証券会社の営業ノルマは?

まず最初に言っておきますが、証券会社の営業ノルマはとてつもなく重いです。

具体的に言ってしまうと、以下のようなノルマがありました。

営業会社のノルマ
  • 新規開拓件数
  • 預かり資産総額
  • 株式売買手数料
  • 債券売買手数料
  • 新規公開株式の販売(IPO)
  • 公募株式の販売(PO)
  • 社債の販売
  • 個人向け国債の販売
  • 仕組み債の販売
  • 外国債券の販売
  • ファンドラップの販売
  • SMAの販売
  • 投資信託の販売
  • 投資信託の預かり資産額 etc.

一般的な中小ベンチャー企業では1つ2つの目標を追えばOKですが、大手証券会社では10以上のノルマを同時平行で追っていきます。

ここに記載したノルマはほんの一部ですが、これらを全て同時並行でこなしていくのです。

もちろん商品ごとに特性が違いますし、販売手数料やリスクも違ってきます。

それらをすべて暗記(頭に叩き込む)して、お客様へ提案していくのです。

もちろんリスク説明や手数料などを間違えると金商法(金融商品取引法)違反になるので、懲罰対象となります。

よって、証券営業を目指すなら、とにかく数字に強くなければいけません。

例えば、ある投資信託Aの買付手数料は1.3%、信託報酬は1.56%ですが、投資信託Bの買付手数料は3.15%で、信託報酬は2.13%みたいな感じです。

そして債券は年利5.6%などのクーポン(金利)が付きますが、外国債券の場合には為替が関係するのと、スプレッド(為替手数料)も発生するので、かなり計算がややこしくなります。

  • 1500万円で社債(金利6%)を買った場合、1年間で受け取れる利子はいくらになる?
  • 株価66万円の銘柄を300株購入したらいくらになる?

このような質問をお客様は普通にしてくるので、それをその場で即答しなければいけません。

もちろん電卓を叩いてもOKですが、それでは馬鹿(計算できない証券マン)をさらす羽目になるので、経営者やドクターからは相手にされません。

大切なお金を預ける証券マンなので、優秀な人と取引したいのは当たり前だと思います。

電話営業(テレアポなど)の場合にも全て会話が録音されていて、逐一コンプライアンスチェックされています。

支店長などの手が空いた時に、その通話記録を聞かれて、適時指導が入るので、どんな時にも気が抜けません。

よってストレスで胃に穴が開いたり、うつ病になる人が続出するのです。

これはあくまでも”さの編集長”が現役だった頃の話ですが、40歳オーバーのライン課長がうつ病になって休職したり、30歳半ばの中堅社員がストレスで脳卒中になって倒れたり、新卒社員が飛んでしまうのは毎年の恒例行事でした。

そして、一番きついノルマが「募集物」と呼ばれる商品です。

証券発行は”発行体”からすると資金調達の手段なので、新規発行する場合には「○○までに売り切らなければいけない」という期限が設けられています。

例えば、新発社債や新規公開株、新規設定の投資信託などが代表的だと思います。

これらはすべて 「募集物」と呼ばれていて、所定の期日までに売り切らなければいけないのです。

「募集物」は各営業マンごとにノルマが按分されていて、営業マンAは3,000万円、 営業マンBは5,000万円という具合に個人ノルマが設定されています。

証券会社ではこの個人ノルマを売り切らないと、とんでもない目に合います。

全体ミーティングでは「ダメ営業マン」とさらし者にされ、上司からは30分置きに罵倒されることになるのです。

しかし、その募集物だけに注力していると、「○○の進捗はどうなっているんだ!」とか「▲▲の数字ができてないぞ!」と怒鳴られるのです。

証券会社には注文時間という制約がある為、本当に5分単位(どんなに緩くても10分単位)でスケジュールを調整しなければいけません。

なので、ゆっくり昼食することなどできませんし、お客様とダラダラ会話することもできません。

このような状況に耐えうるだけの強靭なメンタルと、常に走り続ける(=リアルに走ること)フィジカルを持っていなければ、証券営業は務まらないのです。

このような状況に耐えきれなくて、入社したほとんどの営業マンが退職していきます。

ちなみに、さの編集長の営業同期は2,000人もいましたが、私が退職する3年目には1,500人ほどが既に辞めていました。

とんでもない離職率だと思いますが、これが普通だったのです。

証券営業は地獄の日々…

さの編集長が証券会社に入社したタイミングは2007年なので、金融大不況が来る2008年のリーマンショックとほぼ同時期でした。

なので、証券会社に入社する時期としては最悪期だったと言えます。

どんな金融商品を販売しても全て下がっていくので、顧客からは「詐欺師!」とか「騙された!」なんて言われることが日常茶飯時で、「もう電話してくるな!」とか「顔も見たくない!」なんてことはしょっちゅうでした。

