
クロスセル戦略は、どの企業でも推進したい営業戦略だと思います。
売上アップに繋がる施策なので当たり前ですよね。
そこで今回は、クロスセル営業にフォーカスして、アップセルとの違いまで解説していきたいと思います。
目次
クロスセル戦略とは?
クロスセル戦略は顧客が購入する製品サービスに関連するものを、一緒に売って顧客単価アップを目指すセールス手法になります。
「クロスセル」とか「クロスセールス」と呼ばれますが、どちらも同じ意味になります。
クロスセル戦略を立てる場合には、まずメイン商品に関連する商材を見つけなければいけません。
例えば、お客様が自転車を買ったと仮定します。
自転車にはカゴを付けたいという人が一定数いるので、このケースではカゴがクロスセル商材になります。
他にも、自転車用の鍵もクロスセル商材になります。
自転車が盗まれないように鍵をかける人は多いので、クロスセル商材として活用することができます。
他にも「乗りやすいサドルに変えたい」というアップセルニーズも想定できます。
クロスセル戦略を成功させるためには、あらかじめ顧客ニーズを想定した商材仕入れが大切なのです。
クロスセルは購買意欲を刺激する
現代社会はインターネット通販が当たり前ですが、クロスセル戦略はインターネット上でもよく使われています。
代表例は「その商品を見た人は、このような商品も見ています」というレコメンド機能です。
商品を買う人の属性を考えながら表示することで、クロスセルやアップセルになって売り上げ増加に繋がる可能性があるのです。
このやり方はインターネット通販ならではの強みと言えます。
インターネット通販の場合はデータが蓄積されていくので、Aという商品を買ったお客様はBを買う可能性が高い、さらに数ヶ月後にCの商品を買う傾向がある、という予測が立てやすいのです。
するとレコメンド機能が最大限効果を発揮して、消費者の購買意欲を刺激してくれるのです。
本当は買うつもりがなかったのに、ついつい衝動買いしてしまった経験は誰にでもあるはずです。
この時は企業のクロスセル戦略にまんまとハマったことになります。
クロスセル戦略は日常生活にも溢れています。
例えばスーパーでお肉の特売があれば、それに合わせて焼き肉のタレやワイン、ニンニクなどが隣に置いてありますよね。
これもクロスセル戦略の一つと言えます。
クロスセルとアップセルの違い
クロスセルとよく似た言葉に「アップセル」があります。
クロスセルを語る上では欠かせないキーワードなので、ここで解説しておきたいと思います。
クロスセルは関連商材を売ることに対して、アップセルとは上位商材を売るやり方のことを言います。
例えばパソコンであれば、顧客が買おうとしているパソコンよりも”スペックが高いパソコンを売る”ことがアップセルに該当します。
つまり、Corei3搭載パソコンよりも、Corei7搭載のパソコンを売るイメージです。
クロスセルであればキーボードやマウスなどの小物を売りますが、上位互換商材を売ることができれば、大幅な売り上げアップにつながります。
提案するタイミングが重要
クロスセルとアップセルの一番大きな違いは、提案するタイミングです。
クロスセルするタイミングとは、顧客が購入を決めた後になります。
商品が売れるタイミングで、別商材を提案することでついで買いが発生します。
しかし、アップセルの場合は、もっと早く提案しなければいけません。
例えば散々迷った挙句、新車のプリウスを買おうと決めた後に「もっと燃費のいい車がありますよ」と言われても、顧客は困ってしまいます。
むしろ「もっと早く言えよ!」と怒るかもしれません。
よって、アップセルするのにベストなタイミングとは、商材を比較検討している段階になります。
購入を検討している段階であれば、アップセル提案をしても顧客はきっと選択肢に入れてくれるはずです。
このタイミングを見逃すと、アップセルを成功させるのはとても難しくなるので注意しましょう。
クロスセルとアップセルにはこのような違いがあることを押さえておきましょう。
クロスセルを新規開拓に使おう!
クロスセールスは新規開拓に効果的と言われています。
その理由は、他社と差別化することができるからです。
例えば、あなたは複合機(コピー機)を提案している会社の営業マンだったとします。
外回り営業する時に複合機だけを提案しても、他社と差別化することが難しいですよね。
なぜかと言うと、全国には複合機の販売代理店がたくさんあるからです。
それらの代理店と差別化する為には、ソリューション内容を変えなければいけません。
例えば、複合機の他にも様々なOA機器を用意して「トータルオフィスソリューション」というラインナップで、お客様にコスト削減を提案することは代表的なやり方だと思います。
このようなケースでは、複合機以外がクロスセル商材になりますが、これらのおかげで他社と差別化することができるので、お客様から支持されることに繋がっていきます。
このように、クロスセル商材は新規開拓営業に使えることが理解できると思います。
クロスセル営業の効果とは?
