
日本には「フルコミッション制」というビジネス形態があります。
この仕組みは様々な業種・業態で利用されているので、一般的な求人サイトで募集情報を見かけたり、フルコミッションで働いている人も多いことでしょう。
しかし一方で「フルコミッション制は違法である」という見解をインターネット上で目にする機会も多くあります。
もし違法な働き方なのであれば、コンプライアンスを遵守するべき企業経営者にとって問題になりますし、フルコミッションで働く側としても困惑するはずです。
そこで今回は、フルコミッション制が違法であるか否かにフォーカスして解説していきたいと思います。
気になる「フルコミの雇用形態」についても触れるので、フルコミッションという働き方に興味がある人は是非ご覧ください。
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フルコミッション制とは?
フルコミッション制を日本語にすると「完全歩合制」という言葉になります。
その実態は業務委託なので、働いた成果に応じて支払われる報酬金額が変動する、いわゆる個人事業主(フリーランス)となります。
正社員のような給与が保証されていないので、歩合制(インセンティブ)という働き方に似ていますよね。
しかしインセンティブ制度とも違っているので、その違いを明確にしておくべきでしょう。
インセンティブ制度では基本給が決められているので、基本的には正社員として働くのが前提となります。
その給与に加えてさらに歩合給が支給されるので、あくまでもインセンティブ(報奨金)としての側面が強くなります。
しかしご存知の通り、フルコミッションには基本給が存在していません。
そのため、成果を上げなければ収入ゼロということもあり得るのです。
このように、フルコミッションセールスは”完全実力主義”と言えるような働き方なので、非常にきつくて不安定な働き方とも言われています。
その一方、成果を上げることに楽しみを感じたり、営業力に自信がある人であれば、青天井で稼げるというメリットもあります。
この辺りはフルコミッションの魅力だと言えますが、さらに自分の裁量で働けるというメリットもあります。
フルコミッションとして働く人は個人事業主なので、会社員のような定時が存在しません。
勤務スタイルも問わないケースがほとんどなので、家事や育児など、自分の裁量で時間をコントロールできるというメリットがあります。
ただし自己管理能力が高くなければいけないので、ズボラな人には向いていないかもしれません。
フルコミッションの雇用形態
フルコミッションの雇用形態は、正社員やアルバイトと異なり、業務委託契約が基本になります。
そして歩合制とは異なる「完全」歩合制のため、もちろん基本給はありません。
フルコミッションは完全歩合制なので、成果に応じて給与額が決まるのです。
このように、フルコミッションセールスの雇用形態は「労働者」ではないため、自己裁量に任される部分が多い(=自由が多い)というメリットはありますが、会社員に与えられる有給や福利厚生などの概念も無い為、そのあたりは不自由に感じるかもしれません。
誰かに雇用されるという概念ではないので、どちらかといえば経営者に近くて、制度会計や管理会計にも精通していなければいけません。
これらが理解できないと、会計がごちゃごちゃになってしまうので、キャッシュフローも見えづらくなってしまいます。
なのでフルコミッションセールスとして働きたい場合には、まず会計知識を覚えるというのは最低限必要でしょう。
完全歩合制や完全出来高制との違い
フルコミッションは「完全歩合制」という言葉ですが、似た言葉には「完全出来高制」という言葉もあります。
この2つはどちらも同じような意味なのですが、「歩合制」や「出来高制」とは異なるので注意が必要です。
そもそも歩合制とは、個々の契約や売上げなどの成績に応じて支給される給与システムを指していて、出来高制は作業高に応じて、その人の能力に対して支給される給与システムのことをいいます。
このような細かな違いはありますが、それはニュアンスの違いなので、結局意味するところは同じです。
注意したいのは「完全」が付くかどうかです。
「完全」と付くことで、全て業務委託になり、保障給(基本給)がなくなります。
その一方、正社員などに適用される歩合制では、「基本給+歩合」が支払われていて、あくまでも給料が保証されています。
この基本給の有無が完全歩合制と歩合制の違いといえるでしょう。
フルコミッションが違法になるケース
さて、ここまで読み進めた人は「フルコミッション」という働き方が理解できたはずですが、ここからは「フルコミッションが違法になるケース」について触れたいと思います。
基本的に、フルコミッションは企業に属さず、業務委託契約を結んで働きます。
つまりフルコミッションでは、企業に雇われた労働者ではなく、事業主(フリーランス)として扱われるのです。
そのため、フルコミッション制の正社員どうして働いたり、アルバイトとして雇用されることは違法行為になります。
その根拠となっているのは「労働基準法第27条」です。
この法律では、出来高払制の保障給について定められており、労働者に関しては一定額の最低額の賃金保障をしなくてはならないとされています。
つまり成果が上がらなければ報酬を得られない完全歩合制は、保障給がないので、一般的な雇用契約では違法行為になってしまうのです。
成果を上げない人には給与を支払わなくて良いというのは、会社や経営者にとって都合の良い仕組みですが、労働者として雇用する限り、労働者保護の観点にも立つ必要があります。
こうした背景から、歩合制では「基本給+インセンティブ」というW報酬のシステムを採用しているのです。
この場合には基本給が設定された労働者として扱われるため、全く問題ないことになります。
正社員として雇用される場合、歩合制であれば問題ないのですが、フルコミッションという形は違法になることを覚えておきましょう。
フルコミッションとは個人事業主
フルコミッションは業務委託のため、個人事業主(=社長)だという認識が必要不可欠です。
個人事業主とは、個人で事業を行っている人のことですが、1人で事業を行うケースだけでなく、家族や従業員などと複数で事業を行う場合も、それが法人でない場合(=屋号)は個人事業主となります。
個人事業主となるには、税務署に「開業届」を提出するのですが、開業届を出すことで、税の申告や納税などを個人事業主として行うことを税務署に知らせられます。
個人事業主の開業に費用は発生せず、また、万が一廃業する際にも税務署に届け出を出すだけで済むなど、手続きの手軽さが特徴です。
ただし個人事業主は、会社を設立していないだけで、立場は事業を行う経営者となります。
個人事業主は全ての管理を自分自身に任され、もちろん仕事も自分で取ってこなくてはいけません。
これらを天秤にかけて、自分にあった働き方を選ぶことが重要でしょう。