お客様の家のインターホンを押した時、木刀を持って出てこられた時には殺されるかと思いましたwww

それもこれも相場が悪かったせいなのですが、募集物に限ってはそう割り切ることができません。

先ほどもお伝えした通り募集物には期日があるので、とにかく売り切らなければいけないのです。

なので、たとえ自分が「これは微妙だな…」とか「こんなの儲かるわけない」と思っていても、自分なりにセールストークを組み立てお客様に売り込まなければいけません。

正直に言ってしまうと、自分では絶対買わないような商品ばかりだったと記憶していますが、本社の企画部が一生懸命に考えた商品なので、そこは割り切って頑張る必要があると思います。

実際、証券会社の人間は募集物に手を出すことはありません。

そもそも投資信託すら買わないのです。

職業上、個別株の売買が自由にできないので、仕方なく投資信託を買っているケースはありますが、もし株式の売買制限がなければ、証券会社の社員は誰も投資信託なんて買わないでしょう。

それほどデメリットが大きいと認識している商品ばかりを販売するので、とんでもないストレスを背負うことになります。

新興国通貨建ての外国債券(トルコのリラ債)を販売してた時ですが、表向きは「買いましょう!」と提案をしながら、心の中では「頼むから買わないでくれ!」と祈ってることもありました。

結局お客様は証券マンを信頼しているので買ってしまうのですが、帰りの車中では大きなため息をついたことを覚えています。

あの時、リラ債を1000万円分購入していただいたお客様がいましたが、今は為替が1/10(2023年1月現在)になっているので、その資産価値は100万円以下に値下がっているはずです。

「投資は自己責任」と言えば簡単ですが、個人的にそれは無責任だと思っています。

やはり営業職なので、本当に自信のある商品だけを提案するべきなのですが、募集物があるのでネガティブだったとしても売らなければいけないのです。

当時の支店長よく「買うのを決めるのはお客様。だから損しようが儲かろうがそんなの知ったこっちゃない。とにかくお前らは提案しろ!」と叫んでいましたが、内心では「それはちょっと…」と感じていました。

ある支店のトップセールスと立ち話した時、その人が「毎日高いビルを探すようになるよ」と言っていました。

いざとなったらそのビルから飛び降りて楽になれるからです。

相場が悪いとこのような日々が続くので、生き地獄のような毎日を経験することになるでしょう。

自分の存在価値がわからず、苦悩することもあると思います。

しかし「お客様のため」と自分自身を奮い立たせて、日々仕事に邁進しなければいけないのです。

証券会社の営業は年収が高い

証券会社の営業はとても辛い仕事ですが、原価がないビジネスなので、とても儲かる商売だと言われています。

特に投資信託などは、顧客が儲かろうが損しようが関係なく”信託報酬”が入ってくるので、それが給料にも反映してきます。

証券会社の営業マンは年収が高いと言われていますが、実際そうだと思います。

特に大手企業の場合には福利厚生が充実しているので、飲食代以外の生活費がほとんどかかりません。

例えば”さの編集長”の場合には、家賃、水道光熱費、交通費、インターネットなどの費用を全て会社が負担してくれたので、毎月の給料がまるっと可処分所得になっていました。

さすが大手企業ですよね。

さらに、100年に1度の金融大不況と言われる状態でも、半年に1回のボーナスは100万円以上出ていました。

正確に言うと200万円弱でしたが、世間の平均ボーナスが50万円とかゼロなんて言われていた時期なので、大手証券会社の凄さはそのような時に実感できると思います。

※日系の証券会社でも、営業成績さえ良ければ十分稼げます。

もちろんボーナスも全て可処分所得に入っていくので、年間の可処分所得は500万円以上になると思います。

つまり月当たりに直すと「500万円÷12ヶ月=約41万円」という計算になります。

毎月40万円も自由に使えるので、毎日1万円使ってもまだ余りますよね。

入社3年目でこれだけ稼げるのは金融業界ならではと言えるでしょう。

しかもこれは金融大不況といわれたリーマンショックの時代なので、それ以外の時には倍程度になってもおかしくありません。

なので営業職として稼ぎたい場合、証券営業を志望するのはとても合理的な判断だと思います。

証券会社って実際どうなの?

