
キックバックやリベートは、使い方によって違法になる可能性があります。
よって、正しい使い方を理解する必要があります。
そこで今回は、キックバックやリベート、賄賂と値引きなどの違いと、その活用方法について解説していきたいと思います。
目次
キックバックとリベートの違い
ニュースや新聞などで、たまに「リベート」という言葉を見聞きすると思います。
一見悪いイメージのあるリベートですが、その正しい意味を理解している人は少ないと思います。
リベートとは、日本独自の商習慣の一つである「割戻し(わりもどし)制度」のことです。
割戻し(わりもどし)制度とは、商品の取引高や売上高など、一定の条件を達成した販売店に対して、メーカーや卸売業者などが支払うインセンティブを意味しています。
またこの報酬は、報奨金や奨励金、また割戻し(わりもどし)金などとも呼ばれています。
バックマージンや割戻しとは違う?
リベートは、利益の中から一定の割合で支払われることが一般的です。
そして売り手側が代金を回収して、一定期間をおいてから、その一部を買い手側に払い戻すという形が多くなっています。
バックマージンやキックバックというビジネス用語もありますが、どちらも割戻し(わりもどし)制度であり、ほとんどの場合リベートと同じに理解されています。
バックマージンやキックバックは、どちらかというと営業職や小売業者が使用する場合が多い表現とされています。
リベートは言葉の響きに影があるとして、あまり良い印象を持たれないこともありますが、ビジネスで交わされるごく一般的な商取引であり、広く活用されている制度になります。
キックバックと賄賂の違い
リベートやキックバックは、「賄賂と同じではないか?」という声があります。
しかし、一定の商品購入などに金銭をキックバックすることや、購入量によって値引きするなどのリベート行為は、決して違法行為ではありません。
あくまでも健全な商取引であり、合法的な日本の商慣習として定着しています。
正式な契約を結び、会計上も適法に処理していれば、リベートやキックバックには何ら問題はありません。
しかし、正式な帳簿に記載されていないような不透明な取引、例えば会社の裏金や個人の口座で行う金銭の授受など、隠蔽を伴う行為は違法とみなされる可能性があります。
そのようなケースでは、横領や賄賂と認識される可能性が否定できません。
政治家や公務員はリベートが受け取れない?
リベートやキックバックは合法的な商習慣ですが、職種によってリベートを受け取ると罪に問われるケースがあります。
例えば、政治家や公務員などがそれに該当します。
政治家や公務員などに対して、職権を用いて便宜を図ってもらう目的で渡す金銭や物品、又は接待などのことを「賄賂」といいます。
賄賂を渡すことによって成立する犯罪を贈賄罪、そして賄賂をもらうことで成立する犯罪を収賄罪と刑法で定められています。
贈賄行為と収賄行為はまとめて「贈収賄」と呼ばれたりもしますが、贈賄罪は独立罪として処罰されます。
実質的に必要的共犯関係あると考えられますが、収賄罪は贈賄罪よりも、罪が重いとされているのです。
リベートと値引きの違い
「売上割戻し」と「売上値引き」は、似ている言葉ですが大きな違いがあります。
売上割戻しとは、リベートやキックバックと同義にされています。
会計上で定義されている割戻しとは、提供される商品・サービスの取引量を基準に判定される値引きをいいます。
それに対して会計上定義されている値引きとは、提供される商品・サービスの質を基準に判定される値引きをいいます。
つまり、たくさん取引してくれたら「売上割戻し」、質の劣った製品を買ってくれたら「売上値引き」という具合になるのです。
また似ている言葉に「割引」がありますが、これは提供される商品やサービスの代金を、あらかじめ決められた期限よりも早く支払うことで安くすることと会計上定義されています。
よって、リベートと値引きの違いは、売上を下げないで粗利を削るか、販売する商品の売上を下げて粗利を削るかという点で判断されます。
「この2つは同じではないか?」と思われる人が多いと思いますが、大きな違いがあるので、ここで具体例を解説しておきます。
リベートと値引きの具体例
値引きとは、販売する商品の売上を下げて粗利を削ることを意味します。
つまり原価20万円、売価100万円の商品を90万円で売るようなことを言います。
それと比較して、リベートは、売上を下げないで粗利を削ることを意味します。
よって、原価20万円、売価100万円の商品を100万円で売って、10万円をキックバックすることになります。
