「アントレプレナー」という言葉があります。
この言葉は独立起業を検討している人にとっては馴染みのある言葉ですが、あまり一般的な言葉という訳ではありません。
そこで今回は、アントレプレナーや起業家についてわかりやすく解説していきたいと思います。
起業経験者である営業シーク「さの編集」が監修した記事なので、これから独立起業する人はぜひご覧ください。
目次
アントレプレナーとは?
アントレプレナーとは「起業家」を意味する言葉ですが、具体的な起業方法には2種類のやり方が存在します。
- プロダクトアウト
- マーケットイン
プロダクトアウトは、「起業」といえば一般的に思い描くイメージだと思います。
世の中に無いような製品サービスを自分の力で生み出して、社会に貢献するような事業展開全般のことをいいます。
それに比べてマーケットインは、既にあるマーケット(市場)に新規参入するやり方なので、多くのプレイヤーが既に商習慣を作ってくれています。
例えば、販売代理店として独立開業するようなケースがマーケットインに該当します。
その他にも、すでに先駆者がいる状態で、その製品サービスよりもクオリティの高い製品サービスを後出しするようなやり方もマーケットインに該当します。
どちらのやり方が「楽だ」という言い方はしませんが、比較的ビジネスになりやすいのはマーケットインの方でしょう。
プロダクトアウトは製品開発コストが莫大で、潜在ニーズを掘り起こすマーケティングコストもかかります。
なので、世の中一般的に言われているような「スタートアップ」というやり方でなければ成功確率が落ちてしまうと思います。
アントレプレナーシップが重要
アントレプレナーシップとは、リスクを恐れずに新しいことに挑戦し続ける意思や意欲、精神力(マインド)のことを言います。
このような考え方は、起業家としてビジネスを興す時や、スタートアップ企業を立ち上げる際にとても重要と言われています。
革新的なアイデアを実現するために必要なアントレプレナーシップは、企業や各分野においてイノベーションを起こす場合に求められます。
つまり、アントレプレナーシップとはイノベーションを促進する起爆剤になりえるのです。
イノベーションが起こり続けている現代のビジネス現場では、思いついたビジネスアイデアをスピーディーに実現していく実行力が求められます。
なので、不可能とされているような事業にも果敢に挑むことができる”アントレプレナーシップ”を持った人材は、様々な分野で活躍できるでしょう。
このようにビジネスの現場で注目されているアントレプレナーシップですが、起業家だけでなく、サラリーマンにも求められるようになりました。
なぜかと言うと、会社内で新規事業をたくさん興す必要が出てきたからです。
現代はインターネットが発達した為、テクノロジーがとてつもないスピードで進化していますが、各企業はその流れについていかなければいけません。
テクノロジーを駆使したイノベーションが毎日起こっているので、これまで安泰と言われていた大企業ですら立場が危ういのです。
このような局面を打破するために、ほぼ全ての企業で社内起業が行われており、オープンイノベーションも盛んに実施されています。
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を社内に持つ企業も増えているので、それがさらにオープンイノベーションが加速させる原動力にもなっています。
今までやったことない新規事業を立ち上げるのは、とてつもない労力と情熱が必要だと思います。
アントレプレナーシップを有している人材は、強いリーダーシップを持って行動するので、組織自体のモチベーションを高めてくれるでしょう。
リーダーシップについて知りたい場合には、下の記事をご覧ください。
アントレプレナーとイントレプレナーの違い
これから独立起業することを計画している場合には、アントレプレナーとイントレプレナーの違いを理解しておいた方が良いと思います。
なぜかと言うと、この2つは似ているようで、アプローチ方法が大きく異なるからです。
独立開業することは人生の一大事なので、絶対に失敗が許されません。
そのような大きな決断をする前に、どちらの方が自分にとって合っているのかを判断しておきましょう。
アントレプレナーの特徴とは?
