営業職の人は様々な営業テクニックを知っておくべきだと思います。
その中でも代表的なのが「SPIN営業術」です。
この営業テクニックは現場実践型のスキルなので、とても使い勝手が良いですよ。
そこで今回は、SPIN営業テクニックについて解説したいと思います。
目次
SPIN営業術の意味とは?
ビジネスパーソンなら、絶対に活用したい営業テクニックがSPIN営業術です。
SPIN営業術はイギリスのシェフィールド大学で行動心理学を研究して起業した「ニール・ラッカム氏」が編み出したフレームワークのことをいいます。
ニール・ラッカム氏は12年間かけて、40,000件近くの案件を行動心理学などの観点から分析・研究し続け、ついに独自の営業テクニックを編み出しました。
そのテクニックはコンサルティングサービスやセミナーを通じて提供されており、徐々に認知が増えています。
その結果、数々の大企業でも実践されるほどの営業テクニックになっているのです。
気になるSPIN営業術ですが、以下の4つから構成されています。
- S=Situation Question(状況質問)
- P=Problem Question(問題質問)
- I=Implication Question(示唆質問)
- N=Need-payoff Question(解決質問)
これら4つの質問を順番に行うことで、顧客が抱える問題の顕在化と解決を図るのです。
具体的な手順は下図のようになります。
この図を見ただけでも、営業マンが潜在ニーズを掘り起こして、顕在ニーズにソリューションを当てるという、合理的なセールススタイルがイメージできるはずです。
つまりSPIN営業術とは、営業職が知っておくべきセールステクニックであり、商談の中でも応用できる実践的な営業スキルなのです。
SPIN営業術の特徴
SPIN営業術の特徴は、あくまでも“顧客側に立つ”ということです。
通常の押し売り的なセールスとは違って、営業マンが売り込みたい商品・サービスを積極的に提案していくのではありません。
お客様の仕事内容に始まり、その業務における問題点や不満を顕在化し、そうした問題点は「これを導入すれば解決できます!」とそれとなく匂わせて、最後は顧客に判断させます。
セールスする側が主体なのではなく、すべてお客様が能動的に判断して商談をクローズさせる…
これこそがSPIN営業術の極意なのです。
SPIN営業の実施方法
SPIN営業は他の営業方法と違って、「とにかく顧客に判断させる」ことが求められます。
そのようなスキルを向上させる為には、ある程度のトレーニングが必要だと思います。
トレーニングを行う場合には、きちんとそれぞれのプロセスごとにポイントを抑えて、スキルも磨いていくのが一般的です。
最初の「S=Situation Question(状況質問)」のトレーニングでは、顧客が置かれている状況をヒアリングするスキルを磨いていきます。
具体的には顧客の売上や達成率を確認し、
- その売上は四半期決算ごとに上下するのか?
- その売上は経営計画に反していないか?
などを質問していきます。
直接的な質問をするのではなく、客観的なデータを用いて顧客と状況を共有するということがこのプロセスでのポイントになります。
「P=Problem Question(問題質問)」や「I=Implication Question(示唆質問)」では、自分が抱える問題点に気付いてもらい、「何らかの解決が必要である」と自己認識させる質問をしていきます。
この時に重要となるのは、“積極的に主語を変えてみる“ということです。
企業や担当者からだけではなく、
- 管理職や一般社員にとって深刻な問題はないのか?
- この問題で一番不利益を被るのはどの部署なのか?
