賄賂(わいろ)は、度々ニュースで目にしますよね。
公務員(みなし公務員含む)や政治家に対して渡される物品や金銭などを言いますが、それを渡した人と、受け取った人の人生を狂わせ、破滅させる可能性がある非常に危険なモノだと思います。
そこで今回は、ビジネスパーソンであれば押さえておきたい、賄賂の定義や意味、罪について解説したいと思います。
賄賂とは?その意味と定義
まず賄賂の定義について解説しておきたいと思います。
賄賂とは、職務に関した不法な報酬のことを指します。
具体的には「贈賄罪の手段」とされるもの全てが当てはまりますが、多くの場合、賄賂として渡されるのは金銭や物品のはずです。
つまり、自分が有利に取り計らわれるような目的をもって受け渡しされるものは、賄賂とみなされることがあるのです。
そのため、賄賂とされるものは必ずしも経済上の価値を持っている必要はありません。
例えば、一定の地位や名誉を相手に与えること、異性をあてがうこと、遊興飲食を提供することも賄賂としてみなされます。
その他、借金の減額なども相手にとってメリットがあるため、賄賂としてサービス提供したとみなされます。
反対に、社交儀礼の範囲内とみなされる贈り物等は賄賂としてみなされません。
例えば、お中元やお歳暮、お見舞いや餞別などが当てはまります。
しかし、これらの贈り物が相応とされる価格をはるかに超えているケースや、少額であったとしても職務に対して対価性が明らかに認められるものは賄賂性があるとみなされる可能性があります。
この規制に引っかかる人は、いわゆる公務員や政治家など、公務を行う人のみです。
公務執行者は、公務を公正に実施しなければ、信頼喪失につながってしまうことが理由とされているので、それ以外の民間事業者にとって賄賂は無縁の存在だと思います。
漢字の意味を理解しよう!
賄賂という言葉に含まれる「賄」という時は、「貝」という文字と「有」という文字に分けることができます。
漢字の「貝」には財貨の意味があるので、お金のことを表す場合には、この貝という文字がよく使われています。
例えば財という文字にも貨という文字にも貝が含まれていますよね。
また、有という文字には、「月」という文字が含まれています。これは意味としてはにくづきを表し、人に勧めることを指しています。
つまり「賄」という文字だけで、財貨などの金銭を相手に提供するという意味を持つのです。
そして「賄い」には「まかない」と「まいない」という2つの読み方があります。
飲食店でよく聞く「まかない」では、労働の対価として飲食を提供してくれることを指すことが多いですが、「まいない」と読んでしまうと、これ自体で賄賂を指すことになります。
また、同じく「まいない」と読む文字に「賂」がありますので、2つの漢字ともに同じ意味を表しています。
賄賂(わいろ)の語源
賄賂の語源は、もともと「神様に対する貢物」でした。
古代日本では、最高権力者とされるのが神と交信ができる「シャーマン」と呼ばれる霊能力者で、賄賂として祭壇に穀物などを捧げ祈ることで、政策等を決めていました。
しかし天皇制ができると、天皇が神となり政策を決定するようになりました。
この神が上(かみ)に転じて、お上である幕府など公務を行う人に渡すものを賄賂と言うようになりました。
「袖の下」と言われる理由
テレビの時代劇などで「袖の下を贈る」という言葉を聞いたことがあると思います。
これは金品の渡し方が由来とされているので、つまり賄賂を意味する隠語なのです。
袖の下は着物の袖の下、つまりは袂(たもと)のことを示し、その袂に隠しながら賄賂を贈る様子から、賄賂のこと自体を「袖の下」と表すようになりました。
近世では、浮世草子にもその表現があります。
「茶など買うて飲めやというて、袖の下から二匁も遣る」は、金品の授受が他者に気づかれないように渡している様子を表しています。
ちなみに、民間企業でも袖の下を贈るという言葉を使うことがあります。
例えば民営病院に勤める医師に対して、なんらかの金品を贈る場合などです。
日本国内において、医師は常に「患者にとって医療上最良とされる治療」を行うことが前提であり、原則として治療費などを含めた金銭により治療法を変えることはありません。
しかし、患者やその家族が金品を贈る習慣がまだ残っているのです。
1つ目は治療開始前に「どうぞよろしく」という意味で渡す場合、2つ目は治療後に「ありがとうございます」という意味で渡す場合です。
医師の間では「ゲシュンク」という隠語で、この金品の授受を示すことがあります。
その言葉の由来が医者らしいのですが、ドイツ語の「geschenkt」が語源になっており、その言葉の意味は「贈り物」だそうです。
賄賂は違法なの?
