成果主義は実力主義ともいわれますが、多くの企業で採用されている仕組みだと思います。
ただ、もちろんメリットやデメリットがあるので、今回は「成果主義」というテーマにフォーカスして解説したいと思います。
目次
成果主義の意味とは?
成果主義とは、「仕事でどのくらいの成果を上げたのか?」という実績をもとに、人事評価や給与を決定するスタイルのことを言うので、「実力主義」と言われたりもします。
具体的に営業職の場合は、受注した契約数や売上金額などが成果に該当してきます。
また、コールセンター業務ではテレコール数などの稼働実績も成果とみなされることがあります。
成果主義を取り入れている会社では、高い成果を上げた社員ほど報酬金額が増えたり、早く昇進できたりするのが一般的なので、”成果主義の会社”と聞いたときには、「自分の実績を評価してもらいやすい会社」ということが判断できると思います。
成果主義は”能力主義”と違う
成果主義の場合、その人のバックグラウンドや属性はあまり重要視されない傾向があります。
なので、仕事で達成した実績や、会社への貢献度が主な評価基準になるため、
- 学歴
- 職歴
- 年齢
- 性別
などに関係なく、成果を上げた社員が評価されることになります。
逆に成果が出せない社員は、たとえ学歴や職歴がどんなに素晴らしくても、その会社では評価が低くなってしまうのが成果主義の特徴です。
成果主義と似ているものには「能力主義」がありますが、この2つは若干違っています。
能力主義も社員の能力を考慮して人事評価などを行うスタイルですが、能力主義の場合は目立った成果を上げなくても、能力やスキルがあると認められれば評価されることが多いです。
よって、成果にこだわる成果主義と能力主義とでは、評価の基準に少し違いがあります。
成果主義は年功序列と反対
成果主義は、従来の年功序列とまったく正反対の仕組みを持っています。
日本の会社では、バブルが崩壊する1990年代ごろまで「年功序列」というスタイルで人事評価や給与の決定が行われていました。
年功序列は、
- 終身雇用
- 企業内労働組合
と合わせて「日本型雇用の3種の神器」なんて揶揄されることもある日本独特の仕組みになります。
入社した社員を定年まで雇用する「終身雇用」を掲げる会社が多くを占めていたこともあり、日本では社員の評価についても年齢や勤続年数を重視する傾向がありました。
年功序列スタイルの場合、有能・無能に関係なく年齢が上がれば上がるほど、昇進や昇格のチャンスが訪れます。
あまり成果を上げられない社員でも、ある程度の年齢になればそれなりに評価されて給与が増えたり、管理職になれるのが年功序列の特徴になります。
年功序列は”無能社員”を生み出す
このような年功序列のスタイルは、雇用されている正社員が安定した環境で長く働けるというメリットがあります。
ただ、バブルが崩壊してからは日本でも年功序列のスタイルを廃止して、仕事の業績でスタッフの評価をする成果主義を取り入れる会社が増えてきました。
つまり企業側に余裕がなくなったのです。
大手メーカーなどは、成果主義をいち早く取り入れた企業のひとつです。
結局、年功序列&終身雇用というぬるま湯スタイルは”無能な社員”を大量生産するだけの仕組みなので、現代に繋がる長期低迷の元凶になってしまいました。
成果を上げない社員に高い給料を支払うのをやめる会社が増えてきたことで、働く側も年功序列が一般的だった時代とは違った意識を持って働く必要が出てきています。
成果主義のメリット&デメリット
成果主義を導入するメリットは、社員が働くモチベーションを高められることです。
成果を上げるほど自分の評価が高くなるので、常にベストを尽くして仕事に取り組む社員が増えるのは、ある意味当然だと言えます。
成果主義を取り入れることで、色々なバックグラウンドを持つ社員が切磋琢磨しながら、それぞれの力を最大限発揮していきます。
このような成果主義の会社では、社員に平等なチャンスが与えられているので、年齢が若く勤続年数が短かったとしても、成果を上げれば昇給&昇格のチャンスが得られるということになります。
成果主義のデメリット
成果主義のデメリットは、社員の競争意識が強くなりすぎて会社の雰囲気が悪くなってしまったり、評価されない社員のモチベーションが著しく低下することです。
また、社員同士のつながりが薄くなってしまうことは、成果主義のデメリットだと考えられます。
実際、自分の成功ノウハウを共有しなくなったり、人の足を引っ張るような社員が出てきても、全くおかしくありません。
このような組織になってしまうと、会社(チーム)としてはもはや機能しておらず、各個人が私欲の為に動くだけの団体になるので、もはや崩壊するのは時間の問題だと思います。
このほか、職種が異なる社員の成果を平等に評価しにくいことも成果主義のデメリットに挙げられます。
仕事には営業職のように成果を定量的に出しやすい職種もあれば、人事・総務のように成果の基準を決めるのが難しい職種もあります。
このようなケースでは営業職だけが高給になってしまい、事務職関連は給料が上がらないということになるので、社内の不満が高まってしまいます。
ただ営業職の場合でも、成果主義が有利に働くかどうかは会社の評価基準によってケースバイケースと言えます。
成果主義の仕組みを考える
成果主義をこれから取り入れようと考えている人は、「どのような仕組みにすればいいのか?」と悩んでいるはずです。
ここでは、そのような悩みを持つ経営者やマネージャーを支援するアイデアをご紹介していきたいと思います。
あくまでも一つの事例やアイデアとして参考にしてください。
なお、営業職向けの仕組みにフォーカスしているので、全ての職種に当てはまるものではありません。
何を基準にすべきなのか?
