私は欧米の小売業の何人もの先達から、「多角化はするもんじゃない」と何度も忠告され、その戒めを肝に銘じてやってきました。
伊藤雅俊は多角化の難しさについて「商売は似ているようで全て違っており、人間は違う仕事をいくつもこなせるほど器用ではない」と語っています。
だからこそ多角化を成功させた鈴木敏文について、「私よりもビジネスセンスがある」と評価しているのです。
経済が成熟して低成長になれば、本業専念、一業専念ということが重要になります。
あっちこっちに手を出していては、経営リソースが分散してしまいます。
経済全体が成長している良い時期であれば問題ありませんが、低成長時代において多角化は正しい戦い方と言えません。
それでは最大効率化できないので、選択と集中を行いましょう!
商売に栄枯盛衰はつきものです。
永久に繁栄する商売などありません。
ビジネスに栄枯盛衰がある理由とは『環境が変化するから』です。
顧客ニーズ、社会情勢、競合他社の動向など、様々な要素が複雑に絡み合いながら、ビジネス環境は常に変化しています。
だからこそ経営者は日々改善(アップデート)することが求められるのです。
商業の魅力は、自由であるということです。
この言葉から、伊藤雅俊は商売を楽しんでいたことが伺えますよね。
商売人は自立しているのですが、自立しているからこそ自由があるのです。
そして自由には責任が伴うので、経営者は社会的責任を意識しましょう!
お客様あっての商売が、厳しいものであることは言うまでもありません。
これはあくまでも個人的な主観ですが、本当に商売は難しいと思います。
しかしその一方で「とても面白い」とも感じています。
スモールビジネスでもいいので、何か一つ自分で商売を始めてみることをおすすめします。
小売業の自由度が高いのは、売る相手が企業である製造業や卸売業と違い、個人のお客様を相手にする商売だからです。
個人向けビジネスのことを「toC」と呼んで、法人向けビジネスのことを「toB」と呼びますよね。
個人向けビジネスは裾野が広い、かつ自由度が高いのですが、その一方でお客様を選べないというデメリットもあります。
法人向けビジネスであれば「取引停止」ということもできますが、個人向けビジネスの場合には、お客様が勝手に入ってくるので、相手を選ぶことができません。
だからこそ常に明るく元気に、誠実な接客が求められるのだと思います。
小売業は人と人との商売ですから、一番大切なのは社員の質です。
伊藤雅俊が社員教育を徹底していたことは有名な話ですよね。
勤務中だけでなく、会社へ通勤する際に「背広を脱いだら肩にかけるのではなく、必ず脇に折りたたんで持つこと」「通勤途中にタバコを吸うことは厳禁」など、たくさんのルールがあったそうです。
これらはすべて『いつもお客様から見られている』という前提に立っているのですが、先ほど解説したように『地域社会と会社は運命共同体』という考えにも基づきます。
小売業者は、その存在を地域社会から認められてこそ、初めて企業経営ができると考えたのでしょう。
商売が軌道に乗ってくると、お客様が来てくださるのが当たり前と思うようになって感謝の気持ちや謙虚さが薄れ、自分の力で成功をつかんだのだという驕りが生まれます。
これは当たり前の現象なのですが、だからと言って良いはずありません。
いつでも創業当時の気持ち(初心)を忘れずに、謙虚な姿勢で商売しましょう!
自分の力を過信し、傲慢さに気づかなくなった時が危機の始まりです。
「ビジネスが「順風満帆だ!」と感じた時ほど危険」と言いますよね。
これは数多くの経営者が口を揃えているのですが、独立・起業を目指す人はこの言葉を肝に銘じておきましょう!
私はP・F・ドラッカー先生の知遇を得て、先生が歴史と社会と企業の素晴らしい観察者であることを知りました。
ピーター・ファーディナンド・ドラッカーとは、有名なオーストラリア人の経営学者です。
ドラッカーの考え方は経営者が学ぶべき知識だと思いますが、たとえば有名な言葉には「企業の本質とは顧客を創造することである」というものがあります。
他にも「唯一絶対の指標となるものは人口動態である」など、数多くの名言をたくさん残しています。
ドラッカーの経営理論を知りたい人は下の記事をご覧ください。