など、主語を変えることによって問題点を認識させやすくします。
「N=Need-payoff Question(解決質問)」のフェーズでは、クライアントが自分で問題解決できるように支援するような質問を行います。
これらを効率的にトレーニングすることで、SPIN営業のテクニックを鍛えることができます。
本を読んで勉強する
SPIN営業術のトレーニングと同時に、座学も行っていきましょう。
SPIN営業に関連する書籍はいくつか発売されているので、それらを読みながらトレーニングすれば、その効果が2倍、3倍…にもなるはずです。
ここではSPIN営業を勉強するための”おすすめ本”をご紹介しておきますので、ぜひ手に取ってみてください。
大型商談を成約に導く「SPIN」営業術
SPIN式営業術の生みの親である「ニール・ラッカム 氏」の著書です。
SPIN営業術の生みの親が書いた本なので、SPIN営業が知りたい人は絶対に読むべき書籍だと思います。
20年以上「営業のバイブル」として読み継がれる、大型商談の必勝テクニックが凝縮された本なので、SPIN営業を学ぶためには必須と言えます。
マイクロソフト、IBM、GE、AT&T、ゼロックスなど、世界のリーディングカンパニーがこぞってこれを採用したSPIN式営業術の基礎を学んでください。
営業の「聴く技術」
SPIN式営業術には「聞く・聴く・質く」という要素が必要です。
質問を通して顧客の経営課題を明らかにしていくとともに、相手もその質問を通じて、自分自身のニーズを顕在化させ確信させるのがSPIN式営業術です。
このような「ヒアリング」の重要性を教えてくれる一冊です。
潜在ニーズをヒアリングするコツ
話し手ではなく、聞き手にウェイトが置かれている”SPIN営業術”は、潜在ニーズや顧客ニーズを引き出せるという特徴があります。
潜在ニーズとは、顧客が「自分のニーズを自覚できていない…」という状態のことを指します。
お客様自身も自覚できていないので、営業マンとしては「まず顧客に気付いてもらう」ということが重要になります。
こうした場合では、顧客ニーズを聞き出すコミュニケーション能力が大事になりますが、誘導尋問のようにならないようにしましょう。
あくまでも「顧客ニーズをヒアリングする」というやり方で、SPIN営業術を実践していくことが大切です。
潜在ニーズに対してSPIN営業術を行う際のコツとは、「顧客自身がどういったニーズを求めているのか理解するまで、商品やサービスを提案しない」ことです。
あくまでSPIN営業術は”聞く営業”なので、焦りは禁物です。
そして導入ありきの”顕在ニーズ”ではない、”潜在ニーズ”が対象になるので、早々に商材説明をし始めてしまうと相手は「押し売りされている!」と感じます。
そのため、顧客自身が能動的に理解するまで、とにかく聞き役に徹して、相手が理解してからセールスを開始するというのがSPIN営業術のセオリーとなります。
このような手順で提案すれば、潜在的ニーズだったお客様も導入を前向きに検討してくれる可能性が出てきます。
SPIN営業の活用例
SPIN営業術は様々な局面で活用することができます。
得意先の商談から、ヒアリングが必要な潜在顧客まで、その活用できるシチュエーションは幅広くあります。
SPIN営業術を活用できる具体例として挙げられているのは、webツール&サービスの営業です。
例えば営業活動を管理するSaaSサービスの場合、まずお客様の現状を把握しなければいけないので、状況質問で社員数などをヒアリングしていきます。
そこから営業成績の管理方法などに話題を広げていき、問題点を顕在化させるというのが基本的な営業フローになります。
もし日報を使っている事業所の場合は、「日報だとタイムラグが発生しませんか?」などの質問をすることが効果的だと思います。
示唆質問では、営業成績を日報で共有するデメリットなどを示唆します。
- 営業日報は形骸化しませんか?
- 業務後に日報を書く時間がもったいなくないですか?
- 管理ツールを導入して一括管理した方がメリットありませんか?
このような質問で顧客ニーズに訴求していきましょう。
そして解決質問では、それまでの質問の結論を認めさせて、ツールの導入を自己決定させます。
この時に効果的なのは、状況質問や問題質問で明らかになった問題点が「きちんとクリアできた!」と顧客に判断させることです。
SPIN営業はおすすめの営業手法
ここまで解説してきた通り、SPIN営業はプッシュ型の売り込みセールスではなく、ヒアリングを重視する営業手法だと思います。
小型商談や大型案件などは関係がなく、顧客それぞれの課題を理解して解決していくのです。
決して御用聞き営業みたいな”聞くだけの営業スタイル”ではなく、顧客と課題を共有していくフレームワークなので、その課題を一緒に解決できれば信頼関係が強固になるはずです。
そのような関係性が構築できれば、継続的な取引にも繋がっていくでしょう。
また単なる押し売りではなく、“顧客のためになる製品サービスを提案できる“というのは営業パーソンのモチベーションアップにもなるはずです。
このような営業姿勢はとても重要なので、この方法を採用することによって離職率の低下や営業成績アップの両方が達成できる可能性もあります。
とにかく相手に効果的な質問をぶつけて、話を掘り下げていくということが求められるSPIN営業術ですが、あくまでも顧客がメイン(主体)であると営業パーソンは認識しておく必要があります。
お客様が自分から話を掘り下げていけるように、限定的な質問をしたり、話をリードするようなことはせず、あくまでもサポート役に徹して話しやすい環境を作り上げましょう。
「顧客に売り込みたい!」という身勝手な営業活動をせず、話を聞いて自発的に選択してもらう…
まさに理想的な営業活動ですよね。
SPIN営業術ではそうした基本姿勢が一番重要なのです。