「営業は気合いだ!」とか「情熱で売れ!」というのは遠い昔の話です。
現代のセールスはもっとロジカルに考えるべきだと思います。
つまり知識を吸収して、それを上手にアウトプットするのです。
そこで今回は、営業活動に使えるフレーミング効果やプロスペクト理論について解説していきたいと思います。
ビジネスパーソン必見の内容なので、ぜひご覧ください。
フレーミング効果とは?
フレーミング効果とは「言い方や伝え方を変えることで、相手が持つ印象を変えることができる」という心理現象のことを言います。
例えば有名なのは「コップの水」です。
「コップの水がまだ半分ある」と「コップの水がもう半分しかない」は、どちらもコップに水が半分入っている状態を意味します。
しかし状態が同じであるにも関わらず、前者が安心感やポジティブな印象を与えるのに対し、後者は焦りや不足といったネガティブな印象を聞き手に与えるはずです。
他にも、かつて金融機関のCMで使われたのが「給与の貯金額」です。
毎月20万円の給料をもらっていても、一人暮らしの社会人は生活がカツカツなはずです。
そのような人から「どうすればお金を貯められますか?」と質問された時のシチュエーションです。
その人に対して「収入の8割で生活してみなさい」とアドバイスすると、ほとんどの人が「それは無理だ」と答えるそうです。
それに対して、「収入の2割を貯金してみなさい」と言うと、多くの人が「できるかもしれない」と思うそうです。
これは両方とも同じことを示唆しているのですが、言い方によって聞き手の受け取り方が真逆になってしまうのです。
この現象は非常に興味深いと思います。
なぜかと言うと、言い回しだけで相手の印象を変えられるのであれば、それは日常生活でも十分応用できるからです。
もちろんそれは仕事にも活かせるはずです。
プロスペクト理論とは?
プロスペクト理論とは、不確実な状況で意思決定を行うとき、意思決定に事実と異なる認識の歪みが作用することを示した理論のことを言います。
これはリスクを伴う状況で「人間がどのような判断を下すか?」についての分析であり、1979年に論文が公表されました。
この論文によって、人間は収益よりも損失に対して敏感に反応し、収益が出ているときは損失を回避するような行動を取る一方、損失が出ているときはそれを取り戻そうと大きなリスクを取ることが分かりました。
例えばテレビCMで使われたプロスペクト理論には以下のようなフレーズがあります。
人は行動した時よりも、行動しなかった時の方が後悔が大きい
これはまさに不確実な事象を損失と捉えた、典型的なプロスペクト理論だと思います。
フレーミング効果やプロスペクト理論は、営業やマーケティング分野でも広く活用されている心理反応です。
人間は常に合理的な考えに基づいて行動を取っている訳でなく、「得をするより、損をしたくない」という考えが強いというプロスペクト理論も、営業やマーケティングで広く用いられています。
「今買わなければ損する」と強調し、顧客にそれを回避したいと思わせるのは、プロスペクト理論を用いた営業テクニックの一つだと思います。
フレーミング効果は印象操作なの?
数字を目立たせたり「無料」や「お得」といったインパクトのある言葉で、顧客に与える印象を操作するのはフレーミング効果の代表的な例だと思います。
そう考えた場合、フレーミング効果は「印象操作である」と言い換えることもできます。
伝えたいことを効果的に、あるいは聞き手にとって分かりやすく伝えるために、いろいろなフレーミング効果が用いられています。
例えば栄養ドリンクの表示方法を例にすると、
- レモン3つ分のビタミン配合
- 60ミリグラムのビタミン配合
では、前者の方が分かりやすく伝わります。
内容を消費者の身近なものに例えることで、消費者はイメージしやすくなるのです。
- 1日200円お得
- 1ヶ月で6,000円お得
も全く同じ内容ですが、後者の方が数字が大きいので「お得感が増す」と言われています。
フレーミング効果はマスメディアによる報道にもよく登場します。
例えば大流行した新型コロナウイルスに関する報道では、感染者数や重症患者数が日々報道される一方、回復した人数についてはほとんど報道されることがありません。
これはネガティブな視点に重きを置くことで、話題性を作ることと、視聴者の緊張感を維持させて感染拡大を食い止めるという目的があるように思われます。
また、新型コロナワクチンに対する忌避反応が大きな話題になりましたが、これはプロスペクト理論における損失回避の考え方で説明することができます。
ワクチン接種を受けるのは、健康な状態の人だと思います。
ワクチン接種しても今の健康状態が何ら改善されるわけではない一方で、可能性は低いものの副反応で健康が損なわれるかもしれないリスクがあります。
このようなケースでは、いわば短期的な損失リスクを避けようという心理が働くようになるのです。