アントレプレナーとは、自分で法人や事業を立ち上げる起業家に対して用いられる言葉です。
なので原則的(株主が他にいない場合)には、独立起業した初期段階から全てのリスクを自分一人で背負うことになります。
重要な意思決定や経営判断も自分一人でやらなければいけません。
これはとても孤独で、過酷な状況だと思います。
このような役割からも、アントレプレナーに向いている人は「自分一人で何事も意思決定できるような判断力」を持っている人だと思います。
この判断力の源になっているのは、豊富な知識と経験値です。
それらを駆使しながら、その時々の最適解を導き出すのです。
行動力があって情熱がある
アントレプレナーの特徴は、とにかく行動力があって情熱があることです。
自分の実現したい世界観がすでに頭の中にあって、そこに猪突猛進するような”単細胞”でもあるのです。
ちなみに、何度も起業する人のことを「シリアルアントレプレナー」と呼んだりしています。
このような人は一つの事に夢中になる傾向があり、それに集中していると周りが見えなくなってしまうので、アントレプレナーの人は円満な家庭を築き上げにくいと言われています。
さらに、ものすごく飽きやすい性格だとも言われています。
起業家は何らかのゴールを見据えて日々邁進していますが、そのゴールにたどり着けることがほぼ確実になった瞬間、すぐにやる気をなくしてしまうのです。
そうすると他の事業に手を出したり、もっと自分が楽しめるビジネスを探し始めます。
つまり、とても浮気症なのです。
起業家とは動いていないと死んでしまうマグロのような人間なので、常に自分が楽しめることを探し続ける癖があります。
このような特殊性な人間なので、アントレプレナーと呼ばれる人には「変な人」が多いとも言われています。
果たしてあなたは「単細胞の変人」でしょうか?
もし「その通り!」と言うのであれば、きっとあなたはアントレプレナーに向いているはずです。
イントレプレナーの特徴
イントレプレナーはゼロの状態から起業するのではなく、サラリーマンとして働いている状態で社内起業する人のことを指します。
イントレプレナーのやり方はいくつかありますが、代表的なのは下の3パターンだと思います。
- 新規事業部の責任者になる
- 会社100%出資の子会社社長になる
- 自分と会社が折半出資して子会社の社長になる
勘が良い人はわかると思いますが、どのパターンも自分が100%リスクをような仕組みにはなりません。
この辺りはアントレプレナーと大きく違う部分だと思います。
また所属している会社がすでに保有している優秀な人材や設備、販路を活用できる点も、大きなストロングポイントになると思います。
そのぶん目標となる予算額も大きくなると思いますが、それでも事業を成功させられる可能性は自分一人で起業するアントレプレナーよりも高まるはずです。
やっぱり「東証一部に上場している●●株式会社の100%子会社です」なんてセールストークが使えれば、営業活動にも差が出てきますよね。
そのような後ろ盾があるぶん、イントレプレナーは独立起業しやすいと思います。
とはいえ、イントレプレナーは社内営業が大変という特徴もあります。
アントレプレナーは自分でリスクを負うため、誰かにお伺いを立てたり、社長を説得する必要などありませんが、イントレプレナーはどうあがいてもサラリーマンです。
雇われサラリーマンであるイントレプレナーも基本的な意思決定できるはずですが、親会社(所属会社)に影響を与えることや、大きなリスクを負うような決断は自分一人でやらない方が無難だと言えます。
事前に根回しをしたり、社内営業しておかなければ、失敗した時の責任を押し付けられて、更迭されてしまうかもしれません。
このようなしがらみがあることは、アントレプレナーと大きく違う部分だと思います。
なので、根回しが得意な人や、会社内の人脈が豊富で社内営業に自信がある場合には、イントレプレナーの方が向いているでしょう。
個人的にはイントレプレナーとして挑戦できる機会があるのであれば、そちらの方が自分で起業するよりもリスクが低いのでおすすめです。
イントレプレナーとして実績を残しておけば、きっと自分で独立起業した時の成功確率も上がることでしょう。
イントレプレナーには、アントレプレナーと違ったスキルが求められるので、「自分にはどちらのやり方が向いてるのか?」ということを良く考えてみましょう。
インフォプレナーの意味とは?