クロスセル営業をすると、顧客単価を上げることができます。
クロスセル営業には1人の顧客が買う商品数を増やす効果があるので、一人あたりの顧客単価や売上がアップするというメリットがあります。
これがクロスセル戦略最大のメリットだと言えるでしょう。
しかしクロスセルでは、メイン商材よりも高い商材が売れないというデメリットもあります。
例えば、顧客が購入するメイン商品が10万円のパソコンだったとします。
その場合には、3千円のイヤフォンや、1万円のスピーカーだったらクロスセル商材になり得ると思いますが、20万円のパソコンデスクや、15万円のゲーミングチェアを同時に購入してもらうことは難しいと思います。
人は何か目的があって買い物をします。
その目的の商品よりも高い商材をクロスセルすることは、顧客側の心理が追いついてこないので、現実的に難しいのです。
なので、元々買おうと思っていた商品よりも高いクロスセル商材は提案しない方が無難だと思います。
クロスセル商材の値段が高くなるほど、相手は冷静になって考えてしまうので、本来買おうとしていた商品すら見送られる可能性が出てきます。
そうなっては本末転倒なので、クロスセル営業では安くて良く売れる商品に集中することが大切になります。
クロスセルで注意すべきポイント
効果的にクロスセル戦略を実施したいのであれば、商品数を絞ることも大切です。
買うと決まったあとに、次から次へとクロスセルしたりアップセルされると、顧客は押し売りに合っているように感じます。
そのように思われてしまった場合、クロスセル営業は失敗と言えるでしょう。
他にも、クロスセル営業で重要なのが「買ったことを後悔させない」ことです。
後で冷静になって考えたときにも、「買って良かった!」と思えるような、つまり必要なものだけを売るのです。
営業マンとしては売り上げが多ければ多いほど良いのですが、結局お客様が喜んでくれなければ意味がありません。
なので、そのような製品サービスだけを厳選して提案することが望ましいでしょう。
そうすると、結果的に顧客満足度が上がるので、リピーターになってくれたり、別商品を購入することに繋がっていくのです。
電話を使ったクロスセル営業
テレコール営業でもクロスセルやアップセルすることができます。
電話営業も通常のやり方と一緒で、クロスセルの場合には、顧客が購入意思を決めたタイミングで実施するようにしましょう。
ただし、電話営業でセールスする場合には、あまりしつこくならないようにしましょう。
電話の場合は声だけでセールスすることになるので、どうしても押し売り感が出てしまいます。
なのでクロスセル商材を提案して、もしお客様が拒否したら潔く身を引くようにしましょう。
あまりしつこ過ぎると、相手との信頼関係が壊れてしまう恐れもあります。
そうならない為に、引き際をわきまえることが肝心です。
この辺りは感覚なので非常に難しいですが、顧客視点に立ったクロスセルができれば、ある程度は引き際を見極められるはずです。
電話営業ではお互い顔を合わせたり、実際に会うことがない分、「難しい」と感じる営業マンは多いと思います。
しかし、声色や話の流れで引き際を判断することは十分できます。
電話営業の場合は、もし売れないと分かれば、すぐに引き下がることを徹底しましょう。
クロスセル営業する意味とは?
ここまでクロスセル営業について解説してきましたが、クロスセールスする意味について「売上アップの為」と誤解している人がいるはずです。
確かにそれは間違っていないのですが、本質ではないのでここでクロスセル営業する意味について解説しておきたいと思います。
クロスセル営業は、本命商材に関連する別商材を提案するやり方だとお伝えしました。
例えば、お客様がロードバイクを買いたいとします。
一般的なロードバイクには自転車用の鍵が付いてないので、これを買わなければ盗難される恐れがあります。
もしそのことを知らないお客様が、そのままロードバイクを購入して自宅に帰ったとします。
するとお客様は、自転車に鍵が付いてないことに気づきます。
この時の顧客心理は「なんで鍵がないことを言ってくれないんだ!」という不満感と、怒りの気持ちがこみ上げてくることでしょう。
しかし、ロードバイクを購入する際に「この自転車には鍵が付いてないので、一緒に購入しませんか?」と提案していれば、きっとお客様は喜んだはずです。
つまり、これがクロスセールスする本質的な意味なのです。
お客様が利用するシチュエーションなどを想定して、先回りして顧客の課題を解決するようなソリューションを提供することこそ、本質的なクロスセールスの役割です。
そう考えた場合、売上アップということは後付になることが理解できます。
つまり、クロスセールスにおける売上アップとは「結果論」でしかないのです。
これはクロスセル商材を仕入れるときにも同じです。
「どんな商材を提案すれば顧客の課題が解決されるのか?」ということを追求すれば、自然と売上アップに繋がっていくので、顧客が望むようなアップセルとクロスセルを組み合わせて、顧客単価の最大化を目指していきましょう。