成果主義というネーミングの通りですが、必ず「何か?」を基準にして成果としなければいけません。
この「何か?」は定量的に導き出せるモノでなければいけないので、
- 意欲
- 情熱
- 努力
などの抽象的なものではダメです。
売上を基準にするとどうなる?
ある意味では一番わかりやすいのが「売上」を基準にすることです。
営業職の仕事は「売上」を持ってくることなので、とてもシンプルですよね。
ただ、これを指標にしてしまうと、一つ問題が出てきます。
それは粗利率の問題です。
粗利とは「売上-原価」で計算することができますが、粗利率は商材によって全く異なってきます。
例えば、自社商材であれば粗利率80%なんてこともありますが、他社商材を代理販売しているケースでは、粗利率20%なんてことも珍しくありません。
なので「売上は多いのに、実際は全然稼いでいない…」なんてケースが起こり得るのが、売上を基準にした場合の問題なのです。
粗利を基準にするとどうなる?
それでは粗利を基準にすれば、先程の問題は解決するので一見すると良さそうに見えます。
ただ、実は別の問題が発生してしまうのです。
それは売る商材が偏るということです。
粗利を基準にするということは、「粗利率の高い、儲かる商材だけを売るべき」ということを暗示することになります。
この商材が自社商材なら良いですが、もし他社商材(代理店として販売)だった場合、大きな経営リスクを抱えることになります。
もしそのメーカーから代理店契約の解除を通達された場合、それ以外の商材を売ってこなかった営業マンは何も売れなくなりますし、これまで築き上げた顧客網もリセットされてしまいます。
販売数量を基準にするとどうなる?
定量的に表せる数字としては「販売数量」があると思います。
10個売っている人より、100個売っている人に多く還元するという考え方なので、シンプルでわかりやすいですよね。
ただ、これも売上や粗利と同様に問題が出てきます。
例えば、
- 売上1万円の商材を10件受注した場合
- 売上10万円の商材を1件受注した場合
ではどちらも売上10万円ですが、営業効率が良いのは2番目の方ですよね。
本来なら2番目の方が評価されるべきなのに、販売数量を基準にしてしまうと、営業効率が悪い1番目の方が評価されてしまうのです。
新規受注数を基準にするとどうなる?
よくあるケースですが「新規受注数」を基準にするというケースがあります。
企業にとって新規開拓は必要不可欠なので、そこにフォーカスすること自体は良いと思います。
ただ、営業マンが新規開拓だけに注力すると、既存顧客のフォローアップ営業が疎かになってしまうリスクがあります。
実は、企業に利益をもたらす構図は「新規顧客:既存顧客=2:8」とも言われているので、新規開拓だけに注力すると先細りする可能性があります。
この辺りは十分注意しましょう。
一つの基準では限界がある
ここまで読んだ人は気付いたと思いますが、成果のポイントを「一つの基準だけにすることは無理」だと思います。
どれを選んだとしても、その弊害が出てきてしまうので、どうしても上手くいきません。
なので、複数の成果ポイントをミックスさせるやり方に落とし込みましょう。
この時の考え方は「成果ポイントとは会社の意思である」ということをきちんと理解しておくことです。
先程も解説しましたが、粗利を基準にするということは、「粗利率の高い商材だけを売ってこい!」ということを暗示することになります。
これは経営者からのメッセージであり、会社の意思だと受け取ることができます。
つまり、「営業マンがどのように動くと理想的なのか?」ということを追求することこそが、成果ポイントを決める重要な思考術になるのです。
成果主義は人件費削減になる?
