
孔子(こうし)といえば、中国を代表する思想家ですよね。
紀元前500年頃に活躍した春秋時代の思想家であり、哲学者ですが、その言葉をまとめた書物が『論語』です。
「日本経済の父」と呼ばれている渋沢栄一も論語が愛読書だったようで『論語と算盤』という名著を残しています。

そこで今回は、論語に記されている孔子の名言をご紹介したいと思います。
数多くの経営者に影響を与えてきた『論語の言葉』なので、ビジネスパーソンは是非ご覧ください。
孔子の論語名言集まとめ
学んで思わざれば則ち罔(くら)し。思うて学ばざれば則ち殆(あや)うし。
<訳>外からいくら知識や情報を得ても、自分で考えなければ物事の本質は理解できない。逆に自分で考えるだけで外から学ばなければ独断的になってしまう危険がある。
これは学ぶこと&考えることのバランスについて語った名言です。
読書する優位性についても触れているので、孔子は読書を推奨しているのがわかります。
たくさん本を読みましょう!

これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らざると為せ。是れ知るなり。
<訳>はっきり分かっていることだけを「知っている」とし、よく知らないことは「知らない」という。このように知っていることと知らないことの間に明確な境界線が引けることを、本当に「知っている」という。
この名言は『自分を理解する』ことを解説した名言です。
どうすれば今の自分が理解でき、どうすれば成長できるかも、この名言で明確になります。
知ったかぶりもなくなるので、自分の無知を謙虚に認められるでしょう。
多く聞きて疑わしきをかき、慎みて其の余りを言えば、則ち尤寡(とがめすく)なし。
<訳>たくさんのことを聞いて疑問点を正し、少しでもこれは怪しいと思うことは口にしないようにすれば、人から咎められることは少なくなる。
人から聞いた情報を全て鵜呑みにしてはいけません。
中には嘘も紛れているので、「あいつの言うことは適当すぎる」と言われるかもしれません。
きちんと情報を吟味しましょう。
朝(あした)に道を聞きては、夕べに死すとも可なり。
<訳>朝正しく生きる道がわかったら、その日の晩に死んでもいい。
これは学ぶ覚悟について語った孔子の名言です。
これぐらいの覚悟があれば、学ぶスピードも速くなるでしょう。
これを知る者はこれを好む者に如(し)かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。
<訳>学ぶことにおいて、知っているだけでは好むには及ばない。また、学問を好む者は、学問を楽しむ者に及ばない。
この名言が言いたいのは『「楽しい!」と思えることをやるべきだ』ということです。
例えば、あなたは仕事を楽しいと思っているでしょうか?
もし思っていないのであれば、「仕事が楽しい!」と思っている人には逆立ちしても勝てないのです。
学は及ばざるが如くするも、猶(な)おこれを失わんことを恐る。
<訳>学問を常に追い求めるが、同時に学んだことを忘れていないか恐れなければいけない。
この名言に出てくる「恐れ」とは緊張感のことです。
毎日知識のインプットを行いながら高みを目指しますが、それと同時に知識が失われていないか確認することも必要だと孔子は語っています。
性、相い近し。習えば、相い遠し。
<訳>人は生まれた時、お互い似ていて大きな差はない。しかし、学ぶか学ばないかによって善にも悪にもなり、差が広がってしまう。
人間は学びの差によって大きな差ができてしまいます。
これは人生の真理なので、学びを疎かにしてはいけないと孔子は語っています。
吾れ十有五(じゅうゆうご)にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰えず。
<訳>私は十五歳で学問に志した。三十歳で独り立ちした。四十歳になって迷わなくなり、五十歳で天命を知った。六十歳で人の言葉が素直に聞けるようになり、七十歳でやりたいことを自由にやっても間違うことがなくなった。
これはとても有名な孔子の名言ですよね。
人生を年代別に区切り、その時どのような人間になっているべきかを指標として語ったのです。
人の生くるは直し。これを罔(し)いて生くるは、幸いにして免るるなり。
<訳>人が生きていくには、まっすぐであることが大切だ。この真っ直ぐさがなくても生きているならば、それはたまたま助かっているだけのこと。
人間の真っ直ぐさとは「誠実さ」のことだと思います。
正直で素直な様子を、孔子は「まっすぐ」と表現したのです。
道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝(げい)に遊ぶ。
<訳>正しい道を志し、身につけたと徳をよりどころとし、私欲のない仁の心に沿って、教養を楽しみその幅を広げていく。
これは学問を修める意味について孔子が語った言葉です。
学問の楽しみ方や活用方法まで教えてくれる名言だと思います。
多く聞きて其の善き者を択(えら)びてこれに従い、多く見てこれを識(しる)すは、知るの次なり。
<訳>できるだけたくさん聞いてその中から良いものを選んで、それに従い、たくさん見て記憶する。真の道理を知ることは難しいが、これならばできる。
これは知識を身につける有用性について語った名言です。
何も勉強をしないで「それは知りません」と言うのと、知識は豊富だけど「そのことは知りません」と言うのはレベルが全く違います。
知るということの価値を見出しましょう!
