ビジネスパーソンであれば「コーチング」という言葉を一度ぐらいは聞いたことがあるはずです。
しかしそのやり方を教わる機会は少ないので、気にはなるけど、なんとなく流しているはずです。
そこで今回は、ビジネスに使える「コーチング」についてお伝えしたいと思います。
コーチングは管理職にとって必須と言えるスキルなので、きちんと見つけておきましょう。
目次
コーチングとは何か?
プロスポーツ選手でいえば、物凄い偉業を成し遂げた名選手だったとしても、コーチや監督として成功するケースは少ないと思います。
つまりプレーヤーとして実績を残すことと、マネージャーとしてチームを牽引する事は、全く違うスキルが求められるのです。
例えば「鬼コーチ」と呼ばれる人がいますが、厳しい人の元で指導されればチームが強くなるという方程式もありません。
ということは、チームが結果を出すためには何らかのロジックやノウハウがあるということになります。
それこそがコーチングなのです。
コーチングの実態とは?
コーチングとは一体何なのでしょうか?
コーチングを一言で表すと「個々人の能力を引き出し、その人の成長を後押ししながら、自発的に行動するように促すコミュニケーションスキル」となります。
ここで言う「個々人」とは、部下や社員だけでなく、家族、友人、恋人、チームメイトなど幅広い相手を指しています。
ということは、決してビジネスコーチングに限った話ではなく、日常生活全般に使える知識だと言えます。
なぜかと言えばコーチングにおいては「指導」という概念はなく、あくまでもコーチとその相手は対等の立場で物事を考えます。
コーチングという言葉が「指導する」という意味合いなので勘違いされがちですが、決してどちらが上とか下という話にはならないのです。
あくまでも相手の可能性を最大限引き出すのがコーチングの役割です。
コーチングを理解するためには、まずこのような考え方が必要だと思います。
コーチングを学ぼう!
コーチングにおいて重要なことは、対象者である相手が「自発的に前進する」ということです。
例えば、部下が「売上ノルマを達成する!」という目標を自分で掲げた場合、それ自体を前進とみなすのです。
売上ノルマは会社から与えられたものですが、それを達成するかしないかは、ある意味で本人の自由だと思います。
もちろんノルマを達成しなければ仕事をしていないことになりますが、それでも会社員は給料が貰えます。
なので人によっては「営業ノルマなんて達成する必要ない」と考える人もいるはずです。
そのような、ある意味で楽な選択肢がある中で、あえて「売上ノルマを達成する!」という厳しい選択肢を自分に課すことは前進と捉えられるのです。
そのような前進をコーチが強制するのではなく、サポートすることが重要なのです。
なぜかと言うと「人間は自分から答えを求める時だけ前進できる」からです。
外部からの圧力で意思決定することは、決して自ら前進したとは言えないので、「与えられた答え」ではなく「自分の答え」を探すサポートが大切なのです。
なので、コーチは相手の話を聞いて、それを受け入れ、質問することが重要だと言われています。
このステップを踏むことで、相手の潜在能力を徐々に引き出していくのです。
自分で意思決定させることが大切
これはよくある話ですか、優れた上司ほど「部下がやるより自分がやった方が仕事が早い」と言いますよね。
確かにそれはその通りかもしれません。
しかし「人材育成」という考え方に立った場合、そのやり方は決して最善策と言えないのです。
とはいえ「部下のアイデアが、経験豊富な上司より良いわけがない」という理論も一理あります。
そんな時にはどうしたら良いのでしょうか?
この時、コーチングの考え方では「部下に任せてみる」ということになります。
部下が自分で考えたアイデアなのであれば、たとえそれが未熟だったとしても、圧倒的な成長に繋がる可能性があるからです。
たとえば優れた上司が考えたアイデアを推進した場合、それに部下はついていくだけですよね。
その時の部下の気持ちは「私はついていけばいい…」という考えになるので、成長率が著しく下がってしまうのです。
しかし部下が自分で考えたアイデアなのであれば、たとえそれが未熟だったとしても、部下は自発的に動くので短期間で大きな成長が期待できるのです。
ここでも「自発的」とか「自ら」というキーワードが出てきたので、もう理解できましたよね?