賄賂と似たような意味を持つ言葉に「リベート」や「キックバック」があります。
リベートは「rebate」つまり値引きのことを示し、その他にも手数料や世話料、謝礼金などの意味を持ちますが、「賄賂」という意味も持っています。
小売業や営業職では、同じ意味を持つ言葉としてキックバックが使われています。
しかし、民間の企業同士の契約であれば、過酷なビジネス環境での生き残りをかけるためにこのリベートを用いること自体が禁止されていません。
その一方で、リベートの受け取りが違法とされる職業があります。
それは、政治家や公務員など公僕と呼ばれる人たちです。
政治家や公務員、みなし公務員(準公務員)と言われる「公の職業を担う人」にリベートを渡すことは賄賂罪(ぞうわいざい)とされています。
賄賂を渡すことにより、公務の公正性が失われる、公務の不可侵性が侵される、公務の不可買収性が担保されていないされるからです。
賄賂を贈ることにより「税金が個人の私欲ために使われる」という懸念は、公平性が失われるということに繋がりかねません。
また賄賂がバレると、渡した側も渡された側も罪に問われます。
渡した側は贈賄罪、受け取った側は収賄罪(しゅうわいざい)と呼ばれています。
しかし民間企業が契約をもうらために、同じ民間企業の重役を接待した場合には賄賂罪に問われません。
その場合には、単なる販売促進費(マーケティングコスト)と考えられているのです。
しかし役所の人を相手に接待をした場合は、賄賂罪に問われるので注意しましょう。
贈賄罪と収賄罪を正しく知ろう!
まず、贈賄罪は誰が主体となっても起こりえる罪です。
賄賂の供与や申し込み、あるいは公務員と約束することで贈賄罪が成立します。
実際には賄賂を渡していなくても、約束だけで成立するので注意しましょう。
収賄罪は、公務員などがその職務に関する賄賂を収受、あるいは要求や約束を取り付けることですが、こちらも実際に賄賂を渡されていなくても、約束をした時点で成立します。
また、その賄賂により不正行為が行われていなくても贈賄罪とされ、不正行為が行われていた場合は、加重収賄罪としてより罪の重さが重くなります。
公務員の職務は、一般的に職務権限があるのであれば贈賄罪が成立するため、実際にその仕事を担当している必要はありません。
収賄罪に当てはまるのは、公務員自身が賄賂を受け取った場合だけではなく、公務員の関連企業などに対して賄賂を受け取り有利なように取り計らうよう請託をしていることが示されている場合も収賄罪に当てはまります。
この2つの罪は、どちらも賄賂罪としてまとめられますが、時効が異なります。
贈賄罪であれば3年、収賄罪であれば5年が時効です。
しかし、加重収賄罪に問われている場合は時効の成立まで10年を要します。
そのため、贈賄罪の時効が成立後は供述が得やすいため、訴訟が起こるケースがあるのです。
まとめ
ここまで賄賂について解説してきました。
ビジネスの現場では、
- リベート
- キックバック
- マージン
など、賄賂に似た言葉を多用しますが、知識が曖昧なまま進めると、違法行為になりかねません。
そうなってしまうと取り返しがつかないので、事前に理解しておきましょう。