バブル崩壊後、日本で成果主義を取り入れる会社が増えてきたことにはいくつか理由があります。
その中で大きな理由は、人件費(コスト)を減らせる可能性があるということです。
成果主義を取り入れている多くの会社は基本給を低めに設定する傾向があるので、ほとんどの場合は成果報酬(インセンティブ)でその人の実績に見合った給与を支給しています。
なので、「基本給よりもインセンティブの方が多い」なんてケースはよくある話で、決して珍しくありません。
つまり、会社側としては基本給が少なくて済むので、その分たくさんの社員を雇用したとしても「人件費は最小限」で済んでしまいます。
成果を上げた一部の優秀な社員への支払いが発生したとしても、その分「売上は増えている」ので、会社側は喜んで支払うことでしょう。
結果的に基本給を減らした分だけ、全体コストが抑えられる可能性があるわけです。
また、賞与は基本給をベースに計算することが多いため、基本給が減ると定期的に社員に支給するボーナスの金額も抑えることができます。
このように、コスト(人件費)を抑えることができることは経営者にとって大きなメリットだと言えます。
成果主義は失敗する可能性がある
成果主義を取り入れたい会社は増えていますが、その反面「失敗した!」という会社が多いことも事実です。
つまり成果主義を取り入れるときには、注意すべきことがあるということになります。
それは、社内の不満が高まることです。
会社にとってコストメリットのある成果主義ですが、社員にとっては不満の種になってしまうケースが少なくありません。
なぜかと言うと、社員側の目線に立ってみれば理解できると思います。
成果主義の会社では、その会社の社員に求める仕事は比較的高いレベルの成果だと思います。
それにも関わらず、支給される給料が少ない場合、給料体系に不満を抱える社員が出てきてしまう可能性が高まってきます。
もちろん出来ない営業マンが悪いんですが、それでもほとんどの人が安月給になってしまうので、不満が出てきてもおかしくありません。
成果の評価基準に納得ができなかったり、努力が報われなかった時は、成果主義そのものに疑問を持つ人もいるでしょう。
なので、会社として人件費の削減に繋がったとしても、大切な社員を失ってしまっては、また採用コストが掛かるので、何の為に成果主義を取り入れたのかわからなくなってしまいます。
成果主義にはメリットもあればデメリットもあるので、気軽に取り入れることは愚策になる可能性があります。
十分注意しましょう。
成果主義は日本人に合わない?
成果主義はもともとアメリカ発祥の仕組みなので、「日本の会社には合わないのではないか?」という意見も多数あります。
日本人はもともと横並び教育なので、競争意識が薄くて、職場で目立つことに抵抗感を持つ人も多いのです。
日本人には”良い人”が多いので、先輩を差し置いて自分が評価されたりすると、なんとなく居心地の悪さを覚えてしまう人も多いと思います。
一方で競争することに抵抗を感じなかったり、賞賛されることを良しとする欧米社会では、仕事でも能力やスキルなどを社員同士で競い合う成果主義のスタイルが浸透しています。
アメリカの場合、学業など仕事以外のシーンでも実力主義や結果主義の考え方をする人が多く、成果主義での働き方に抵抗を感じる人が少ない傾向にあります。
例えば、事業を成功させて大金を稼いだ人は、年齢などに関係なく周囲から賞賛されるのがアメリカ文化です。
このようなアメリカと同じ仕事のスタイルをいきなり取り入れると、日本の職場ではちょっとした混乱が生じる可能性があります。
アメリカと日本では背景にある社会文化が違うため、アメリカ式の成果主義が思うように職場に馴染まないということは十分あり得ます。
実際、成果主義を取り入れた日本の会社には、途中で他のスタイルに方向転換している企業も少なくありません。
成果主義が日本人に合うかどうかは、慎重に判断していく必要があると思いますので、これから成果主義を取り入れようと考えている場合には十分注意しましょう。