
ニッコロ・マキャベリ(マキャヴェリ)は、1469年イタリアのフィレンツ生まれの政治家であり作家です。
マキャベリが書いた「君主論」は歴史の教科書に出てくるレベルなので、誰でも知っていますよね。

この本から『マキャベリズム』という考え方が出るほど世の中に影響を与えた本だと言えますが、マキャベリズムとは「目的のためには手段を選ばない」という場面で使われたりします。
これだけでも”リーダーシップ論”について書かれている本だと理解できるはずですが、君主論を簡単に説明してしまうと、いわゆる”君主の心得”が書かれている本ということになります。
『領土を増やして国家を維持するための方法』が分かりやすくまとめられているのですが、その内容があまりに的確だったため、数世紀もの間、君子論は”発禁本”とされてしまいました。
「どうやって民衆を動かせばいいのか?」という統治者独特のノウハウや、君主の”真の姿”を明らかにしてしまった為、当時の権力者にとって「不都合な本」だと判断されたようです。
この事実からわかるのは、マキャベリの君主論は『帝王学が学べる名著』だということです。
なので、ビジネスリーダーを目指す人であれば必読書と言えるでしょう。
その他にも「政略論」や「戦術論」を書いたり、メディチ家から依頼されて「フィレンツェ史」を作成したり、喜劇作品の「マンドラーゴラ」を書くなど、マキャベリはたくさんの書物を残しています。
そこで今回は、イタリアを代表する偉人『マキャベリ』の名言集をご紹介したいと思います。
ビジネスでも使える知識ばかりなので、ぜひ最後までご覧ください!
マキャベリの名言集まとめ
ともかく現在に生きよ。
過去の豊かさから学ぶことを忘れずに。
歴史や古典からは、多くのことが学べますが、それはあくまでも”昔の話”なので、そのまま鵜呑みにせずに、得た知識を現代風にアレンジしましょう!
戦いによって得られる領土には、君子の支配下にあることに慣れて暮らしている領土と、自由な暮らしに慣れている領土とがある。
現場の状況に応じて、マネジメントは変えなければいけません。
これは企業買収や会社合併など、ビジネスでも通用する話だと思います。
人民がそれまで自由な暮らしを知らない場合であれば、まず、そこを支配していた君主の血統を根絶やしにする。
これは他国を併合するコツについて語った名言です。
ビジネスにおいても、買収した企業のカルチャー(社風など)をガラリと変えたいのであれば、まずはトップを入れ替える必要があるということです。
起き得ることを前もって予測することで、対策は容易に立てられる。
何か起きてから対策を考えるのでは遅いので、あらかじめリスクマネジメントをしておきましょう!
人は小さな侮辱については復讐することを考えるが、侮辱が大きくなればそれができない。
これは人身掌握術について語った名言です。
マキャベリは「侮辱するのであれば、徹底的にやれ」と語っています。
君主たらんとする者は、唯一、軍事のみに関心を払うべきである。
戦争ばかり起こっていた”中世”らしい言葉ですよね。
現代の企業経営に置き換えると、軍事という言葉は”事業戦略”になると思います。
たとえ平和な時期が続いたとしても、戦いのための訓練は継続することが必要である。
ぬるま湯に使っている状態では、環境の変化に対応できません。
常に緊張感を持って”準備”することが大切なのだと思います。
自分の権力を保持しようとするのであれば、よくない人間になることも覚えねばならない。
人が良すぎると簡単に騙されてしまうので、悪人のやり方を知る必要があるということです。
君主が鷹揚(おうよう)であるという徳によって世間の評判を得ようとすると、その評判を保とうとすることによって金銭に対して貪欲にならざるを得ない。
これはつまり、地位を維持するためにはお金がかかるということです。
なので君主は「ケチだ」とか「守銭奴だ」という、周りの評判を気にする必要はないと語っています。
困難なのは、新たな国の獲得よりも、獲得した国を維持していくために必要な新しい秩序や政治の形成にある。
新しく獲得した国はルールが違うので、自分たちのルールを持ち込もうとしますよね。
すると、今までそこで暮らしてきた人たちが反発するので、いわゆる”敵”を作ることになります。
これと似たことを、日本経済の父と呼ばれる『渋沢栄一』も言っていました。
渋沢栄一の名言集は下の記事をご覧ください。
その人物は生まれながらの君主か、あるいはそれになろうとしているものなのか。
前者の場合には、生真面目さというのは危険である。
後者の方では真面目であるというのは必要な長所になる。
この言葉を企業経営に置き換えると、2代目社長(=生まれながらの君主)なのか、プロパーの社長(=それになろうとしているもの)なのか、ということだと思います。
それぞれバックボーンが違うので、求められる要素も変わってくるようですね。
自分の立場に置き換えて考えてみましょう!
