仕事をしていると、何らかのトラブルが起こると思いますが、もしトラブルが原因でお客様が怒ってしまった場合は謝罪しなければいけません。
しかし、どうすれば顧客の怒りは収まるのでしょうか?
これは非常に難しいことだと思います。
そこで今回は、汎用性のある正しい謝罪の仕方について解説していきたいと思います。
相手の心を動かすような謝罪方法は、ビジネスパーソンが身につけるべき知識なので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
顧客が怒るメカニズムを理解しよう!
謝罪云々の話をする前に、まず「お客様はなぜ怒るのか?」というメカニズムを理解しておく必要があります。
何もしてないのにいきなり怒り出すのは変な人なので、きっと何らかのきっかけがあって「怒り」の感情が出てきているのだと思います。
まず押さえておくべきことは、怒りに関する感情の種類についてです。
第1次感情:悲しい、寂しい、悔しいなどの感情
第2次感情:怒りの感情
何かトラブルがあった場合、お客様はまず「期待を裏切られた!」とか「何でそんな事が起こるんだ…」というような残念な気持ちになるはずです。
そのような第1次感情が、ある一定地点まで到達した場合、第2次感情としての「怒り」に変化するのです。
この第2次感情は、相手との距離が近ければ近いほど出やすいと言われています。
例えば、親族や恋人などには、他人よりも怒りの感情が湧きやすいのです。
なぜかと言うと、元々の期待値が高いからです。
自分の中で期待していることを下回ったり、期待はずれの行動や言動があった場合、それが一瞬にして第2次感情である「怒り」に変わってしまいます。
しかし、全く見ず知らずの他人に対しては、そもそも期待感が低いので、第2次感情が出てくることも少なくなるのです。
このような怒りの感情をコントロールする術を「アンガーマネジメント」と言いますが、もっと詳しく知りたい場合は下の本をご覧ください。
怒りはコミュニケーション手段
ここまで解説してきたようなロジックで、怒りの感情は湧き上がってきます。
その一方で、怒りはコミュニケーション手段としても使われています。
「自分は今怒っている!」ということを相手に伝えることができる為、口下手な人ほど怒りやすい傾向があるのです。
本来は言葉で伝えれば良いものを、口下手な人はうまく伝えることができないので、「怒り」という感情に身を任せてしまうのです。
そう考えた場合、「怒り」に対しての認識が少し変わってくると思います。
お客様が怒るということは「あなたとコミュニケーションが取りたい」という意思表示なので、それを前提としたコミュニケーションを自分も実施すれば良いのです。
怒られる前のアフターフォローが重要
仕事で何かトラブルが起こることは仕方ありませんが、そもそもそのトラブルの数を少なくした方が良いと思います。
そのために必要なことが、お客様に対するアフターフォローです。
製品サービスを購入していただいた多くのお客様は問題ありませんが、ある一定の確率でトラブルに発展する顧客もいます。
- 製品サービスが使えなくなった
- 想像していた製品サービスと違った
- 経済的、時間的な損失を被った
このようなトラブルを事前回避する為には、お客様とできる限り密なコミュニケーションを取る必要があります。
そのコミュニケーションが密であるほどトラブルは起きにくくなるからです。
しかし、一般消費者を対象とするコンシューマービジネス(BtoC)の場合、きめ細やかなアフターフォローは現実的に難しいと思います。
ただ法人向け商材(BtoB)であれば話は別です。
法人向け商材は顧客単価が高く、お客様の数もそこまで多くないため、face to faceの丁寧なフォローアップ営業が実現できるはずです。
例えば、カスタマーサクセスチームを会社内に設置して、定期的に顧客フォローを実施していけば、クレームに発展する可能性が著しく低下すると思います。
クレーム発生時の対処方法を解説!
