営業は『気合い&根性論』で語られることが多いので、ほとんどのセールスパーソンは自分の営業活動を分析することに馴染みがありません。
日々の営業活動をその場限りの気合い&根性で乗り切っているので、「なぜ受注できたのか?」という理由が自分でも明確にわかっていないのです。
しかしこのような営業活動は再現性がないので、いずれ壁へぶち当たることになります。
そうなってからでは遅いので、今のうちから営業のPDCAサイクルを回しておくべきだと思います。
そこで今回は、営業パーソンがPDCAサイクルを回す方法について解説していきたいと思います。
かなり具体的なやり方をお伝えするので、営業マンだけでなく営業責任者(マネージャー)や経営者の方もぜひご覧ください。
目次
個人営業でも法人営業にも通用する
営業には様々なスタイルがあるので、どのようなケースでPDCAサイクルが活用できるか悩みますよね。
結論から言ってしまうと、PDCAサイクルはすべての営業スタイルに応用できます。
例えば、個人営業は数ある営業スタイルの中でも「きつい」と言われていますが、それでも問題ありません。
そもそも個人営業が「しんどい」と言われる理由は、個人客が気分屋(わがまま)だからです。
個人営業のお客様は『個人』なので、その時の気分で買うか買わないかを決めてしまいます。
これは法人営業には無い特徴だと思います。
法人営業では「会社にとって有利か?不利か?」を顧客が判断して、合理的な意思決定をしてくれるので、そこに感情論が付け入る隙などありません。
このように個人営業と法人営業では全くやり方が変わってきますが、それでもPDCAサイクルのやり方は変わりません。
PDCAサイクルは画一的なフレームワークなので、基本的なアプローチ方法が変わることはないのです。
なので、全てのセールスパーソンが実施すべきフレームワークだと思います。
PDCAサイクルはトップセールスを目指すために必要不可欠な営業ノウハウなので、ぜひ最後までご覧ください。
営業がPDCAサイクルを回すやり方
ここから具体的なPDCAサイクルの回し方について触れていきたいと思います。
行き当たりばったりの営業をしていても、決して結果が出ることはありません。
- こんなにたくさん飛び込み営業してるのに、なんで結果が出ないんだ…
- 誰よりもテレコールしているのに、アポイントが取れない…
- 商談しても「検討します」ばかりで受注できない…
このような悩みを抱えているセールスパーソンは、絶対にPDCAサイクルを回すべきだと思います。
そこそもPDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、それを継続的に回転させることで業務改善が図れるフレームワークのことです。
つまり『売れるプロセス』が組み立てられるのです。
この内容を全て読み終えた時、きっと『成功するPDCAサイクルの回し方』が理解できるはずなので、一つずつ丁寧に読み込んでみてください。
Plan(計画)では何をする?
この段階でやるべきことは、計画と目標設定です。
Plan(計画)はPDCAサイクルのスタート地点と言えるので、この出来次第で全体のクオリティも変わってくるので要注意です。
どんな見込顧客にアプローチをして、どういうセールス手法を採用するのか決めておくことで、迷いなく営業活動に専念できます。
目標設定のポイントは「数字」と「期限」をきちんと設けることです。
- 例)今月中に受注5件
- 例)今週中に受注10件
しかし、あまり無理な目標設定をするのは考えものです。
目標設定するときのポイントは「少し背伸びをすればギリギリ手が届く」くらいにすることです。
ほとんどのケースでは「目標設定が高すぎて全く届かなかった…」とか、逆に目標設定が低すぎて「余裕で達成できた!」ということになりがちです。
この二つを目標設定することが基本ですが、数字については『受注数(契約数)』だけを重視するのではなく、KPIをゴールにするのも良いでしょう。
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で「重要業績評価指標」とも呼ばれています。
- KPIの例)見込顧客の数
- KPIの例)テレコールの数
目標達成するプロセスでの達成度合いを計測したり、監視したりするために置く定量的な指標なので、これを目標にすることも大切だと思います。
なぜかといえば、結局はKPIの積み重ねが受注数になっていくので、決して無視することができない指標だからです。
何せよ目的を見失わないことが大切です。
つまりきちんと自分の現在位置を把握して、ゴール(目標)を見失わないようにするのです。
その上で、設定した目標を周囲(社内外問わず)に宣言しましょう。
これは「コミットメント効果」と呼ばれており、目標達成するためにプロフェッショナルが活用している心理テクニックです。
もちろんお客様にコミットメントしても良いでしょう。
それによって共感が得られればしめたものです。
このような心理術は絶対に押さえておくべき営業ノウハウなので、まだ知らない人は下の記事を読んでみてください。
Do(実行)はどうする?
