
誰でも「お客様は神様だ!」という言葉を聞いたことがあると思います。
このフレーズはかなり有名な言葉ですが、意味を履き違えて理解している人が多い気がします。
営業職の人がこの認識を間違ってしまうと、とんでもない目に遭うので、この記事で解説しておきたいと思います。
営業パーソンやビジネスパーソンはぜひご覧ください。
「お客様は神様」問題とは?
「お客様は神様である…」
この言葉はある有名な演歌歌手のフレーズがもとになって作られた考え方だと言われています。
しかし本来の意図とは違って、言葉だけが一人歩きした結果、現代では「お客様は偉い!」とか「お客様は王様だ!」という少しねじ曲がった意味で認識されているのです。
これが俗に言う「お客様は神様」問題です。
実際に多くの人が「お客様は偉いんだ!」と勘違いしているので、この考え方を正すのには、大変な労力を要することになると思います。
特に年配者や知識の少ない若年層に多い傾向がありますが、「お客様=王様」と勘違いしている老害もいるのです。
「お客様は神様」になった原因
日本文化は古くから、お客様のことを敬う商習慣がありました。
日頃よくしてくれる取引先や、製品サービスを愛用してくださるお客様を敬うことは当たり前のことだと思います。
しかし、礼儀を重んじる日本文化は、極端なほどそれを表現してしまうのです。
これ自体は日本文化のむしろ「良い部分」だと思いますが、それを逆手にとってしまったのが「お客様は神様」というフレーズです。
この言葉によって「お客様を敬うことは当然」という理解が浸透してしまったため、変な勘違いが生まれたのです。
お客様が神様なのは日本だけ?
お客様のことを神様扱いするのは日本だけなのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
どの国でもお客様は大切にされていますし、丁寧に扱われています。
しかしそれは、「お客様は神様である」という考え方と全く別になります。
顧客を尊重したり、敬うことは海外でも当たり前ですが、神様だと思うのは行き過ぎた考え方です。
例えばアメリカでは、非常にドライの接客が一般的なので、丁寧に扱われることすら少ないと思います。
そのような国では「お客様は神様である」という考え方は馬鹿げていると思われるはずです。
これはその国の文化や商習慣によっても大きく変わってくるでしょう。
「おもてなし」という特異な文化を持っている日本国は、世界中どの国よりもお客様のことを丁寧に扱う国家だと思いますが、お客様に敬意を表するのは全世界共通なのです。
「お客様は神様」では勘違いされる
「お客様は神様である」という言葉は、間違った理解をされていると思います。
つまり、勘違いされているのです。
まず結論から言ってしまいますが、お客様は神様ではありません。
その理由をこれから説明していきたいと思います。
まず「お客様」が出てくるので、シチュエーションとしては営業担当者やサービス提供者が片一方にいる状態だと思います。
例えばあなたが居酒屋に行ったとします。
その居酒屋で生ビール一つと、漬物盛り合わせを頼んだとしましょう。
その時にあなたはどのような注文の仕方をするでしょうか?
横柄な人は「生ビールと漬物盛り合わせちょうだい」と言ったり「生ビールと漬物盛り合わせ」とだけ伝えたりするでしょう。
「お客様は神様なんだ!」と信じて疑わない人は、このような横柄な対応をとるはずです。
しかし本来は「生ビール一つと漬物盛り合わせをください。」と丁寧に伝えるべきですよね。
これが「お客様は神様」という勘違いが引き起こした結果です。
居酒屋とは飲食物を提供するサービス業であって、その商品サービスを受け取るお客様があなたなのです。
つまりそれは下のような関係性ということです。
居酒屋の店員:サービス提供者
あなた:サービス受領者
これはどういうことかと言うと、単なる商取引なのです。
あなたはお金を支払って居酒屋から商品やサービスを受け取ります。
ただこれだけの関係性なので、「あなたの方が偉い」とか「お客様は王様」なんてことは絶対にありえないのです。
つまり、居酒屋はお金が支払われたのでサービス提供をしたにすぎません。
ということは、両者の関係性はフラットであり、優劣が付く関係性ではないことが理解できるはずです。
クレーマーが発生しやすい
「お客様は神様だ」という風に思い込んでしまうと、トラブルが起きやすくなります。
自分自身を「偉い人」と勘違いしているため、少しでも気に食わない対応されると、すぐにクレーマーに変身してしまうのです。
これは「カスタマー・ハラスメント」とも呼ばれていて、現代社会の問題にもなっています。

顧客が一方的に敵意をむき出しにして、謝罪を要求してくるので、店員側は困惑してしまいます。
なぜかと言うと、店員としてはお客様に対してサービスを提供し、本来はその対価を回収するだけなのに、お客様が自分自身のことを神様だと勘違いしているので、それ以上の欲求をしてくるからです。
これが結果的にクレームという形で現れてきます。
しかしそれは独りよがりなクレームだと思います。
対価に応じたサービスの履行がされていれば、本来は顧客がクレームを言う権利はありませんし、お店側にも言われる筋合いがありません。
なので、お店側は毅然とした態度でお客様に接すれば良いと思います。
「お客様は神様です」という言葉を勘違いしているために、発生するクレームはお店にとって有害でしかありません。
しかし、決してお客様を論破したり、言い返そうとしてはいけません。
お客様と喧嘩をしてもメリットなどないからです。
お店側にもお客を選ぶ権利があります。
店内で言い争いをするのではなく、丁重にお断りして、潔く退店してもらうのが良いでしょう。
結論、お客様は神様です。
ここまで「お客様は神様です」という認識が間違って世間に理解されていることや、それが広まっている原因について解説してきました。
このおかしな常識が広まってしまうのは、社会全体にとって悪だと思います。
なので、全ての消費者がきちんとこの言葉の意味を理解し、対応を改めるべきだと思います。
とはいえ、営業職やセールスパーソンにとって、お客様が神様のように見えるのは仕方がありません。
なぜかと言うと、たくさんいる営業パーソンの中から自分のことを選んでくれて、信頼までしてくれるお客様は大変ありがたい存在だからです。
なので、心の底からお客様のことを敬うべきだと思います。
しかし、過度にお客様のことを崇めたり、恐縮する必要はありません。
ビジネスとはあくまでも対等な取引であり、フラットの関係性が前提になります。
「お客様は神様だ」という言葉に違和感を覚えたり、おかしいと感じるのは正常だと思いますが、その考え方を一方的にお客様に押し付けるのはやめましょう。
あなたにお金を支払ってくれるお客様に対しては、多少なりとも敬意を払うべきだと思います。
営業職の人は「お客様は神様」という言葉を鵜呑みにせず、お客様のことを最大限尊重するべきなのです。