三年学びて穀に至らざるは、得やすいからざるのみ。
<訳>長年勉強して、官職に就いて報酬をもらおうとするのは簡単だからだ。
これは多くの人が焦って労働に対価を求める様子を注意している孔子の言葉です。
お金ばかりに捕らわれてしまうと、学ぶことがおろそかになるので、それは良くないことだと注意しているのです。
「ひたすら学問に打ち込む人がいても良いではないか」と孔子は語っています。
これを沽(う)らんかな、これを沽らんかな。我はこを待つ者なり。
<訳>売ろう、売ろう。私自身も良い値で買ってくれる人を待つ者だ。
これは孔子の弟子が「ここに美しい宝石があるとします。箱に入れて大切にしまっておくのが良いでしょうか?それとも高値で買ってくれる人を求めて売るのが良いでしょうか?」と質問した時の回答です。
ちなみに、美しい宝石とは「価値のある自分」の比喩です。
それに対して孔子は、この名言のように答えたのです。
ビジネスパーソンとしての”孔子の意外な一面”が垣間見える名言だと思います。
知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼(おそ)れず。
<訳>知識がある人には迷いがない。人格が優れた人には憂いがない、勇者には恐れがない。
これは人間が持つべき『三つの徳』と言われています。
「知仁勇」を三つセットで覚えておきましょう。
速やかならんと欲することなかれ。小利を見ることなかれ。速やかならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば則ち大事成らず。
<訳>早く成果を上げようと思うな。目の前の小さな利益に目を奪われるな。成果を急げば達成しない。小さい利益に気を取られれば大事を成し遂げることはできない。
これは成功を焦らず、目先の利益にとらわれないことを諭した名言です。
「急がば回れ」ということわざもありますよね。
焦りは禁物なので十分注意しましょう。
ことわざの名言集は下の記事をご覧ください。
巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮(すく)なし仁。
<訳>口ばかり上手くて、外見を善人らしく取り繕う人には、ほとんど仁がないものだ。
これはとても有名な孔子の名言です。
人に信用してもらうためには「有言実行」するのがいいでしょう。
人の己を知らざることを患(うれ)えず、人を知らざることを患う。
<訳>自分のことをわかってもらえないと嘆くより、自分が人を理解してないことに気をかけなさい。
人間には承認欲求があるので「人から認められたい」と思うものです。
しかしそれをコントロールすることは難しいので、自己顕示欲を持たない方が良いと思います。
それよりも自分がコントロールできる部分に集中しましょう。
其の以す所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉(ひといずく)んぞかくさんや、人焉んぞかくさんや。
<訳>その人がどう行動しているか、どこを拠り所にしているか、何に満足するか。この3点が分かればその人の本質がハッキリする。決して隠せるものではない。
これが人間の本質を見抜く3つのポイントだと孔子は言っています。
ここでしっかり押さえておきましょう!