君主たる者、自分の軍隊や腹心達を引きつけておこうとする時に、残酷であるといったような不名誉を気にかけてはならない。
優しすぎる人はトラブルを収束できないので、多くの人を傷つけてしまいます。
しかし残酷な人は、ある一部の人だけを切り捨てて、他の人を守るという意思決定ができます。
このような”残酷さ”も君主には必要だとマキャベリは語っています。
人は恐れている者よりも、愛情を覚えている者の方を容赦なく傷つけるものである。
情が入ってしまうと、いざという時の反動が大きくなります。
なので、単純に恐れられていた方が、反動は小さくなるそうです。
そもそも「恐れられる=嫌われる」ではないので、人民から嫌われない限り、君主にとっては問題がないのです。
策略の罠を知り尽くすキツネのようであれ。
オオカミを威嚇するライオンでもあれ。
キツネは賢い動物の象徴ですよね。
そのような賢さを併せ持つ、ライオンのように強い君主が理想像だとマキャベリは語っています。
人々は総体的に見かけだけで判断する傾向にある。
つまり、君主はひたすら軍事力をつけて国を維持し続ければ良い。
どんなに陰で努力をしていたとしても、それが表面に現れなければ、決して大衆からの評価は得られないそうです。
君主の側近の大臣を見れば、君主の能力を推し量ることができる。
これはつまり、「側近がどれだけ君主に忠誠を誓っているか?」という部分で、その君主の力量がわかるということです。
各君主の主要な仕事は、憎まれたり、軽蔑されたりするのを心配することである。
マキャベリは再三「君主が恐れられることは問題ない」と語っています。
つまり『嫌われなければ問題ない』ということです。
中立という立場をとってはならない。
中立という立場は『曖昧さ』を意味しています。
なので、相手から勘ぐられることになり、その立場を取れば取るほど憎まれ軽蔑されることになるのです。
過去に起きたあらゆることは、再び起こると信じるべきだ。
これは『歴史は繰り返す』ということですよね。
だからこそ歴史を学ぶ価値があるのだと思います。
「君主論」という小さな論考を書き上げたが、その中で君主国とは何か、どういう種類があるのか、どのようにして収益を得るのか、それをどうのようにして維持するのか、なぜ敗北するのか、といったテーマについて、最大に集中して思考をまとめた。
これはマキャベリ自身が『君主論』について語った名言です。
君主論を読めば、これらの内容が理解できるはずです。

優れた軍隊がいるところには、良い秩序がある。
優れた軍隊というのは、企業で例えれば『優れたルール』と言い換えることができるはずです。
秩序が保てない場合には、ルールを見直す必要があるでしょう。
たとえ勝利を収めそうであろうと、戦場から逃亡する敵を追うのは危険である。
日本にも「窮鼠猫を噛む」ということわざがありますよね。
この考え方は、いつの時代でも、どの国でも同じなのだと思います。
人民はたとえ無知であったとしても、知る能力を持っている。
信頼に足る人物が彼らに真理を語れば、容易に説得されるものなのである。
これはビジネスリーダーが絶対に覚えておくべき名言だと思います。
基本的に人間は”無知”だと言えますが、信頼に足る人物の言うことをすんなり受け入れてしまう習性があります。
つまり社員や部下から信頼されるということは、組織を動かす上で最も重要な要素の一つになるのです。
一人の人物の徳にのみ依存して成立している国家はあまり長く続かない。
たとえカリスマ経営者がいたとしても、その人が引退する時には後継者が引き継ぐことになります。
その後継者にカリスマ性がなければ、その組織を存続することは難しいでしょう。
これは属人的な経営の危うさについて語った名言だと思います。
人民が腐敗している場合には、法がどれだけ完璧にできていようと国を存続させる術はない。
この状態を改善するために、まずは”権力を持つ人物”が法律を守るように仕向ける必要があるそうです。
組織のトップがルールを守れば、その傘下にいる人たちもルールを守り始めます。
つまり、組織運営の基礎はルール(法律)だということです。
どのような国であっても、功績のあったものには褒賞が与えられ、悪事を働いたものには罰が下されるべきである。
マキャベリは「たとえお金がなかったとしても、功績を残した人には何らかの褒賞を出すべきだ」と語っています。
なぜかといえば、それがモチベーションアップに繋がるからです。
一国の制度の内容を新たに変更しようとする時には、外見はそれまでと同様に保つべきである。
人民には「あたかも何の変化もなかったように思わせる」ことが理想的みたいです。
おそらくこれは人民の抵抗を少なくするためでしょう。
人は生まれながらにして虚栄心が強く、他人の成功に対しては妬みを抱きがちである。
一方、自分の成功については貪欲である。
これは人間の性質を述べた名言です。
これを知っていれば、人間のことをある程度コントロールできるでしょう。
ローマが大帝国になるに至ったのは、人々が個人の利益ではなく、公共の利益に貢献したからである。
これは分かりやすい好例ですよね。
個人プレーではなく、チームで勝つことに専念しましょう!
