけません。
給与体系は会社組織ごとに違って当たり前なので、ぜひあなたの会社にあった仕組みを構築してください。