コーチングでは、とにかく自分で意思決定させることが大切なのです。
なぜかと言うと、コーチングには「人間はみんな条件さえ整えば、自分の力を最大限に発揮して、自己実現へと向かう」という大前提があります。
この考え方を理解してないと、いくらコーチングを実施したところで効果が期待できないので注意しましょう。
対等な関係性になろう!
コーチングに対して「部下を操るためのツール」と考えている場合、それは間違いなので改めましょう。
上司と部下という関係だった場合、まずは関係性を改善する必要があるかもしれません。
会社の上司と部下では、ガバナンスという意味で明確な上下関係があると思います。
しかしコーチングをする上では、それをフラットな関係性にしなければいけません。
例えば、よくある上司部下の会話例を見てください。
この時に上司は、「北海道のどこ?」とか「北海道で食べ物美味しいよね」という会話を続けなければいけませんよね。
しかし上司という立場上、勝手にコミュニケーションを終えても問題ないと考えているのです。
なぜかと言うと「部下は逃げない」という前提があるからです。
いくら粗末に扱ったとしても、部下が逃げることはないので、それに対して全く恐怖心を感じていないのです。
しかし実際にそうでしょうか?
物理的に逃げたり退職しなかったとしても、心の中では違うかもしれません。
部下を下に見ている段階で、コーチングの失敗は始まっています。
ビジネスコーチングを実施する場合には、お互い対等な関係性になることが大切なのです。
アメとムチをやめよう
経営者はビジネスを回す仕組みを考えたがります。
確かにそれは重要なのですが、コーチングにおいてはその考え方が邪魔になるはずです。
つまりアメとムチはやめた方が良いということです。
- ××をしなければ罰則がある
- ××をすればインセンティブが貰える
これはまさにアメとムチの典型例だと思います。
このような仕組みは「恐怖心や褒美を与えて人を動かす仕組み」なので、短期的には効果を発揮するはずです。
しかしコーチングは長期的な取り組みなので、短期的に効果を発揮したとしても意味がないのです。
そう考えた場合、アメとムチがコーチングにとって邪魔者でしかないことが理解できますよね。
コーチングのやり方
コーチングを実施する場合、画一的なコーチングをやることはNG行為だと思ってください。
例えば部下が10人いた場合、その10人それぞれに別々のコーチングを施さなければいけないのです。
というのも、部下は話を聞いて欲しいタイミングが人それぞれに違っていて、答えやすい質問や、話しやすい環境すら違うのです。
なので画一的なパッケージでは決して上手くいかないのです。
ビジネスコーチングにおいては「部下がどういうサポートを望んでいるか?」という視点が必要なのです。
コーチングのメカニズムとは?