2つの対立する軍隊の間にもし嫌悪の感情がないならば、戦いが行われるよりは、戦わなかったがゆえに未来が大きく開かれるという方が好ましく思える。
これはつまり「戦わないで済む方が良い」ということです。
孫子の兵法にも通じる考え方なので、孫子の名言集もご覧ください。
指揮官は1人で良い。
複数いてはならない。
『船頭多くして船山に登る』ということわざの通りだと思います。
作戦の指揮者は、2人の実力者を同じ位置に据えるよりも、並の力量を持つ1人に集中させた方が効果的だと言われています。
たとえ部下に恵まれていないとしても、有能な軍隊を育てることはできるはずである。
軍隊を育てられないという君主は、「要するに怠慢しているだけ」だとマキャベリは語っています。
工夫すれば良いチームは作れるそうなので、ビジネスリーダーは覚えておきましょう!
歴史上の偉大な人物を見習うことは、万人にとって有益なことである。
彼らの、脆弱な部分ではなく、強い部分を見習うこと。
隠している部分ではなく、際立って見える部分を見習うように。
価値のない部分、不要な部分は見る必要がない。
これは明瞭なので、とても分かりやすい名言ですよね。
歴史上の偉人たちから、良い部分だけを学びましょう!
平和な時期にも管理を要する要塞と都市は、戦時下においてはさらにそれらが必要になる。
なかなか奥行きのある名言ですよね。
『立派なオフィスや大量の従業員は、不況時に大きな負債となる』ということだと思います。
内容、経験、制度が不足しているところでは、その中では経験がより価値を持つ。
内容というのは『製品・サービス』と言い換えることができます。
つまりスタートアップ企業では『経験値のある人材』を採用するのが吉だということです。
なぜかといえば、経験値がある人材は『製品・サービス』を改善したり、『制度』を改善することができるからです。
君子の命令に従って入隊するのではなく、入隊を自ら望む者の意思によって従軍するのである。
やはり人から言われたのと、自ら行動するのでは、成果が変わってきます。
ビジネスリーダーは「どうすれば従業員が能動的に動いてくれるのか?」というのを追求しましょう!
ことさら優秀ではない傭兵隊は雇わない。
傭兵とは、外部から調達する兵士のことです。
これはつまり、現代ビジネスで置き換えると『業務委託』になると思います。
マキャベリは「優秀でない傭兵を雇わないというのは、議論の余地がない明白な事実である」と語っています。
『業務委託はプロフェッショナルとだけ契約する』というセオリーを覚えておきましょう!
必要なことを全てやり終えるまでは、敵に何も知らせないというのが最良の解決法である。
経営資源は長らく「ヒト・モノ・カネ」と言われていましたが、そこに「情報」が追加されました。
情報管理というのはそれほど重要な要素だということです。
戦いにおいては絶妙の機会を捉えて、それを最大に利用することを知らねばならない。
用意周到な準備をしていれば、必ず好機は訪れます。
マキャベリは「これは戦争に向けてのみならず、何についても有効な教えだ」と語っています。
あらゆる人間はよこしまな心を持っている。
マキャベリは『性悪説』の立場を取っていました。
性悪説について知りたい人は、韓非子の名言集をご覧ください。
敵から近すぎる場所に陣営を張ろうとする軍隊長はいない。
これは店舗ビジネスに応用できる名言だと思います。
敵の近くに陣地を取るケースとは、以下の2パターンだけとマキャベリは語っています。
- 敵に先制攻撃を仕掛ける場合
- 自分の身に危険が降りかかってこないことが明らかな場合
食料、供給物、など生きるのに必要なものを準備しなければ、戦いをせずとも戦いに負けることは明らかである。
食料や供給物を企業経営に置き直した場合、「お金(キャッシュ)」に当たると思います。
だからこそ資金調達の選択肢は最大化しておくべきなのです。
予測し得ない事態が生じた場合には、即座により容易な方法を考えて、早急に埋め合わせすることである。
この名言が伝えているのは、とにかくスピード勝負ということですね。
人間、武器、現金、パン。
これらのいずれもが戦争の鍵となる。
この中で最も重要なのは「人間と武器である」とマキャベリは語っています。
なぜかといえば、現金とパンは替えが効きますが、人間と武器は替えが効かないからです。
自分たちの経営資源の中で、「何が重要な要素なのか?」を理解しておくことは大切な事だと思います。
兵士たちを洗練された暮らしや贅沢な衣服に慣れさせないように。
人間は弱い生き物なので、大きな家に住むと、狭い家には住めなくなります。
それと同じく、高価な食品ばかりを食べていると、安い食品が食べれなくなります。
会社経営も同じで、一度でも福利厚生を充実させてしてしまうと、もうそれを廃止することができません。
また同じく、一度給料上げてしまうと、もう下げることができなくなります。
なぜかといえば、このようなランクダウンは従業員のモチベーションを下げるだけでなく、離職率も高めてしまうからです。
この辺りのバランス感覚が経営者には必要だと思います。
まとめ
ここまでマキャベリの名言集をご紹介してきました。
マキャベリの残した『君主論』は帝王学が学べる名著と言われていますが、同じく帝王学が学べる名著として名高いのが、唐の太宗が残した『貞観政要(じょうがんせいよう)』です。
貞観政要は中国古典なので少し読みづらいですが、名言集であればその内容がたった数分で理解できてしまいます。
貞観政要の名言集は下の記事をご覧ください。