ここからは、トラブルが発生したときの対処法を具体的に解説していきたいと思います。
商品サービスを購入していただいたお客様に何らかのトラブルが発生して、それがクレームに発展したと想定します。
その場合はお客様に謝罪することになりますが、謝罪する場合はとにかく初動が重要になります。
お客様からのクレームは基本的に担当者である営業マンにくると思いますが、そこでの対応を誤ったり、トラブルが起きたことすら知らなかった場合、火に油を注ぐことにもなりかねません。
この時の対応次第では「自分達は見下されている」という風にお客様が勘違いするケースもあるので、現場の営業マンはきちんと対応方法を理解しておきましょう。
まずお客様がクレームを言ってきた場合、それに対してはある程度の期待値があるはずです。
例えば「なぜこの問題が起こったのか?」「保証はどうしてくれるのか?」などのことです。
それらは大きく分けると下記3つに集約されていきます。
- 現状把握
- 原因究明
- 改善提案
①現状を把握する
現状把握とは、「今何が起こっているのか?」ということを確認するフェーズです。
お客様自身も「もしかしたら自分の間違いなのかもしれない…」と心の中では疑心暗鬼になっている可能性があるので、このフェーズではあまり強く言ってこないはずです。
なので、現状把握の段階では「現在調査中です。」という回答に留めるのが無難だと思います。
営業マンの憶測でモノを言ったり、自分の推測を伝えてしまうと、もし間違っていた場合、問題解決が長期化してしまう可能性もあります。
なので、このフェーズで重要なことは「事実だけを伝える」ということなのです。
とはいっても、緊急性のあるトラブルもあるはずです。
例えば、「大きなアラーム音が鳴り続けている」「子供がおもちゃを誤飲した」などのケースです。
このような場合には、マニュアルに沿った対処法を伝えることも大切です。
緊急性がある場合にはお客様も焦っているので、下手に待たせると影響が大きくなってしまいます。
この辺りはケースバイケースの対応が求められると思います。
➁原因を究明する
原因の究明は、お客様に安心感を与える上で非常に重要なフェーズとなります。
「なぜ起こったのか?」という原因がわからなければ、お客様はいつまでたっても安心できません。
その問題の根本原因を知るためには、時系列でその経緯を整理整頓していくべきだと思います。
本質的な問題にたどり着くためには、
- 何が問題だったのか?
- なぜそれが起きたのか?
- なぜ防げなかったのか?
という「Why(なぜ)?」を徹底的に追求しましょう。
➂改善提案する
現状が把握できて、原因がはっきりした場合、お客様に対して連絡をすることになると思います。
その時には、再発防止策も一緒に提示しましょう。
何が起こったか原因究明できたとしても、それがまた起きる可能性があれば、お客様は不安で仕方ありません。
しかしここで注意すべきことは、「トラブルを二度と起こさないことを約束するのは絶対に避ける」ということです。
例えば、提供した商品が壊れたのであれば「商品が壊れないようにする」というのは再発防止策になりません。
お客様は当然このような要求をしてくるかもしれませんが、それは現実的に無理なので、あくまでも「トラブルが起こった時にすぐ対処できる体制を整える」とか「トラブルが起こった時の影響を最小限にする」ような提示に留めましょう。
もしヒューマンエラー(人為的なミス)が原因なのであれば、業務フローを改善することや、業務フローを自動化するなどの再発防止策が良いでしょう。
この考え方を間違ってしまうと、後々大問題に発展する可能性があります。
またトラブルになった時に「あの時に二度と問題を起こさないと約束しただろ!」とお客様から言われないようにすることが大切です。
その上で、再発防止策は5W1Hのカタチでお客様に提出しましょう。
「When:いつ」
「Where:どこで」
「Who:だれが」
「What:何を」
「Why:なぜ」
「How:どのように」
5W1Hは、「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」の頭文字をとった言葉ですが、このような伝え方をすればお客様は内容を理解しやすくなります。
謝罪する時に重要なことは「伝える」ことではなくて、「理解してもらう」ことです。
相手に伝わらないと謝罪にならないので、お客様が理解できるような伝え方を心掛けましょう。
【要チェック】謝罪時の注意事項7選