イントレプレナーやアントレプレナーと似た言葉に「インフォプレナー」があります。
この言葉は「情報起業家」という意味の言葉ですが、混同されやすいのでここで解説しておきたいと思います。
インフォプレナーは情報起業家のことですが、簡単に言ってしまうと”情報商材を売っている人”のことです。
自分自身の成功ノウハウやビジネスツールなどを、電子書籍やCDなどのソフトウェアを販売する人のことを指します。
このビジネスモデルの特徴は、とにかく原価が安いことです。
例えば、CDにビジネスノウハウを録画して、それを10万円で売れば99%以上の粗利が出ます。
ビジネスノウハウを録画する機会はたった一回だけなので、大量生産する為の手間&コストもかかりません。
成功するビジネスのノウハウがたった10万円で手に入るとなれば、一定数買う人が出てくると思います。
ただし高額な情報商材と、その中身が伴っていない場合、クレームになったり誹謗中傷の標的になる可能性があります。
名前を検索するとサジェストで「詐欺師」とか「炎上」というキーワードが出てくるような起業家を稀に見かけますが、そのような人はまさにインフォプレナーなのでしょう。
情報起業家は儲かるビジネスモデルと言われますが、その反面リスクも多いのであまりおすすめしないやり方になります。
起業する難しさとは?
起業するやり方に様々なカタチがあるのは理解できたと思いますが、どのようなアプローチ方法だったとしても、新規事業を立ち上げることが難しいことに変わりありません。
人一倍のアントレプレナーシップを持って新規事業を始めたとしても、全ての試みが成功するとは限らないからです。
特に未開拓の新しいジャンルで独立起業する場合には「潜在ニーズ」を呼び起こす必要があるので、成功するまでには多少時間がかかります。
すでに存在しているマーケット(市場)においてイノベーションを起こす場合でも、既にいるライバルとの激しい競争に巻き込まれるので、その戦いに勝ち抜かなければいけません。
各種のビジネスリスクに加えて、30代になってから起業するケースでは、仕事以外の問題も発生します。
例えば、高齢の両親が要介護だったりすると、なかなか自分の仕事に集中できませんよね。
他にも、30代の人は家庭を持っていたり、小さな子供がいたりするので、そのような場合には、私生活での出費がかさみ、とにかく資金難に陥りがちです。
プロダクトアウトする場合には、大量の事業資金が必要となるので、私生活に回せるようなお金はなかなか捻出できません。
下手したら数年間は収入ゼロという状態が続くのです。
このような状態に耐えられる人がどれほどいるのでしょうか?
自分の生活を犠牲にしながら、世の中に貢献していく…
アントレプレナーとして活躍するためには、このような自己犠牲の精神(マインド)が必要なのです。
サラリーマンが起業する方法
サラリーマンとして働いている場合、いきなり会社を辞めて独立起業することはあまりお勧めしません。
なぜかと言うと、リスクが高すぎるからです。
せっかくサラリーマンとしての収入があるのであれば、その地位を維持しながら起業する方法を模索した方が良いと思います。
そのやり方は、ずばり「副業」だと思います。
現代は副業解禁されたので、会社員でも気軽に複業(パラレルワーク)することができます。
もちろん副業禁止の会社であればダメですが、そうでない場合には週末起業から始めてみましょう。
週末起業とは、土日や祝日などのスキマ時間を活用して起業するやり方です。
このやり方であれば大きなリスクを取らなくて済みますし、事業が上手く軌道に乗れば、そのまま会社を退職して独立開業すれば良いのです。
起業することのデメリットを抑えつつ、アントレプレナーとしてのメリットを最大享受できる仕組みが週末起業です。
週末起業について詳しく知りたい場合には下の記事をご覧ください。
マイクロ起業もある
マイクロ起業とは、リスクを限りなくゼロに抑えた起業スタイルのことを言います。
具体的に言ってしまうと、資本金1円で会社を設立し、週末起業としてビジネス展開するようなやり方です。
それに伴う備品の購入はないので、ほとんどのケースでインターネットビジネスやコンサルティングビジネスになると思います。
インターネットビジネスの場合には、既にあるパソコンとインターネット環境を活用するので、資本金が必要ありません。
同様にコンサルティングビジネスも「ノウハウの提供」で稼ぐ仕組みなので、資本金がいりません。
このようなビジネスを始める場合には、マイクロ起業してみるのもおすすめです。
もしマイクロビジネスに興味があれば、下の記事をご覧ください。
起業する為の準備
起業を成功させるためには、しっかりとした準備が必要です。
その為に必要なものは下の記事で詳しく解説しているので、後でご覧ください。
ここでは独立起業する際、最初の難関になると言われる運営資金(資金調達)の問題について触れておきたいと思います。