Doは実行フェーズですが、具体的に言ってしまうと「この人から買いたい」と思われることです。
お客様には感情があるので、「この人から買いたい」と思われることが重要なのです。
これは一般論になりますが、お客様は押し売りを嫌っています。
なので、売り込みをしない前提のアポイントにするべきだと思います。
例えばあなたが保険の営業マンだったとして、経営者のお客様に訪問したい場合、テレアポ営業では以下のようなセールストークを展開しましょう。
「売上アップにつながる話」と聞けば、きっと相手の経営者は興味を持つと思います。
実際に訪問した場合でも、保険の話などは一切せず、終始お客様への情報提供に努めるのです。
そして今度は、下のように切り出すのです。
このように伝えれば、お客様は営業マンのことを『協力者』とみなしてくれるので、グッと距離が近づくはずです。
しかし勘違いして欲しくないのは、単なる情報提供の価値はゼロに近づいているということです。
現代はインターネット社会なので、単なる『情報提供』は無価値なのだと理解しておきましょう。
それでは『価値のある情報提供』とはどんなものでしょうか?
それは内容を精査した情報です。
顧客ニーズを把握して、そのニーズに合った情報だけを提供する、いわゆる『コンシェルジュ』のような役割に徹すれば『単なる情報提供』では無くなるので価値が高まるのです。
このような動きは『リファラル(紹介)営業』と呼ばれていますが、トップセールスの営業ノウハウとしても有名です。
リファラル営業について詳しく知りたい人は下の記事をご覧ください。
リファラル営業はお客様との絆が深まる営業スタイルなので、個人営業の正攻法だと言えます。
そして最後にこの一言を必ず伝えておきましょう。
このように一言伝えておくだけで、保険に関する相談はあなたへするようになります。
つまり「○○を買うならこの人だな」と覚えてもらうことが重要なのです。
Check(評価)はどこを見る?
ここまでPlan(計画)とDo(実行)について解説してきましたが、実はPDCAサイクルの本質はCheck(評価)とAction(改善)にあります。
たとえPlan(計画)が甘かったとしても、Do(実行)が悪かったとしても、その後のCheck(評価)とAction(改善)が機能すれば少しずつ状況は改善されていくからです。
Checkで見るべきポイントは、ズバリ『営業プロセス』です。
まずはPlanで決めた計画と目標が達成できているかをチェックしましょう。
例えばPlanで決めた計画が『新規開拓営業の強化』で、それに対する目標が『テレコール1000件、商談10件、受注3件』という内容だったとします。
その場合、まずは「テレコールは1000件できたのか?」を確認します。
その数が問題なかった場合、次に商談数をチェックしますが、商談目標10件に対して結果が商談6件だったとします。
ということはテレコールのセールストークが悪かったことが判明しますよね。
そして商談6件に対して受注数は3件という着地であれば、商談でのセールストークは良かったことになります。
このようにうまくいった理由と、うまくいかなかった理由を検討するのです。
この時、「商談でのセールストークが良かった」という内容を分析する為に、チェックリストを作成しておきましょう。
例えば、営業活動に関するチェックリストであれば以下のような項目になるはずです。
- 商談時間には間に合ったか?
- 名刺交換の時にお客様の名前と役職を記憶したか?
- アイスブレイクはできたか?
- 提案資料は十分だったか?
- 重要事項は全て説明したか?
- 商談中にお客様の名前を3回以上口にしたか?
- 顧客ニーズをヒアリングできたか?
- 予算金額はどれぐらいか?
- 購入にあたっての懸念点は何か?
- 競合他社と相見積もりをしているか?
- 最適なクロージングはできたか?
- 購入したor購入しなかった理由を聞いたか?
- ネクストアクションを決めたか?
このようなチェックリストであれば、商談内容を分析できるので、どこが改善点なのか一目瞭然になると思います。
Action(改善)のポイントは?
