
アカウントセールスは主に『IT系の企業』で活躍している職種だと思います。
しかし最近の傾向として、顧客に寄り添う営業スタイルである『カスタマーサクセス』が大流行している関係で、アカウント営業にも注目が集まっています。
そこで今回は、これからの時代に必要とされるであろう「アカウントセールス」について解説したいと思います。
目次
アカウント営業の意味とは?
アカウント営業とは、ターゲットとなる”顧客の懐”に入り込んで営業するスタイルのことを言います。
新規開拓営業のことを「アカウント開拓」とか「新規アカウント」と言ったりもしますが、この顧客アカウントをがっちり握って営業するやり方のことを指します。
つまりアカウントセールスでは、顧客の売上向上にコミットし、お客様と一緒に伴走していくのです。
顧客の業績を高めるための方法を考え、それに見合う商品やサービスを提案していくので、顧客の販売数&受注率を上げるだけでなく、顧客単価を上げる方法なども一緒に考えることになります。
よって、アカウントセールスする営業マンには、情報収集スキルやデータ分析スキルが求められるのです。
ルート営業との違い
アカウント営業では、顧客情報を広く深く収集して、多くを理解した上で提案していきます。
顧客の問題や課題を見つけ出し、それを解決していくのがアカウント営業になりますが、それと似た言葉に「ルート営業」があります。
ルート営業は、決まったお客様に定期訪問する営業スタイルのことを指します。
ここでは詳しく解説しませんが、もしルート営業について知りたい場合には下の記事をご覧ください。
ルート営業はアカウント営業に比べて、顧客の意思決定プロセスがシンプルなので、商談のリードタイムも短く、効率的なセールスが実現できます。
一方のアカウント営業では、意思決定プロセスが複雑なので、じっくり時間をかけて商談することになります。
また、今後の収入の主力になりそうなところを「キーアカウント」と呼んでおり、そこに注力することを「キーアカウント営業」と呼んでいます。
ちなみに、一般的なルート営業には以下のようなものがあります。
- 置き薬の補充
- ウォーターサーバーのボトル配送
- サプリメントや牛乳(ヤクルトなど)の定期販売
- 自動販売機の補充
どれも「補充」や「配達」などの作業が多いので、製品サービスを売り込むというよりは、お客様とコミュニケーションすることが仕事になっています。
毎回決まったお客様を訪問するので、
- 何か変わったことはないか?
- 他に課題感はないか?
などをヒヤリングしながら回ることになります。
そのような業務を通じて人間関係を構築し、長期取引へとつなげることがルート営業の役目なのです。
このやり方は昔ながらの営業スタイルだと言えますが、現代でも十分通用するやり方だと思います。
やはりビジネスにおいて「信頼関係の構築」というのは、一番強い楔になり得ます。
ただし、その信頼関係はルート営業している「営業マン」に依存する仕組みなので、その営業マンが退職したり転職した瞬間に崩れ去っていきます。
つまり属人的な仕組みだということです。
なので、もし優秀なビジネスモデルを構築したいのであれば、営業マンに依存するのではなく、仕組みで稼ぐやり方、つまり「再現性のあるビジネスモデル」を構築しましょう。
顧客対応のやり方
アカウント営業をする場合、顧客対応のやり方を理解することが大切です。
そのプロセスをご紹介したいと思います。
①顧客情報を把握をする
顧客の売上や従業員のモチベーションなど、業績や職場環境などについての現状をヒヤリングします。
経営陣や従業員からヒアリングを行い、問題点や課題点を見つけるのが良いでしょう。
もし緊急度の高い問題があれば、そこから取り掛かることも大切です。
➁優先順位を決める
顧客情報をヒアリングしたら、次は「何から対応するのか?」という優先順位を決めなければいけません。
例えば、アカウント営業によって様々な提案をして、業績向上の全責任をコミットメントするような場合もありますが、このあたりは顧客と話し合うことも大切だと思います。
- 売上アップ
- 顧客数の増加
- 認知度の向上
お客様によって、その要望は様々だと思いますが、顧客ニーズをしっかりとヒアリングした上で、お互い目指すべきビジョンを決めることが大切です。
なるべく早く解決した方が良い問題はすぐに解決していき、その効果をPDCAサイクルのように検証していきますが、その時に取り組むべき課題の優先順位には見つけ方のポイントがあります。
それは『各課題ごとに”解決方法”を分類していく』ことです。
会社経営において、やるべき課題は山積されているはずです。
なので「全部やるべきだ!」となりがちですが、リソースの問題もあり、現実的には不可能だと思うので、欲張らず優先順位をつける必要があります。
例えば、「売上をアップさせたい」という課題があった場合、それを実現させる方法はいくつかあります。
- 商品の販売数を増やす
- 商品ラインナップを充実させる
- 商品の価格を上げる
- 集客を強化する etc.