企業経営する為の資源は「ヒト・モノ・カネ」と言われています。
「ヒト」は自分なので特に問題ありませんが、「モノ」を作るには「カネ」がいります。
つまり起業する為に最も重要なものは「カネ」なのです。
この「カネ」は多ければ多いに越したことはありませんが、その調達方法は大きく3種類に分けられます。
- 自己資金
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
自己資金とは、自分自身が会社に出資することです。
多くは100万円から500万円程度だと思いますが、預金を原資にして、自分の会社に出資するのです。
この金額が全て資本金として登記されることになります。
次に代表的な資金調達方法が「デットファイナンス」です。
「デット」と聞くと英語の「Dead(死んだ)」を思い浮かべるかもしれませんが、そうではなくて負債を意味する「Debt」が由来の「Debt finance」のことです。
これはつまり、銀行から借金したり、社債を発行するやり方です。
銀行からの借り入れはわかりやすいですが、社債とは会社が発行した債券のことを言います。
債券と聞くと「???」となる人が多いかもしれませんが、簡単に説明すると会社が借用書を作成して、それを受け取った投資家が資金を貸し付ける仕組みのことを言います。
しかしこのやり方は金利が高くなってしまうので、ほとんどの起業家は銀行融資を選択しています。
なぜ会社を設立する時に銀行でデットファイナンスをするのかというと、企業経営にはとにかくお金がかかるからです。
銀行の借入金利は決して高くないので、いざという時の保険の感覚で銀行から資金調達しておくのです。
もしこれをしておかないと、いざという時に銀行はお金を貸してくれません。
財務諸表が健全な設立当初であれば銀行は資金を提供してくれますが、赤字決算連発している企業にはなかなか銀行融資がつきません。
そのような企業だったとしても、過去に融資の返済実績があるというだけで、銀行は資金を融資してくれることがあるのです。
それがリスクヘッジの役割にもなるので、もし資金が必要無かったとしても、会社を設立する場合には必ずデットファイナンスするようにしましょう。
エクイティファイナンスこそが成長ドライブ
最後にエクイティファイナンスについて触れておきたいと思います。
エクイティファイナンスは、新規株式を発行する代わりに、お金(現物含む)を出資してもらう資金調達方法です。
つまり、エクイティファイナンスは株式会社しかできないやり方なのです。
株式会社は設立費用が30万円ほどかかるので、多くの人は合同会社から始めると思いますが、それでは資金調達の選択肢を自ら潰すことにもなりかねないので、基本的には株式会社を設立するようにしましょう。
エクイティファイナンスには株式発行が絡むので、ある程度専門知識が求められます。
なので、まずはネット証券などで株取引をやってみて、株式についての基礎知識を身につけましょう。
つまり、ある程度は自分で努力することも大切なのです。
その上で、株式に詳しい証券マンに相談したり、市販されている本を読んで勉強すれば、エクイティファイナンスに必要な知識が身に付くはずです。
エクイティファイナンスができるようになれば、デットファイナンスとは比べ物にならないくらいの資金調達が実現します。
それを実際に行なっているのがスタートアップ企業です。
スタートアップ企業は、「エンジェルラウンド ⇒ シードラウンド ⇒ シリーズ A … ⇒ シリーズ E ⇒ 株式上場」という具合でイグジットするビジネスモデルで成り立っています。
この時の調達額はエンジェルラウンドで1千万円、シードラウンドで5千万円、シリーズ Aで1億円…と徐々に金額が膨れ上がっていきます。
そこで調達した資金を事業に投資して、ひたすら売上などのKPIを追うのです。
黒字化は一旦置いておいて、とりあえずビジネスがグロースすることだけにフォーカスし、株式上場した後に利益を出すビジネスモデルがスタートアップ企業です。
デットファイナンスと比較して、エクイティファイナンスの方が資金調達額が大きくなる傾向があります。
資金調達額が大きいということは、それだけ「事業の選択肢が広がる」ことを意味します。
つまり、エクイティファイナンスこそが事業成長させる為のアクセルになり得るのです。
まとめ
サラリーマンであれば誰でも「独立起業」することに憧れを持ったことがあると思います。
しかし、一昔前のような起業方法だけでなく、現代では気軽に起業できるやり方も存在します。
これからアントレプレナーとして独立起業する場合には、「どのようなステップを踏んで起業するのが良いか?」ということをじっくり考えてみましょう。
起業することを決して焦る必要はありません。
事業を成功させるためには、しっかりとした下準備をしましょう。