この2つの取引は似ていますが会計的には大きく異なります。
値引き:売価90万円-原価20万円=粗利70万円
リベート:売価100万円-原価20万円=粗利80万円
比べてみると一目瞭然で、リベートの方が会計上の数字が大きくなります。
つまり、外部に対して「年商」などの数字を大きく見せることができるのです。
リベートでは販促費として10万円をキックバックするので、両方とも70万の利益で変わりありませんが、経営者であればリベートの方が魅力的に見えることでしょう。
リベートは「便宜を図ってもらった感謝の証」「達成したことに対する謝礼」として支払われる報酬です。
会計上適性に処理を行えば、リベートは単なる販促費なので全く問題がありません。
ビジネスを円滑に進めるためには、他者の協力が必要な時があります。
そんな時に便利なのがリベートという仕組みなのです。
リベートのメリット
リベートは、インセンティブ制度の一つと考えられています。
インセンティブには、目的を達成するための刺激や誘因という意味がありますが、一般的には成果報酬と解釈されています。
多くの場合ボーナスや報奨金として使われていますが、金銭報酬だけではなく、従業員の士気をあげるための福利厚生や労働環境改善ということも含まれているので、幅広い分野を網羅した言葉だと思います。
メーカーがリベートを導入する目的は、
- 継続的な販売促進
- 販売協力に対する謝礼
- 流通経路のコントロール
などが挙げられます。
対して、リベートを受け取る小売店などの販売業者としては、モチベーションアップに繋がる、また販売価格にも反映できるというメリットが考えられます。
リベートの効果
リベートにはいくつかの種類があります。
例えば、新製品を扱ってもらうために支払う導入リベート、商品の取引量に応じて支払う累進リベートなどがあります。
メーカー側が、リベートを受け取る取引先に応じて、個別にリベート金額を調整して、取引先の利益を補うということも多く見受けられます。
リベートには販売促進の効果や、需要への刺激など適切な競争を刺激する効果があります。
しかし不適切なリベートは、独占禁止法に対する違反行為と見なされる場合もあるので注意が必要です。
リベートが適切か否かの判断指針として
- リベートの水準
- リベートを供与する規準
- リベートの累進度
などがあるので、この辺りはルール決めが必要だと思います。
キックバックが違法になるケース
キックバックやリベート自体には違法性がなく、健全な商行為として認識されていることは先ほどお伝えした通りです。
しかし、キックバックは使い方次第で違法行為になる場合があります。
その一つとして、会社に損失を与えた事例が考えられます。
この辺りは具体例を交えて詳しく解説していきたいと思います。
違法になる具体例
例えばA広告会社の社長Aさんは、下請業者のB印刷店への支払いが、2年前ほどから他の下請業者よりも100万円ほど高くなっていることに気が付きました。
近年忙しくなっており、会計に関してあまり関与していなかったことを反省しつつ、B印刷店が他の同業者に出している請求書を調べてみると、B印刷店はAさんの会社に1割ほど高く請求していることが発覚しました。
そこで、AさんはB印刷店の社長Bさんに確認しました。
Bさんは、A広告会社の社員でありB印刷店の担当者であった社員Cに言われて水増し請求し、その水増し分をキックバックとして社員Cに支払ったことを認めました。
Aさんがさらに詳しく調べると、合計で500万円ほどが水増しされており、そのうち400万円ほどがキックバックとして社員Cに渡っていました。
この件について社員Cを問いただしたところ、キックバックを受け取っていたことを認めました。
この事例では、B印刷店から社員C個人にリベートが入っています。
それ自体は問題ないのですが、このケースでは会社に損害が出ていることが問題になります。
通常の金額を請求した上で、B印刷店が自社の粗利を削って、社員Cにキックバックしていたのであれば違法行為ではありません。
しかし、社員Cにキックバックする分をA広告会社が負担すると、それは所属会社に損害が発生させる行為になります。
つまり「横領」と同じ概念になってしまうのです。
社員Cが自己の利益を図る目的でA広告会社に損失を与えたとして背任罪に、またBさんも背任罪の共犯、また詐欺罪に問われる可能性があります。
キックバックは使い方次第で「違法行為」とみなされるケースがあるので、十分注意しましょう。