
営業部がある会社では、セールス部門をアウトソーシングしたり、代理店展開するケースもあると思います。
そのように営業活動をアウトソーシングしていると、「直販の営業マンは必要なのか?」という疑問をもつことがあると思います。
果たして直販部隊は本当に必要なのでしょうか?
そこで今回は、直販営業と代理店制度を対比しながら、そのメリット&デメリットについて解説していきたいと思います。
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直販(チョクハン)の意味とは?
直販(チョクハン)とは「直販営業」を略した言葉になります。
その意味とは、企業の営業パーソンと消費者が、商品サービスの取引を直接することを言います。
直販では、
- 卸業者
- 販売店
- 代理店
などを挟まないので、中間マージンを省いて商品サービスの価格を下げたり、顧客のストレスを軽減できるというメリットがあります。
同じものを安く手に入れられることができるので、消費者にとっては非常にメリットの大きい仕組みだと言えるでしょう。
また、直販営業をすることは、企業サイドにも大きなメリットがあります。
そのメリットとは、消費者と直接やり取りできるので、営業ノウハウを自社に蓄積できることです。
また消費者のニーズを直接吸い上げることができるので、効果的なアフターサービスや新商品開発のアイデアにつなげられるというメリットもあります。
つまり、「エンドユーザーと直接繋がることができる」ということが大きなメリットなのです。
しかし、もちろんデメリットも存在します。
営業マンの雇用は直接採用コストに直結するため、その分の負担(人件費)は覚悟しなければなりません。
そしてノウハウの蓄積も、やはりすぐにとはいかないので、ある程度の時間がかかることを覚悟しておく必要があります。
また、事業を展開するエリアが限定されてしまうため、全国展開など大きな規模でビジネス展開したい場合、事業スピードの遅さが足を引っ張ってしまう可能性があります。
こうしたメリット&デメリットを把握した上で、直販営業を行っていかなければなりません。
直販営業をする目的
直販では、一般的な「メーカー → 卸売 → 小売 → 消費者」という商品サービスの流れから、中間業者を取り除いてメーカーと消費者が直接やり取りを行います。
このような仕組みの為、消費者はお得な価格で商品を手に入れることができ、メーカーは大きな利益を手に入れることができるのです。
また、直販スタイルでは営業マンをメーカーが直接雇用するので、トップ営業マンの営業ノウハウを蓄積し、他の営業マンのパフォーマンスに反映させることもできます。
つまり、自社の営業力をアップさせることも目的の1つなのです。
とはいえトップセールスの営業手法を浸透させようとしても、従来の個人裁量に重きを置いた営業手法ではなかなか上手くいきません。
営業スキルの伝達には社内システム作りが不可欠であり、そのためのコストが発生することも念頭に置いておきましょう。
つまり、CRMやSFAなどの営業支援ツールを導入する必要があると思います。
このあたりについて詳しく知りたい人は下の記事をご覧ください。
また、メーカーから直接購入できるということは、消費者に安心感を与えます。
メーカーが自らおすすめする最新モデルを手に入れることができたり、悪質な販売業者に惑わされる心配がないからです。
購入後の手厚いサポートを魅力に感じる消費者も多く、こうした取り組みが顧客の囲い込みに繋がるケースもたくさんあるのです。
直販と代理店の違い
直販営業は、企業と消費者が直接やり取りを行うことだとお伝えしました。
これに対して販売代理店とは、企業(メーカー)に代わって製品サービスを販売してくれる外部パートナーのことを言います。
代理店の種類はたくさんありますが、代表的なものでは広告代理店、旅行代理店、保険代理店などがあります。
直販営業では自社製品しか売ることができませんが、販売代理店なのであれば、様々な企業の商材を並行して扱うことができます。
これこそが代理店の価値になります。
例えば、新卒採用するための「求人サイト」はたくさんあると思います。
有名なところではリクナビ、マイナビ、dodaなどがありますが、クライアントとしては色々な媒体を横並びで検討したいところですよね。
しかしリクルート社の直販営業であれば、提案できる媒体はリクナビに限られます。
これでは「リクナビ、マイナビ、dodaなどを色々な求人サイトを比較検討したい!」という顧客ニーズを満たすことができません。
そのようなお客様に対して、中立公平な立場で提案できるのが販売代理店なのです。
販売代理店では色々な商品を取り扱っているので、消費者は企業の垣根を越えて自分に一番合った商品を選ぶことができます。

製品サービスへの愛情が薄い
直販営業は、自社が開発した製品サービスを販売しています。
一方の販売代理店は、自分達で商品サービスを開発している訳ではありません。
つまり、外部企業から販売委託された商材を販売しているにすぎないのです。
販売代理店が商材を売る理由は「儲かる」からです。
つまり、もし儲からないのであれば、販売代理店は基本的に売ってくれないということです。
そのような観点からすると、直販営業と比較して、販売代理店は製品サービスに対して「そこまで愛情を持っていない」ことが理解できます。
それでは、「代理店マージンを高くすればもっと売ってくれるのか?」と言うと、そういうわけでもないのです。
この販売マージンは高ければ高いほど良いと安易に考えてしまいがちですが、高く設定し過ぎるとメーカー側の儲けが減ってしまい、下手をすると経営が立ち行かなくなってしまいます。
しかし低く設定し過ぎると、代理店は「この商品を売ってもメリットがない…」と判断して、積極的に販売してくれません。