コーチングを実施するにあたっては、そのメカニズムを理解しなければいけません。
先程コーチングとは「個々人の能力を引き出し、その人の成長を後押ししながら、自発的に行動するように促すコミュニケーションスキル」と伝えしました。
この前提になっているのは「その答えが個々人の中にある」という考え方です。
つまり人はみんな、自分なりの答えを持っているので、サポートすればそれが引き出されるという考え方です。
しかしその答えは、個々人の潜在意識の中にあるから問題になります。
つまり自分自身が答えに気づいていないため、「答えを出せ!」とか「もっと考えろ!」と言われても出てこないのです。
そんな時に効果的なやり方が「質問話法」なのです。
コーチが質問するということは「相手がその答えを探すサポートをする」ことに当たります。
コーチから色々質問されることで、それが刺激となって自らの答えにたどり着けるのです。
そしてその答えにたどり着いた時、達成目標をコーチに宣言してもらいます。
つまり対外的にコミットメントするのです。
アウトプットするのは誰でも怖いですよね。
宣言したことを達成できなければ、それは失敗を意味するからです。
周りから「嘘つき」呼ばわりされる可能性もあるので、極力人間は周囲に対してコミットメントするのを避ける傾向があります。
しかしそれでは前進できないので、成功した後の姿をイメージさせて、そこに向かって邁進するようにサポートするのです。
つまり「失敗するリスク」よりも「成功するチャンス」の方を重視するのです。
質問して、聞いて、受け入れる
「コーチングの極意は何なのか?」と聞かれた場合、その答えは「質問して、聞いて、受け入れる」ことになります。
ビジネスコーチングでは、上司の意見を採用してもらうことではなく、自分の考えを言ってもらう必要があるのです。
相手を追い詰めて、行動を強制するようなことはNG行為です。
先ほどから何度もお伝えしている通り、コーチングの大前提になっているのは「答えは相手の中にある」ということです。
なので先に答えを言ったり、導く必要などないのです。
そう考えた場合、上司の役割は「フィルター」みたいな感じになるはずです。
部下は色々な考えを上司に伝えますが、それを上司がフィルターの役割になってふるいにかけるのです。
すると無駄な砂利が落ちて行って、必要な小石だけが残ると思います。
この「小石」こそが部下の持っている答えなのです。
そして見つかった「小石」を受け入れてコーチングは終了します。
あくまでも「質問して、聞いて、受け入れる」という一連の流れはセットなのです。
日本の連合艦隊司令長官である山本五十六大将は下のような名言を残しています。
話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。
これこそまさにコーチングを要約した言葉だと思います。
相手のことを承認する
部下は誰しも「自分のことを認めて欲しい」と思っています。
これは承認欲求と呼ばれるもので、人間であれば誰しもが持っている感情です。
しかし、コーチングにおいての承認とは「ただ褒めれば良い」というものではありません。
コーチングの褒めるとは、部下の「成長」や「変化」を言語化して伝えることなのです。
例えば以下のようなイメージです。
このような言葉を聞いた部下は勇気づけられ、自分の存在を認めてくれたのだと認識します。
しかし何でもかんでも褒めれば良いというものではありません。
時には否定することも必要だと思います。
これは当人の仕事を否定する言葉ですが、よくよく見てもらえば分かる通り、仕事内容を承認しているのです。
たとえ満足いく結果でなくても、頑張って仕事したことは承認しているのです。
それだけでなく、日常会話でも承認はできるのです。
このような会話であれば日常的に使えますが、これも部下に対する承認の一例です。
たとえ否定の言葉だったり、日常会話だったとしても承認はできるので、積極的に使っていきましょう。
ビジネスコーチングの注意点
ビジネスコーチングには、いくつか注意点があるのでここで確認しておきましょう。
まず最初に注意しておくべきことは、相手の話を遮らないということです。
コーチングにおいて上司は「質問して、聞いて、受け入れる」ことをやりますが、話を聞かずに遮ることはNG行為とされています。
なぜかと言うと、相手を受け入れないサインになってしまうからです。
先回りして結論を言ってしまうことも同様なので、これは注意しましょう。
そして、答えを出すように迫ることもNG行為とされています。
相手の勘が鈍くて、なかなか答えが出てこない場合、「早く言えよ」とイライラしてしまうかもしれません。
しかし、それでも辛抱強く待つことが大切なのです。
コーチングにおいて重要なのは「自ら答えを導き出すこと」なので、こちらからけしかけたり、導いたりしてはいけないのです。
まとめ
コーチングは全てのビジネスパーソンが理解しておくべき知識だと思います。
なぜかと言うと、コーチングができなければ出世できないからです。
当然ですが、部長になることも、社長になることもできません。
なので早いうちからコーチングについて学んでおきましょう。