Actionは個別のステップなのですが、フレームワークの中ではCheckと同時にやるべきでしょう。
なぜかといえば、Checkでは失敗&成功の原因調査を行い、Actionで改善案を考えるからです。
そう考えた場合、この二つはセットになっていることに気づくはずです。
Action(改善)で重要なのは『絶対に何かを改善する』ということです。
PDCAサイクルを効果的に回すためには、少しでもいいので最低一箇所はやり方を変えてみるべきでしょう。
失敗した部分を改善するのは当たり前ですが、成功した部分もより良くなるように改善していくのです。
とはいえAction(改善)を失敗すると『営業スランプ』に陥ってしまうケースがあるので注意が必要です。
ほとんどの営業スランプは、余計なAction(改善)をすることで、それが足かせとなって売れなくなってしまうのです。
しかしこれはある工夫をすれば全く怖くなくなります。
それはPDCAサイクルの記録をとることです。
- 2022年6月はPlan(計画)に問題があったので、7月から目標設定を少し下げた。
- 2022年7月はDo(実行)に問題があったので、クロージング前のテストクロージングを実施した。
このように修正箇所と目標&結果を記録していけば、もし営業スランプに陥ったとしても、すぐに元へ戻すことができます。
これが上手な営業PDCAサイクルの回し方だと思います。
PDCAサイクルを回す頻度
PDCAサイクルの回し方が理解できると、次に疑問となるのが回す頻度です。
結論から言ってしまうと、PDCAサイクルはできるだけ短いスパンで回した方が良いと思います。
理想だけを言ってしまうと1日毎(デイリー)に鬼速PDCAサイクルを回すべきでしょう。
しかし、現実的には分析する時間がそんなに取れないので、リアルな話をすると一週間に1回の改善頻度が現実的だと思います。
一番ダメなのは「なかなか結果が出ないな…」と思いながら何も改善しないことです。
ダメなやり方を何回やっても結果は同じです。
そのような営業スタイルで一か月、一年営業しても意味がないのです。
小売店やネット販売の会社は毎日PDCAサイクルを回せますが、リード期間が長い金融や不動産などでもPDCAサイクルを回す頻度は一緒です。
PDCAサイクルをできるだけ多く回していくことが、トップセールスへの近道なのだと理解しておきましょう。
PDCAサイクルを効果的に回すコツ
ここまでPDCAサイクルの回し方について解説してきましたが、最後にPDCAサイクルを効果的に回すコツについて触れたいと思います。
営業活動は孤独なので、基本的には自分一人でPDCAサイクルを回すものだと考えますよね。
しかしそれでは最大効果を追求できません。
もしPDCAサイクルを回すのであれば、出来る限りチームで検証することをオススメしています。
例えばテレコールのアポイント目標を5%に設定して、実際は3%だった場合、どう改善すればいいか悩みますよね。
しかしチームの中にアポイントの獲得率6%という営業マンがいれば、その人のやり方を真似するだけで済みます。
その営業パーソンからセールストークを共有してもらったり、ロールプレイングに付き合ってもらうのです。
もちろんその逆も然りなので、このようなやり方をすると営業部全体の底上げにも繋がっていきます。
これは営業責任者なら絶対に実践すべきやり方でしょう。
PDCAサイクルの関連本もおすすめ
PDCAサイクルを実践する場合、色々な書籍を読んでみるべきだと思います。
良くも悪くもPDCAサイクルは『仕組み作り』になるので、出来る限り理想的なやり方を求めなければいけません。
そんな時には、いくつかのノウハウを本からインプットしてみるべきだと思います。
「鬼速PDCA」は野村證券出身で株式会社ZUUの代表取締役社長 兼 CEOである冨田和成さんが書いた本です。
PDCA本のバイブル的存在なので一度読んでみるべきでしょう。
そして「小さな会社の売上を倍増させる最速PDCA日報」は、日報を活用したPDCAサイクルの回し方について教えてくれます。
少し違った視点が欲しい人は、一度読んでみるべきでしょう。
PDCAサイクルに終わりはない
PDCAサイクルを回していれば、いづれ完璧な営業スタイルが手に入るはずです。
しかしPDCAサイクルを回すのを止めてはいけません。
「もう改善するところがない」というレベルに至ったとしても、絶対に改善できる部分はまだ残されているはずです。
- 商談では一番最初に料金を伝えてみる
- 商談時間を30分にしてみる
- テレアポの時に背筋を伸ばしてみる
いくらでも改善できるポイントは出てくるはずです。
小さな改善を積み重ねて、最も効果的な営業活動を目指しましょう。