このバランス感覚を上手く身に付けることが、代理店展開する時のポイントになります。
販売代理店を活用するメリット
販売代理店を活用すれば色々なメリットを享受することができます。
まず第一に、コストメリットが挙げられます。
つまり、自社の営業部隊(直販営業)を用意しなくても良いことです。
やはり自前の営業チームを準備すると、人件費や教育費に多額のコストがかかってしまいます。
その点、代理店を利用すれば、全て自社で担うよりも安価に販路拡大ができるのです。
また、代理店には固定費(給料など)を支払う必要がありません。
もちろん販売実績に応じてインセンティブを支払いますが、もし売れなければその必要もありません。
つまりフルコミッションという契約形態が一般的なのです。
このような契約形態は、資金力の乏しい中小ベンチャー企業にとっては、とても助かる仕組みだと思います。
そして、これが代理店展開の醍醐味だと言えますが、「販路を一気に拡大できる」というのも忘れてはいけません。
ビジネスはスピードが命です。
時間が経てば似たような商品サービスが登場して、自社の持つ商品価値が下がってしまう恐れがあります。
しかし販売代理店を活用すれば、一気に流通網(販売チャネル)の拡大が期待できます。
ある意味では「他力本願」「人の褌で相撲を取る」みたいなイメージかもしれませんが、このようなやり方で大成功した企業はたくさんあります。
他にもマーケティングが苦手な事業者にとっては、大きなメリットがあります。
研究色の強いメーカーでは、セールスやマーケティングが弱い傾向にあります。
そのような苦手な部分を頑張っても、競合他社は強いのでなかなか良い結果には結びつきません。
そんな時には、外部パートナーに販売を任せることで「自分達は製品開発に集中できる」というメリットもあるのです。
代理店を上手く利用すれば、コストをかけずに全国各地、ときには世界規模で販路を広げることができます。
もちろん代理店制度にもデメリットはあるため、メリットを活かし切るには、代理店の種類を知った上で自社に合った営業形態を考える必要があります。
代理店の種類について知りたい場合には、下の記事をご覧ください。
直販と代理店はバランスが重要
代理店を活用するメリットに触れましたが、だからと言って直販を一切行わず代理店戦略にばかり重きを置くのはとても危険なので注意が必要です。
直販と販売代理店はそれぞれにメリット&デメリットが存在するため、企業経営を安定させるためにはバランスを取ることが重要だと思います。
直販は消費者と直接やり取りができ、販売価格も下げることができますが、直販のみの販売施策では固定費がかかりすぎます。
先ほども解説した通り、自前の営業部隊を用意する必要があるからです。
また、販路の形成にも時間がかかるため、ビジネス展開の鈍化(スピードの遅れ)が心配されます。
かと言って販売代理店のみに営業を任せるのは、リスクが高すぎます。
代理店に依存する販売施策になってしまうと、既存顧客が全て代理店にとられてしまうからです。
これが何を意味するのかと言うと、既存顧客にアプローチするためには「いちいち代理店にお伺いを立てなければいけない」ので、代理店側に主導権を握られてしまうのです。
これが行き過ぎると、代理店の思惑で自社(メーカー)の売り上げが左右され、場合によっては売り上げが激減してしまうリスクを常に抱えている状態になります。
つまり、顧客情報を握られることでメーカーの主体性が失われてしまい、最悪のケースでは代理店の下請けのような「立場逆転の現象」が起こるのです。
例えば以下のようなパターンに該当します。
メーカー)今月は当社製品をどれぐらい売っていただけますか?
代理店)ウチも色々と売らなきゃいけないものがあるので、今月はそんなに注力しないと思いますよ。
メーカー)そうなんですか…、でも御社の営業力に期待しているので、前年比20%アップで頑張っていただけないでしょうか?実は既存顧客に提案できる新製品も用意しているんです。
代理店)う~ん…、できなくはないですけど、今の販売マージンじゃ厳しいかもしれませんね。
メーカー)代理店マージンは精一杯お支払いしているので、これ以上は当社としても厳しいところです…
代理店)そうですか…、当社も利益を取っていかないといけないので、やっぱり代理店マージンがたくさん稼げる商材を売りたくなっちゃいますよね~。
メーカー)いや~、そこをなんとかお願い致します。
代理店)う~ん、実は御社の競合他社のA社からも販売依頼が来てるんですよね~。しかも、御社が提示している代理店マージンよりも高いんですよ。
メーカー)えっ、本当ですか!?かしこまりました。それでは一度社に戻って早急に検討させていただきます。
代理店)ぜひ良い回答を期待していますよ。
上記のようなやりとりを見ていただければ理解できると思いますが、メーカーが開発に専念してしまうと、どうしてもセールス担当の代理店が強くなってしまうのです。
しかもこのパターンは最悪のケースで、もしこの代理店がA社製品の販売に切り替えてしまった場合、これまで開拓してきた既存顧客の契約をすべてA社にひっくり返される可能性があります。
そうすると、この代理店経由の売り上げが最悪のケースではゼロになりかねません。
もしこの代理店経由の売上が「会社の80%を占めている…」みたいな状態であれば、行き着く先は倒産だと思います。
コストを抑えながら販路拡大ができる「魅力的な代理店施策」ですが、実は諸刃の剣の側面があることを良く理解しておくべきです。
メーカーとしての主体性を失わないためには、直販と代理店のバランスを上手く取る必要があります。
直販営業と代理店営業のメリット&デメリットをきちんと把握した上で、経営リスクを抑えながら上手に使い分けていきましょう。