君子は周して比せず、小人は比して周せず。
<訳>君子は幅広い人たちと親交を持って、限られた人とだけ付き合うことはない。小人は狭い範囲で付き合い、広く人と親しもうとしない。
これは色々な人と親交を持つ大切さについて語った名言です。
知り合いが増えれば見識も広がるので、自分にとってメリットばかりなのです。
利に放(よ)りて行えば、怨み多し。
<訳>自分の利益ばかり考えて行動していると、人から恨まれることが多くなる。
利己的な振る舞いをするのではなく、人の為に尽くした方が良いと思います。
それが結果的に自分へ跳ね返ってくるのです。
其の位に在らざれば、其の政を謀(はか)らず。
<訳>自分がその地位、役職にないのであれば、その仕事には口出ししないことだ。
これは分別を守ることを推奨した名言です。
特定の地位や役職にいる人は、そのプロフェッショナルだと思います。
それ以外の人(=素人)がプロフェッショナルへ口出しするのは慎んだ方が賢明なのです。
徳は孤ならず。必ず隣あり。
<訳>徳にはいろいろあるが、バラバラに孤立していない。一つを身につければ、必ず隣り合わせにある徳もついてくる。
孔子が立派な人物だと言うポイントは「仁義礼智信」を身につけていることです。
これは「五常の徳」と呼ばれており、下のような意味があります。
- 『仁』:人を思いやり、優しさをもって接し、己の欲望を抑えて慈悲の心で万人を愛すること。
- 『義』:私利私欲にとらわれず、人として正しい行いをし、自分のなすべきことをする生き様。
- 『礼』:人間社会において、社会秩序を円滑にするための礼儀作法。
- 『智』:学問に励み、知識を得て、正しい判断が下せるような能力。
- 『信』:信頼、信用、正直など、人との約束を守り、常に誠実であること。
これらはすべて繋がっていると孔子は語っています。
力足らざる者は中道(ちゅうどう)にして廃す。今女(いまなんじ)は画(かぎ)れり。
<訳>本当に力が足りない人は、途中で力尽きて止めることになる。今お前は自分の限界を設定して、できない言い訳をしている。
これは弟子から「私は力が足りず、なかなか学問を身につけるに至りません」と言われたことに対して、孔子が語った名言です。
自分の限界に挑戦して、それを突破した時に人間は成長するのです。
小人の過つや、必ず文(かざ)る。
<訳>小人は失敗すると、必ず取り繕ってごまかそうとする。
「小人」というのは、人間的に成熟していない人を意味しています。
論語では「君子」と比較してよく使われる表現ですが、自分の失敗を認めず、言い訳する人を「小人」だと孔子は揶揄しているのです。
苗にして秀でざる者あり。秀でて実らざる者あり。
<訳>穂を出さず、苗のままの人がいる。穂を出しても、実らず終わる人もいる。
せっかく才能があるのに、その芽を出さずに終わるのはもったいないと思います。
才能を開花させるためには、学び続けて、チャレンジ(行動)するしかないのです。
如之何(いかん)、如之何と曰わざる者は、われ如之何ともすること末きのみ。
<訳>「これはどうすればいいか」と懸命に考えない人は、私にもどうすることもできない。
学びには主体性が必要です。
それがない人は成長できないのです。
君子は義にさとり、小人は利にさとる。
<訳>君子は物事の道理である「義」が分かっている。その一方で小人は損得が分かっている。
義とは義理人情であり、正義を意味する言葉です。
つまり人の心が動くような感情のことを意味しています。
その一方で、小人には「義」の感情がないので、損得でしか物事を考えられないのです。
仁遠からんや。我れ仁を欲すれば、ここに仁至る。
<訳>仁は果たして遠くにあるものだろうか。そんなことはない。私たちが仁を心から求めるなら、仁はもうここにある。
仁は徳の中でも最高位に位置づけられています。
なので、なんとなく手に入れるのが難しいように感じますが、孔子は「仁はすぐそばにある」と言っているのです。
三軍も帥を奪うべきなり。匹夫(ひつぶ)も志を奪うべからざるなり。
<訳>軍隊を率いる総大将でも倒すことはできる。しかし、その心の中にある「志」を奪うことは誰にもできない。
この名言が伝えたいのは「志(ビジョンや夢など)」を掲げる大切さについてです。
誰にも奪えず、誰にも曲げられない「志」こそが人生の道標になるのです。
何か大事を成し遂げたい場合、絶対に「志」を掲げましょう!