これらの方法について、解決方法を分類していくのです。
- 商品の販売数を増やす ⇒ 顧客の購入点数を増やす
- 商品ラインナップを充実させる ⇒ 顧客ニーズを把握して企画する
- 商品の価格を上げる ⇒ 市場調査をして値上げする
- 集客を強化する ⇒ マーケティングを強化する
例えば上記のような解決方法が導き出された場合、それをマトリックスにまとめてみます。
すると「顧客ニーズを把握するべき」という結論に達するので、このケースでは顧客とのコミュニケーションを強化していく戦略が最も重要だと導き出されます。
このように導き出された問題に対して取り組んでいき、そこから少しずつ改善していくのです。
➂仮説を立てて、課題の解決策を提案する
問題点や課題点を見つけた後は、具体的な解決策を提案することになります。
ソリューションを提供する場合には、まず仮説を立てて、相手が理解しやすいように整理整頓しましょう。
顧客の業界だけでなく、全業界の動向や問題を分析して、将来的な提案をすることが大切ですが、その際には顧客とのコミュニケーションを重要視して、信頼関係を築くことが大切です。
長期的な取引を実現するためにも、誠意のある行動や言動が求められますが、このあたりはビジネスマナーにも通じる話なので、ある意味では『基本が重要』ということです。
④営業戦略を決定する
先ほど決めたビジョンを達成するための営業戦略を立てましょう。
高い理想だけを掲げるのではなく、収集した情報をもとに実現可能な方法を提案することが大切だと思います。
組み立てた営業戦略は取引先としっかり相談して、「実行する意欲があるか?」「実行するための人員や予算はあるか?」などを細く確認していきます。
また、顧客の要望やメリットを優先して、戦略を決めることも必要です。
顧客メリットが少ない方法だと、お客様のモチベーションが上がらず、結局失敗してしまう場合もあるのです。
➄分析して、新しい課題を見つける
アカウント営業によって立てた営業戦略を実行した後は、結果をレポートにまとめましょう。
その結果を分析して、新しい課題を見つけていくのです。
もし良好な結果が出た場合、それを継続かつ向上させるための新たな方法も考えていきます。
新しい方法を提案することで、次の営業活動にも繋がるはずです。
他に悩んでいる部署や担当者、関連企業はないかもヒアリングして、取引先を広めていくのも良いでしょう。
ソリューション営業との違いは?
アカウント営業と似た言葉に「ソリューション営業」というのがあります。
この二つを混同している人は多いため、一応解説しておきたいと思います。
ソリューション営業とは、顧客との対話をきっかけにして「現在抱えている問題」や「本質的な顧客ニーズ」を見つける営業スタイルのことを言います。
ソリューションは「解決策」を意味するので、顧客が主体となって、課題提起や解決策を考えていくのですが、そのやり方は「提案型営業」と呼ばれており、あくまでも主役は『お客様』になります。
なので、顧客が一つずつ理解&納得した上で話し合いを進めていきましょう。
ソリューション営業を実施する場合には、営業マンが最終的に自社商品&サービスを提案し、その受注数を伸ばすことを目的にしますが、アカウント営業の場合は少し勝手が違います。
アカウント営業の場合はお客様と一緒に伴走するので、どちらかと言うとコンサルティング営業に近いやり方になるのです。
お客様にとって必要な戦略を提案することは、『お客様の目線に立つ』ということになります。
ニーズに合わせたソリューションを提案するためには、プロジェクトチームの立ち上げや各種調整・納品までの全てをフォローアップしなければいけません。
よって、ソリューション営業よりも『アカウント営業』の方が、問題解決までのプロセスに深く関われるのです。
アカウント営業するメリット
アカウント営業をすることは、クライアントの売上向上や業務効率の改善に繋がると思います。
ルート営業やソリューション営業よりも、顧客にとって価値の高い話し合いや提案ができることは、アカウントセールスの大きなメリットだと言えます。
よって、アカウント営業を実施する場合には、予算金額や売上規模が大きくなってしまう傾向がありますが、そのプロジェクトでお客様の成功に繋がれば、更なる長期契約も期待できます。
そのような契約が続けば、安定した売上を確保できることでしょう。
お客様との信頼関係が構築できる
大きな売上が期待できる以外にも、顧客との信頼関係を築けることもメリットだと思います。
先ほどからお伝えしているように、アカウント営業マンは「ビジネスの伴走者」とも言えるので、お客様にとっては大切なビジネスパートナーになります。
顧客の状況を把握するために様々な情報収集や分析を行って、「徹底的に顧客のことを知ろうとする」ことがアカウント営業だと言えます。
綿密なコミュニケーションを取りながら進めていくため、徐々にお客様との信頼関係が深くなっていくのです。
また、分析と提案を繰り返していくことで、課題解決能力も高まります。
その結果、同じような問題や課題がある企業にも、そのノウハウ(経験値)を活かすことができるでしょう。
他の取引先へアカウント営業をする際、今までの経験やデータがあれば、分析や思考する時間やコストが減り、効率の良いアカウント営業が実現するはずです。
アカウント営業はIT業界に多い
アカウント営業はIT業界で多く活用されています。
なぜかというと、IT業界はデータ分析するのが得意だからです。
データウェアハウスやビッグデータ、AIの活用、RPAの開発、SFA&CRMの導入支援など、様々な角度からソリューションを提供することができ、その結果を分析することも容易です。
感情論や主観で議論するのではなく、データ分析した結果出てきた数字で議論すれば、「何が問題なのか?」が明確になりますよね。
データの読み取りや解析ができると、顧客が気付かなかった問題点も発見できるでしょう。
なので、情報収集したりデータ分析が得意な人は、アカウント営業の即戦力として期待されています。
特にIT業界のマーケティング担当者は、日常的にデータ分析をしているので、そのような業務が比較的得意なはずです。
他にも、コミュニケーション能力が高い人や、論理的思考&客観的思考が備わっている人はアカウント営業に向いているでしょう。
まとめ
アカウント営業はお客様の懐に深く入り込む仕事だと思います。
一般的な営業職といえば「売り込み」や「押し売り」をやるだけのルーティン業務になりがちですが、もう少しお客様に寄り添った営業スタイルを望んでいる人にはぴったりだと思います。
他にも色々な営業職種があるので、もし良ければ参考までに下の記事をご覧ください。