
コミッション制という制度は一般的に導入されている仕組みです。特に営業職で導入される仕組みですが、フルコミッションとの違いを理解していないケースも多いです。
そこで今回は、コミッション制にフォーカスして解説をしていきたいと思います。
コミッション制とは
コミッション制は給与体系の一つで歩合制のことを指します。歩合制は主に営業職に適用されることが多く、毎月支払われる固定給と、売上成績に応じてインセンティブとして出る歩合報酬を足した金額が給与になる制度です。出来高制といわれることもありますが、固定給が発生するので、雇用形態は正社員になります。
一般の会社員は多くの場合、毎月一定の給料が支給されるのに対して、コミッション制の社員は固定給(各種手当も含まれる)の部分以外は実績をあげないと報酬が出ません。同じ会社で両方の給与体系がある場合、通常は固定給与部分だけで見ると一般職より給与自体が低くなります。
しかし、歩合報酬の金額によっては会社で最も稼ぐ社員になることも可能です。この部分がインセンティブ制度の良いところで、実績をあげればあげるほど収入が増える仕組みになります。それによって、社員が「もっと頑張ろう」とモチベーション向上するケースもあるので、使い方によっては営業の起爆剤にもなり得ます。
歩合という言葉が示すように、歩合報酬は売上実績の何%、粗利実績の何%というような割合で設定されます。コミッション制とよく混同されるフィー制は最初に達成する成果を決めて、それを達成するために必要な金額という形で報酬を決めます。
コミッション制は実績に対する割合報酬、フィー制は実績に対する予算報酬と覚えておきましょう。
コミッション制の問題点
コミッション制は社員のモチベーションを向上させる効果がありますが、問題点もあります。
まず、成績の上下によって報酬も上下するため、月々の収入が安定しなくなります。正社員でありながら月々の収入が不安定というのは家計にも影響がでるので、特に家族を養っている場合は大きな問題になります。
次に、同じコミッション制の社員同士がライバルになってしまい、顧客の奪い合いが生じたり、社内の人間関係がこじれる可能性があります。
またトップセールスマンと最下位の人間の間にかなりの賃金格差が生じるため、成績の振るわない社員はモチベーション向上どころか、やる気さえ失う場合もありえます。
>>営業マンが副業で稼ぐなら|リファラル営業サイトside bizz(サイドビズ)
労働時間についても、コミッション制の場合、働くほど報酬が多くなる可能性が高くなるので長時間残業しがちになります。労働時間以外にも効率のよいやり方を学習するためにセミナーに参加したり、帰宅してから自己学習を行なう人も多く、労働時間外も仕事のために費やす時間が多くなります。これによって過労問題などが生じるリスクもあります。
最後に、営業職はコミッション制で、総務や人事などの一般職は通常の給与体系といったように両方の給与体系がある場合、通常の給与体系の人間は頑張ってよい仕事をしても、即座に給料に反映されることはありません。
ボーナスの査定がよくなったり、役職に就くのが速くなったり、長期的には仕事が評価されますが、ダイレクトに反映されるコミッション制に比べて不満が出る場合もあります。
関連記事:フルコミッションの雇用形態は違法?完全歩合制との違いとは?
