少数精鋭という言葉があります。
少数精鋭は”有名な戦術”なので、この言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、「少数精鋭」という考え方は会社経営にも応用することができるのです。
そこで今回は、会社組織を”精鋭部隊”にするメリット&デメリットを解説していきたいと思います。
目次
少数精鋭の意味とは?
少数精鋭とは、少ない人数でありながら優れた人材だけを集めて、最高の成果を求める戦術のことを指します。
元々は戦(いくさ)で勝つための方法として考え出されたのですが、今ではそれをビジネス活用するケースも増えてきました。
少数精鋭は、とても優秀な人物だけでチームを構成するので、寄せ集めの大人数よりも圧倒的な成果を求められると言われています。
現在では四字熟語として扱われることも多いですが、元々は数が少ないという意味の「少数」と、勢いがあり強くて鋭い力を持つ選り抜きの人という意味の「精鋭」という、ある意味で矛盾する言葉を組み合わせた単語が由来となっています。
ちなみに英語だと”elite(エリート)”と訳されていて、少数精鋭に似た言葉としては「多士済々(たしせいせい)」という四字熟語が挙げられます。
これは「優れた人がたくさんいる」という意味なので、少数精鋭のように”少数”であることは示されていませんが、優れた人が集まっているという意味では類義語として分類できるはずです。
また、一人で1,000人分の能力を持っていることを示す「一騎当千」も類義語として扱われることが多いです。
このような四文字熟語はビジネスシーンでも使えるので、詳しく知りたい人は下の記事もご覧ください。
少数精鋭の対義語とは?
少数精鋭の対義語は、
- 烏合之衆(うごうのしゅう)
- 有象無象(うぞうむぞう)
など諸説ありますが、ビジネス面においては「人海戦術」だと思われます。
人海戦術とは、とにかく多くの数で相手を圧倒する戦術であり、「相手より圧倒的多くの兵士を投入して勝つ」という古典的な戦略のことを言います。
ちなみに、この人海戦術と「反対の考え方」だと言われている戦術には「ランチェスター戦略」があります。
ランチェスター戦略では、たとえ小人数でも”圧倒的大多数”を倒す方法について論理的に解説してくれます。
これをビジネスに置き直すと、ベンチャー企業が大企業に勝てるロジックということになるので、中小ベンチャー企業の経営者こそ学ぶべき戦略論が「ランチェスター戦略」だと思います。
日本におけるランチェスター戦略の第一人者といえば竹田 陽一さんですよね。
著書も豊富なので、ランチェスター戦略について知りたい人はぜひ竹田さんの著書をご覧ください。
少数精鋭が「優れた最小人数で成果を出す」という考え方なのに対し、人海戦術とは「無能でも人数が多ければ成果が出せる」という考え方なので、ビジネスにおいては「人海戦術が少数精鋭の対義語」だと言えるでしょう。
少数精鋭にするメリット&デメリット
会社組織を少数精鋭にするメリットは色々あります。
まず、チーム内の人数が少ない為、一人一人の立ち位置をはっきりさせやすいという点が挙げられるでしょう。
人数が少ない分、全員が高いモチベーションを持って、自分に求められる仕事へフルコミットすることになります。
そのため、一人一人に対するタスクも増える傾向がありますが、その分スキルアップもしやすい環境になり得ます。
また、年功序列の大企業とは違って、若年層でも果敢にチャレンジできるのもいいですよね。
若いうちは「余計なことはしないで、自分の仕事だけやれ!」と指示されるのが当たり前ですが、少数精鋭の組織では良いアイデアであればすぐに採用され、即実行されます。
もちろん人数が少ないので、言い出しっぺであるあなたがプロジェクトリーダーに抜擢されることになります。
そして何よりも、人件費が少なくて済むという大きなメリットを見逃してはいけません。
企業の販管費の中で、最も大きいコストと言えるのが「人件費」です。
この人件費が少なくなるだけで、競争優位性は圧倒的に高くなります。
デメリットもたくさんある
少数精鋭にするデメリットとしては、「人間関係」が挙げられます。
やはりチームに所属している人が少ない分、全員とコミュニケーションする必要性が出てしまうため、嫌いな人や合わない人とも人間関係を構築しなければいけません。
もし関係性が上手くいかないと、チーム全体の仕事にも影響してくるので、業務に支障が出てしまいます。
それに少数精鋭の会社の場合は、1人で複数の仕事を担うことがほとんどです。
よって、誰か1人が突然辞めてしまうと「その分を周りの人がカバーする」という構図になるので、一気にタスクが押し寄せてくることになります。
あと責任者(社長など)との距離が近いのはメリットといえますが、その人との相性が悪い場合には諸刃の剣にもなり得ます。
なので、少数精鋭には一長一短があるといえます。
少数精鋭の組織は動かしやすい
少数精鋭のメリットは前述した通り、社長をはじめとするトップ層との距離が近いことです。
それ故に、社員全員とのコミュニケーションが取りやすく、仕事の指示も通りやすい傾向があります。
よって、朝令暮改も簡単にできて、スピード感のある経営が実現するはずです。
また、上層部の意見だけでなく、若手社員の意見も聞きやすい環境が整っていると言えるでしょう。
大企業はスピード感がない…
大企業といえば従業員数万人という規模でビジネスする大きな組織なので、少数精鋭とは真逆に位置しています。
日本の大企業は、古くからの慣習があって、新しいことを取り入れようとしても意思決定したり、実行するまでのコミュニケーションに相当な時間がかかってしまいます。
それに対して、少数精鋭の組織だと社長に直接意見をしやすい環境が整っていることから、新しいことにもスピーディに対応しやすく、時代の流れにも乗り遅れにくいと考えられます。
また先ほど解説したように、少数精鋭の組織では新人もベテランでも関係なく、様々な仕事を担当することになります。
やはり一人の負担が大きいと、経験に関係なく自分が抜けた時の穴が大きくなるので、仕事に対する責任感も大きくしないといけません。
しかし、その分「自分が会社を支えている」という実感も湧きやすく、社員のモチベーションも高い状態を維持できるでしょう。
分社化も検討する
「大企業はスピード感がない」とお伝えしましたが、それを解決する方法が分社化です。
大企業の中の一事業部だと決裁フローが複雑なので、スピード感がなくなってしまいます。
そんな時には分社化を検討しましょう!