いざお客様に謝罪する時には誰でも緊張しますが、しっかりとした準備さえしておけば何も怖くありません。
クレーム対応における成功の秘訣というのは「しっかりとした準備」なのです。
この準備だけで、謝罪の成否は8割決まると思ってください。
その上で当日の立ち振舞いも注意する必要があります。
ここでは謝罪訪問するという前提のもと、正しい謝罪の仕方や謝罪の極意について解説していきたいと思います。
相手の心を動かすような謝罪方法を身につけましょう。
①服装を整える
謝罪する時には、その場にふさわしい服装というものがあります。
つまり「許したくなる服装」や「誠意を感じる身だしなみ」というものがあるのです。
そもそも人間は「見た目が9割」という言葉もあるほど、視覚に頼っている生き物です。
もしあなたがスーツスタイルの会社員なら、スーツカラーはブラックかダークグレー、ネクタイは地味目の濃紺、ワイシャツは白にしましょう。
濃紺のネクタイには「謝罪」や「誠実さ」を与える効果があります。
そして、きちんと整髪することも大切です。
お客様は「この会社は信用できるのか?」と疑心暗鬼になっているので、しっかりした身なりをしたほうが無難だと思います。
高級ブランドなど、自分をアピールするものはすべて外して、とにかく地味目な格好を心がけましょう。
そして見落としがちなのが「腕時計」です。
謝罪訪問する場合には、絶対に腕時計を外してください。
腕時計をしていると、無意識のうちに時間をチラ見することがあるので、それに気づいたお客様を不愉快にさせる可能性があります。
しかし、時間無制限の謝罪をすることはお互いにとって良くありません。
なので、謝罪訪問の冒頭で「本日は貴重なお時間を頂戴して誠に申し訳ありませんが、1時間以内でご報告させて頂きます。」と言ってしまうのもおすすめです。
それと同時に携帯電話やスマートフォンは無音(バイブレーションなし)の状態にしておいて、お客様を刺激する要素を一つでも無くしておきましょう。
➁遅刻は厳禁
謝罪訪問する場合には、絶対に遅刻をしてはいけません。
もし遅刻なんてしたら「本当に謝罪する気があるのか!」と怒りが再沸騰するきっかけをつくってしまいます。
謝罪訪問するときのポイントとは、お客様を刺激する要素を一つでも少なくすることです。
とはいっても、電車が遅延したり、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性がゼロではありません。
なので、通常の訪問営業と違って、30分ぐらい前には現地に到着する感覚でスケジューリングしましょう。
謝罪する前の予行練習を近くのカフェでするつもりなら、時間の無駄にもならないはずです。
しかし、この時のカフェはあまりお客様の会社に近すぎない場所にしましょう。
もし謝罪方法について打ち合わせをしているのをお客様に聞かれた場合、せっかく準備した訪問謝罪が台無しになってしまいます。
なので、絶対にお客様が来ないようなお店を選択するべきだと思います。
➂部屋では立ったまま待つ
お客様の会社に着いて、いざ部屋に通された場合、そこで座って待つのはNG行為です。
少しでもお客様に誠意を感じてもらうため、演出の一環ではありますが、部屋では立ったまま待ちましょう。
そして飲み物について聞かれた場合にも、「申し訳ありませんが、じっくりとお話ししたいので、今日はお飲み物をご遠慮させていただきます。」と言って断りましょう。
そしてお客様が入室してきた際には、すぐさま頭を下げるようにしましょう。
「今日は謝罪に来た」ということを相手に印象付けるためには、頭を素早く下げて、3秒後にゆっくりと頭を上げるのがおすすめです。
そして、お客様から「お座りください」と言われるまでは立ったままでいましょう。
その場の主導権をお客様に渡すことで、さらに謝罪感が強くなるはずです。
④誠意を見せる
あくまでも謝罪なので、誠意を見せなければいけません。
そのために大切なのが、話を聞く姿勢です。
まずお客様に対して体を向けることは大前提です。
真正面からお客様に向かうことで、「あなたの話を聞くつもりです」という傾聴の姿勢を見せるのです。
このような誠意が相手に伝われば、まずは謝罪の場が出来上がるはずです。
そして自分は2割、お客様には8割喋ってもらうイメージでいましょう。
とにかくお客様の不満を言ってもらって、それに対して相槌を打ったり頷いたりすることが大切です。
そして、お客様の発言は時々メモを取るようにしましょう。
謝罪訪問ではお客様から様々な要望が出てくるので、それらをすべて頭で記憶するのは難しいと思います。