コミッション制とフルコミッション制の違い
歩合制の中には、インセンティブとしての歩合ではなく、実績を完全に報酬とリンクするフルコミッション(フルコミ)という働き方があります。
完全歩合制ともいわれ、報酬は全て実績に応じて支払われます。固定給も存在しないので、実績がない月は収入がゼロになります。そのため、雇用関係にある正社員にこの制度は使えません。
なぜなら、労働基準法で「雇用者は労働者の労働時間に応じて、国の定めた最低賃金を支払わなければならない」と定められているため、雇用関係を結んでいる正社員を完全歩合制で働かせることはできないからです。
完全歩合制で働けるのは、その企業と業務委託契約を結んだ個人事業主だけです。仮に自社の従業員がフルコミッションで働きたいと言っても雇用関係がある状態で完全歩合制にすることはできません。
なぜなら、その雇用している企業は社員に最低賃金を支払わなければならず、支払わないことは違法行為になるからです。
フルコミッション制はコミッション制より実績報酬がはるかに高くなります。やはり営業職に多い働き方で、不動産営業や保険代理店、タクシードライバーなどに多いといわれています。
フルコミッション制は業務委託契約なので、契約を結んだ後は自分の好きなやり方で仕事をしてかまいませんが、契約によっては一定期間ごとの報告義務を要求されることもあります。しかし、あくまでも個人事業主なので基本的には自由に仕事を進めることができます。
関連記事:完全歩合制の営業マンは違法!?正社員とフルコミッションの違い
関連記事:完全出来高制は違法?正社員とフルコミッションの雇用形態
フルコミッションはきつい?
フルコミッションは営業職に多いとお伝えしました。セールスが報酬に直結するフルコミッションでは、成果が出れば高額報酬を受け取れますが、成果が出なければどれだけ働いたとしても報酬が0円というきびしい世界です。
フルコミッションは、人によって「セールスの地獄」と呼ばれるくらいきつい仕事と言えます。まず商品知識がなければ営業できませんから、自分が得意としている商品を扱っている企業を調査して、企業に対して業務委託契約を打診する必要があります。そもそも、フルコミッションの仕事を発注してくれる企業がいなければ仕事にならないからです。
自分の実力をアピールするためには、過去にそれなりのセールス実績が必要です。実績がないと取り合ってくれない企業も多く、この時点でしんどい仕事だとわかります。
また、条件面の交渉も非常にハードです。1件あたりの報酬額が1万円違うだけでも、10件では10万円、100件では100万円の収入差になっていきます。
運良くフルコミッションの仕事を受けることができても、成果がでるまで決して安心できません。成果が出なければ報酬が出ないフルコミッションの仕事では「これまでの苦労が全て無駄になるのでは」という不安感に耐えながらセールスを行い、自分の仕事の管理を行い、経営者として経理などの仕事もこなすわけですから、成果が出るまでは辛いでは済まない苦しさがあります。
成功すれば高い報酬が期待できますが、失敗すれば報酬なしの、ハイリスク・ハイリターンの働き方であることを理解している人だけができる仕事といえます。
関連記事:完全出来高制の業務委託はフルコミッションセールスと違う?
関連記事:フルコミッションの意味は理解できてる?意外と知らないフルコミの実態
フルコミッションは違法
フルコミは完全歩合制または完全出来高制といわれ、成果がでなければ報酬が出ない制度です。そのため、賃金の最低保証を定めている労働基準法27条に違反しているのではないかという人もいます。
確かに雇用関係のある従業員を完全歩合制で働かせる企業は、労働基準法27条に違反しています。しかし、フルコミッションの仕事を受ける人が個人事業主であり、業務委託契約を結んでいるのであれば違法ではありません。
なぜなら労働基準法27条が対象にしているのは企業と雇用関係にある従業員で、業務委託契約を結んだ個人事業主は対象ではないからです。
先に述べたようにきつい仕事ではありますが、会社に雇われている営業とは比較にならない多額の報酬を得られる完全歩合制を選択して契約を結ぶのは、個人の自由です。
また、業務委託契約であれば、企業は委託先である個人事業主に契約範囲を超えて干渉することはできません。フルコミッションの仕事では自分の好きなやり方で仕事ができるといったのはそのためです。
企業にとっても成功報酬型のフルコミッションは都合のよい契約といえます。なぜなら労務管理をする必要がなく、契約にしたがって成果があれば報酬をだし、成果がなければ報酬を払わなくて良いので、従業員をコミッション制で働かせるより企業の負担は少ないかもしれません。
関連記事:フルコミッションは違法なの?押さえておきたいフルコミの雇用形態
関連記事:企業がフルコミッションを活用する本当の理由|雇用形態や実態を解説