特定の目的を持った子会社を設立することで、独自の決裁フロー構築できるため、既存の仕組みにとらわれない会社が出来上がります。
大企業本体から出資をしておけば100%子会社となるので、一応指示系統は残りますし、P/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)も分離できるため、いざという時のリスクがありません。
もし大企業が少数精鋭のメリットを享受したいのであれば、思い切って分社化を検討することが有力だと思います。
少数精鋭の会社にすべき理由
少数精鋭の会社にするということは、つまり「小さい会社」にするということになります。
しかし文字通りに「事業規模が小さい会社」という訳ではなく、「従業員の数が少ない会社」ということを意味しています。
なので、少ない人数で大きな事業ができる「事業オペレーション」も同時に構築しなければいけません。
これはある意味では”優良企業”ということもできますが、必要ない部分は極力外注して、無駄なコストを徹底的に削っていくのがいいでしょう。
このような従業員が少ない経営をすれば、たとえ不景気になっても強固な経営基盤ができているので、全くビクともしませんし、余った利益を投資に回してビジネスを最大化させられます。
このような経営は中小企業が目指すべき理想的な姿だと思います。
少数精鋭に転職するのもオススメ
もし大企業に所属しているのなら、少数精鋭のベンチャー会社に転職するのもオススメです。
従業員が少ない小さい会社に転職すべき理由としては、上層部と距離が近いので、自分の意見を会社に反映してもらいやすいことが挙げられます。
そのため、自分の仕事ぶりを直接評価してもらうことができますし、業務の範囲内・範囲外に関係なくやりたいことも実現できます。
- 大企業で働いていたけれどもしっかり自分の頑張りを評価してもらえなかった…
- 色々改善したかったのに、上司から「ダメだ」と言われた…
- 営業以外にもチャレンジしたかったが、なかなかチャンスがなかった…
上記のような苦い経験がある人は、もしかしたら少数精鋭の会社の方が向いているかもしれません。
ただし、中小企業に就職する際は「どうして人が少ないのか?」という本質的な部分をしっかり確認した上で就職・転職する必要があります。
少数精鋭の優良企業ならまだ良いのですが、ただ経営状況が悪かったり、職場の人間関係が悪くて人がすぐに辞めてしまう、典型的なブラック企業である場合もあり得ます。
そのような会社は自然に人が少ない会社になっている…、というケースも少なくありません。
転職は人生を左右する重要な決断ですし、そう何度もできるものではありません。
基本的に一つの職場では3年以上勤務しないと、次の転職の時に不利に働くと聞きます。
そのため、従業員が少ない会社に就職・転職することを考えている場合は「どの会社も優良企業とは限らない…」ということをしっかり念頭に置いた上で、企業の口コミや経営状況などを調べてから入社しましょう。
「少数精鋭主義」こそ最強である
ここまで少数精鋭について解説してきましたが、その魅力やメリットが十分に伝わったと思います。
基本的には、ビジネスにおいて「少数精鋭主義こそ最強」という考え方で間違いないと思います。
無駄に人件費(コスト)を増やすのは経営を圧迫しますし、少数精鋭は意思疎通の面でもメリットが大きいですよね。
また、圧倒的に優秀な人材が集まっている点は、競合他社と比べて優位に働くはずです。
小さい会社では、経営層の出した指示が一瞬で会社全体に行き渡るので、方向転換が用意ですし、たとえ重要な意思決定でもすぐに判断できるので、もの凄くスピーディーな経営が実現します。
特に社長からすると、会社全体に自分の意見が通りやすいので、自分がやりたいことをカタチにしやすい環境だと言えるでしょう。
社員側からしても、一人に任される仕事量が多くなりがちではあるものの、その分色々な経験を積んで、幅広いスキルを身につけることができます。
自分がやりたいことや希望するキャリアを社長に伝えやすいというメリットもあるでしょう。
少数精鋭にすることで効率が悪い仕事を最小限に抑えて、無駄のない働き方のノウハウを蓄積することもできます。
これがつまりDX化に繋がるのだと思います。
それに、優秀な人材ばかりが集まっていると、周りも良い影響を受けて、お互い切磋琢磨するので、新人でも優秀な人材に育ちやすい土壌が出来上がります。
このように、会社を少数精鋭にするメリットはとても大きいのです。
もちろんダイバーシティが起こりにくいことや、デメリットもゼロではないですが、メリットの方が圧倒的に大きいので、少数精鋭の会社経営を目指してみてはいかがでしょうか。
実際に、少数精鋭の組織で大成功した人物が、出光興産の創業者の『出光佐三』です。
そのノウハウを知りたい人は下の名言集をご覧ください。