もしお客様が言ったことを忘れてしまったら、それこそ火に油になりかねません。
メモを取る場合、パソコンのメモアプリを使うこともできますが、謝罪の現場では出来る限り手書きのメモを使った方が印象が良いはずです。
➄お詫び状を持参する
お詫び状が必要ないケースもあると思いますが、一応念のため謝罪訪問では詫び状を持ち歩くようにしましょう。
お詫び状にはトラブルが発生した経緯、その原因、再発防止策まで記載することになりますが、注意すべきことは事実のみを記載するということです。
自分の憶測や、感想などを入れてはいけません。
時系列(できれば分単位)による具体的な経緯と、トラブルが発生した原因、その初動対応について、改善するための方法などを記載します。
一般的にトラブル対応には時間がかかりますが、初動対応が遅れたような印象を相手に与えないことが大切だと思います。
もちろん嘘はいけませんが、「最大限努力しました!」という内容が伝わるような書き方(経緯)にしましょう。
⑥菓子折りは持参しない
たまに謝罪訪問する場合、菓子折りを持って行く人がいます。
しかしこれはやめたほうが無難だと思います。
菓子折りには「これをあげるので許してください!」という意味合いが含まれているので、お客様の気持ちを逆なでしてしまう可能性があります。
もしどうしても菓子折りを持っていきたい場合には、2回目以降の訪問時に持って行くことをお勧めします。
菓子折りは、お客様と関係性構築するための営業ツールだと理解しておきましょう。
➆できない約束は絶対にしない
謝罪訪問の現場では、お客様から様々な要望が出てくると思います。
先ほどもお伝えしたような「二度と今回のようなトラブルが起きないようにして欲しい」という要望もあると思います。
しかし、システムエラーやヒューマンエラー含めて、絶対にトラブルを起こさないという約束はできません。
なので、「今後は二度とトラブルを起こさないようにします」という無理な約束をお客様と交わしてはいけないのです。
とはいっても、「お客様、お言葉ですがシステムエラーを絶対に防ぐことは無理なので…」という伝え方をしてしまうと、お客様の期待値を下回る回答になってしまうので、その場は丸く収めた方が良いと思います。
もし「二度と今回のようなトラブルが起きないようにして欲しい」と言われた場合、下手な言い訳をせずに「かしこまりました。今後起きないように努力いたします」とか「今後発生しないように改善いたします」という伝え方に留めましょう。
謝罪時の言葉について
謝罪訪問する場合には、お客様に対してお詫びの言葉を伝えると思います。
謝罪には、その場にふさわしい言葉というものがあります。
言ってはいけないNGワードを発言することで、お客様は気分を害してしまい、せっかくの謝罪訪問が台無しになっては元も子もありません。
まず謝罪についてですが、「すいません」というのではなく「申し訳ございません」という丁寧な言い方にしましょう。
その上で、何について謝罪しているのかを明確にした方が良いと思います。
これは謝罪する範囲を狭めることにも繋がるので、後々効いてくるはずです。
というのも、冒頭でぼんやりとした謝罪をしてしまうと、今回起こったトラブルだけでなく、過去の対応ミスや製品の不満点など、あっちこっちに飛び火する可能性があるからです。
その上で、お客様のビジネスに便乗するような謝罪方法はやらないようにしましょう。
例えば「お客様第一」を経営理念に掲げる会社であれば、「弊社もお客様第一を考え、今後は…」のような話し方をすると、相手は「小馬鹿にされた!」と感じるかもしれないので、避けた方が無難だと思います。
そして一番重要なことが、鼻につく表現を使わないことです。
「●●だと思います。」とか「ですが、…」などは、表現が曖昧だったり、言い訳がましく聞こえることがあるので注意しましょう。
「●●だと思います。」⇒「●●かと思います。」
「ですが、…」⇒「しかし、…」
まとめ
ビジネスパーソンであれば、誰でも謝罪は避けたいと思っているはずです。
でも、絶対にトラブルを無くすことはできないのです。
そうであれば、「トラブルが起こった時にどう対処すべきなのか?」という知識を身につけておくことがリスクヘッジになると思います。
「トイレが詰まって流れなくなった!」という時に焦って対応を考えるのではなく、「トイレが詰まったら、この緊急連絡先に電話しよう!」と準備しているのが優秀な人だと思います。
あらかじめトラブルが起こることは予想できるはずなので、それに対する知識を身につけておきましょう。