仁に当たりては、師にも譲らず。
<訳>仁を実践する為には、たとえ師匠であっても遠慮はいらない。
ビジネスパーソンは上司に遠慮してしまうかもしれませんね。
でも自分の考える「仁」を実践する為には、他者に遠慮する必要などありません。
議論の出発点は常に対等ということです。
【仁】人を思いやり、優しさをもって接し、己の欲望を抑えて慈悲の心で万人を愛すること。
君に事えては、其の事を敬して其の食を後にす。
<訳>仕事する際は、まず何よりも誠心誠意こなすこと。報酬や待遇は二の次で良い。
これは転職を成功させるポイントだと思います。
営業シークのさの編集長は「創業100年の大手企業⇒創業1年のベンチャー企業⇒独立起業」というキャリアを辿りましたが、ベンチャー企業に転職する際は「君に事えては、其の事を敬して其の食を後にす。」の気持ちでした。
なのでベンチャー企業に転職した30歳でしたが、給料は23万円(手取り20万円)という状態でした。
でも「お金を貰いながら独立起業する為の勉強ができる!ラッキー!」という感覚だったので、金銭の大小は全く気になりませんでした。
己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ。
<訳>自分がされたくないことを、人にしてはいけない。
これは対人関係について語った孔子の格言です。
聞くと当たり前のことなのですが、意外と実践できている人は少ないですよね。
日常的な戒めとして、この言葉は『座右の銘』にピッタリだと思います。
賢を見ては斉(ひと)しからんことを思い、不賢(ふけん)を見ては内に自ら省みる。
<訳>賢明な人と同じになろうと思い、賢明でない人を見て、そうであってはいけないと反省することだ。
これは自己研鑽に使える名言ですが、付き合う人を選別する際にも使えるはずです。
誰とでも仲良くする必要はないので、不賢な人は避けるようにしましょう。
老者はこれを安んじ、朋友(ほうゆう)はこれを信じ、小者はこれ懐けん。
<訳>老人には安心され、友人には信頼され、若い人には慕われるようになるべきだ。
これは弟子から「生き方」について聞かれた時、孔子が答えた名言です。
短くまとまった言葉なので、座右の銘にもピッタリだと思います。
過ちて改めざる、是れを過ちという。
<訳>過ちを認めないのが「本当の過ち」だ。
素直さを忘れてはいけません。
自分の間違いを認める勇気を持ちましょう!
位(くらい)なきことを患(うれ)えず、立つ所以を患う。
<訳>社会的な地位がないことを嘆くのではなく、自分に実力がないことを反省するべきだ。
自分の不遇を他人のせいにしてはいけません。
人生は実力で変えることができるのです。
故(ふる)きを温めて新しきを知る、以て師と為るべし。
<訳>古き良きことに習熟し、新しいものの良さがわかる。そんな人は師になる資格がある。
これは「温故知新」の由来になった孔子の言葉です。
四文字熟語が好きな人は下の記事もご覧ください。
衆これを悪むも必ず察し、衆これを好むも必ず察す。
<訳>多くの人が悪く言ったとしても、良く言ったとしても、それを鵜呑みにせず、必ず自分で調べて考えることだ。
これはリーダーの心得を語った名言です。
間違った判断を下さないように気をつけましょう。
有司(ゆうし)を先きにし、小過を赦(ゆる)し、賢才(けんさい)を挙げよ。
<訳>まず担当の仕事をしっかりさせ、小さな失敗は許す。その上で優秀な人を抜擢するのがいい。
これは人材登用する上でのポイントを語った孔子の名言です。
些細なミスに目くじらを立てるようでは、優秀な人が去ってしまうのです。
義を見て為ざるは、勇なきなり。
<訳>人として当然すべきことしないのは、勇気がないことだ。
これは孔子の論語の中でも一番有名な格言かもしれません。
この名言を『座右の銘』にしている人は多いので、おすすめの言葉だと言えます。

孔子は宗教家であり教育者
ここまで孔子の論語に書かれた名言をご紹介してきました。
孔子は紀元前の人物ですが、その言葉が現代まで語り継がれているということは、やはり価値の高い名言が多いのでしょう。
孔子は儒教(孔子教)の開祖として有名な人物で、その後の学問や宗教に多大なる影響をもたらしました。
そういった意味では『孔子は宗教家であり教育者』だったと言えるでしょう。
孔子の言葉はビジネスのみならず、プライベートでも使える名言ばかりなので、ぜひお気に入りの格言を『座右の銘』にしてください。
もし座右の銘が見つからなかった人は、下の記事もご覧ください。