ここまで証券会社に勤務した実体験をご紹介してきましたが、そのような経験をして「実際どうだったの?」というのは気になるポイントだと思います。

結論から言ってしまうと、新卒で証券会社へ入社して良かったと思っています。

その理由は以下の通りです。

  • ビジネスマナーが身に付いた
  • 営業ノルマを達成する意識がついた
  • 「体育会系」の意味が理解できた
  • ストレス耐性ができた
  • クソみたいな上司がいることを知った
  • ファイナンス知識がついた

大手企業は「とにかく研修が充実している」ので、ビジネスマナーの基礎が身に付きます。

これは今でも大きかったと感じます。

なので「新卒では大手企業かベンチャー企業か、どちらに就職するべきか?」と質問された場合、間違いなく「大手企業へ行け」と即答します。

さの編集長は大和証券を退職した後にITベンチャーへ転職しましたが、研修制度の差は歴然としていました。

むしろ、ベンチャー企業へ新卒入社した社員(後輩)を「可哀想」だと感じていました。

なので新卒であれば絶対に大手企業を目指すべきだと思っています。

そして、大手企業には絵に描いたような”クソ上司”がいるので、それを経験するのも良いと思います。

もはや半沢直樹の世界観ですが、自分の保身ばかりを考えていたり、パフォーマンスで怒ったり、支店長にゴマすりばかりするような上司が本当にいるのです。

そのような経験は反面教師となるので、今でも大変役立っています。

そして一番良かったなと感じるのが「ファイナンス知識」が身に付いたことです。

企業経営をする上でファイナンスの知識は必要不可欠だと言えます。

しかし、多くの経営者はファイナンス知識がないため、CFOと呼ばれる人を探さなければいけません。

でも証券会社出身であれば、CEOとCFOを兼務できるので、とても経営効率が良くなるのです。

エクイティファイナンスを実施するスタートアップ企業を経営したいのであれば、絶対にファイナンス知識が求められるので、証券会社や銀行など金融機関に勤めるのが良いでしょう。

良くも悪くも色々な経験をした証券会社ですが、まとめてしまうと「とても有意義な時間だった」と思っています。

なので「証券会社に入社したい!」と考えている場合には、個人的にオススメしたいと考えています。

ただし注意して欲しいのは、きちんと『自分なりのキャリアアップ』を考えておくことです。

最初は営業職だったとしても、その後に企画部や債券部、エクイティ部、人事部など、大手企業にはたくさんの部署があります。

海外支店もあるので、海外勤務を希望するのも良いでしょう。

入社して2年目ぐらいには「将来はどの部署に行きたい?」と上司から聞かれるようになります。

その時に初めて考えるのではなく、一番最初の段階から「どのようなキャリアを描きたいのか?」は考えておくべきだと思います。

証券会社に入社する人は「東京大学卒業」「早慶上智卒業」「関関同立卒業」などが当たり前(MARCHが最低ライン)なので、とにかく地頭のいい人が多いです。

そのようなライバルを押しのけながら出世しなければいけないので、ひたすら勉強する毎日だと思ってください。

ファイナンシャルプランナー(FP)試験は当たり前ですが、日商簿記や証券アナリスト、中小企業診断士まで幅広い知識が求められます。

節税対策についても知らなければ、富裕層からは相手にされません。

野村證券含めて、なかなかライバルは手強いので、並大抵の努力では勝てないと思っておきましょう。




関連キーワード
営業系の副業情報サイト「side bizz」

営業系の副業を探すならside bizz(サイドビズ)を要チェック!

サイドビズには”紹介するだけで稼げる”副業情報が多数掲載中!

サイト利用料は全て無料(0円)!

おすすめの記事