外商営業とは百貨店やデパートで活躍している営業職のことですよね。
ただ、意外とその役割や仕事内容は公にされていません。
そこで今回は外商営業という仕事にフォーカスして解説していきたいと思います。
外商の意味とは?
外商営業とは、百貨店やデパートが行っている外回り営業のことを指します。
東京都内で有名な百貨店と言えば、以下のようなお店が代表的だと思います。
- 高島屋
- 松屋
- 銀座和光
- 阪急百貨店
- 東急百貨店
- 京王百貨店
- TOBU(東武)
- 西武百貨店
- そごう
- 大丸
- 松坂屋
- 三越
- 伊勢丹
これらのデパートには外商部という部署が存在していて、そこに所属する外商部員は日々外商営業を行っています。
外回り営業と聞くと、新しいお客様を獲得するためにとにかく訪問数を増やすイメージがあるかもしれませんが、外商営業の場合はそんなことありません。
外商営業とは、特定のお客様のご自宅や事務所に伺って、お客様に寄り添って接客をするのです。
ここでいう特定のお客様とは、数あるお客様の中でも「お得意先(太客)」と言えるような、既存顧客のことを指します。
日本のデパートの起源は、江戸時代の呉服商が始めた陳列式の店舗だと言われていて、今営業しているデパートの中にも呉服商系を発祥としたお店がたくさんあります。
これらのデパートでは店頭で販売することに加えて、お客様の元に訪問して注文の商品をお届けしたり、おすすめ商品を持参して販売するスタイルを取っていました。
そんな商法が受け継がれた外商営業ですが、お客様の数が圧倒的に増えた現在のデパートでは、全てのお客様に外商営業をかけることは難しいため、商品を買ってくれる可能性が高い一部の富裕層をメインターゲットにしているのです。
外商部の役割とは?
外商部の役割とは、前述した通り、外回り営業でお得意様に高額商品を買ってもらうことです。
ただ、外商営業にも大きく分けて2種類の部門があり、それぞれ対応するお客様と仕事の内容が全く異なります。
1つ目は法人外商部で、こちらは文字通り企業や会社を相手に営業する部門です。
個人のお客様を相手にするのと違って、高額な商品を販売するというよりは、お歳暮やお中元などのギフトを大口注文で引き受けたり、ノベルティグッズや記念品の注文を受けたりすることが多いです。
個人向けの外商とは?
個人外商部とは、店外でお得意様に対して商品販売する部署のことをいいます。
外商と聞くと多くの人が思い浮かべるのは、こちら側のイメージだと思います。
同じお客様を定期的に訪問することで、お客様の好みや家族構成などを把握して、そのお客様に気に入ってもらえそうな商品を担当の外商部員が提案していきます。
特に購買力が高いお得意様にターゲットを絞ることで、効率的な接客が実現できるので、商品を購入してもらえる可能性が高まることが特徴だといえます。
お客様の希望する商品が入手困難な場合でもお取り寄せ対応したり、顧客との信頼関係を少しずつ構築していきます。
外商営業の場合は、店頭とは違う柔軟な対応ができるため、高額商品が売れやすいという特徴があります。
富裕層を相手にする個人向けの外商営業では、新規開拓営業も活発に行われているので、セールスが得意な人にはお勧めできる仕事です。
外商回しするメリットってなに?
「外商回し」という言葉をご存じでしょうか?
外商スタッフが付くお得意様は、デパートや百貨店内でお買い物をする際、外商回しにすることができます。
外商回しとは顧客が買い物をした際、
- 担当の外商部員の名前を出する
- 「お回しで」と意思表示する
ことを言います。
お得意様が外商回しにすることで、担当者(外商部員)の営業成績に加算される仕組みなので、担当者にとっては是が非でもお願いしたいのが「外商回し」になります。
一方で顧客側にも、「外商回しにしておけば、購入した商品を後日担当者が自宅まで届けてくれる」というメリットがあります。
購入したズボンの裾上げや時計の修理など、受付をしてからサービス完了するまで時間がかかる場合でも、いちいち待たなくて済むというメリットがあるのです。
お客様が外商回しにすることで、担当者のモチベーションアップにも繋がるので、各種優遇を受けやすくなる期待感もあります。
例えば、デパートで取り扱いのない商品のお取り寄せや、高額商品の割引などをしてくれる可能性もあるのです。
外商回しにするのは少し面倒かも知れませんが、外商部員にとってもお得意様にとっても信頼関係を築く上で大切なことだと言えます。
ただ令和時代に突入してから、大手百貨店では「外商回しを推奨しない」ように変化してきており、面前決算が基本になっています。
なので、もしかしたら外商回しという商習慣は、今後無くなってしまうのかも知れません。
顧客(お客様)との付き合い方
お客様との信頼関係を築くために、お得意様と外商部員はどのように付き合えば良いのでしょうか?
まず、大切なことは「お得意様に不快な思いを絶対させない」ということです。
外商の場合は、店舗での接客と異なり、お得意様と非常に近い距離で接することになります。
そのため、必要最低限のマナーは当然身につけておきましょう。
例えば、
- 清潔感があったり
- 礼儀作法ができていたり
- ビジネスマナーができている
ことは必要最低限求められます。
また、言葉遣いにも気を付けなければいけないので、ある程度のコミュニケーション能力が必要です。
お得意様との会話が弾まなければ、接客時に居心地が良くないですし、お客様も心を開きにくいものです。
お得意様のニーズを的確に汲み取るためにも、楽しみながら会話をして、その時その時で最適な提案ができるように準備しておきましょう。
お得意様に合った商品の提案をするためには、
- お得意様の好み
- 趣味
- 仕事や職業
- 家族構成
- 生活スタイル
などをしっかり把握しておく必要があります。
しかし、いきなり相手のプライベートに土足で踏み込みすぎることは良くありません。
プライベートの境界線は人によって様々です。
ご自宅にお伺いし、かなり近い距離で接客をするからこそ、その境界線はきちんと見極めるようにしましょう。
「親しき仲にも礼儀あり」という言葉があるように、顧客との距離感を図りながら、少しずつ距離を縮めていくことが大切だと思います。
外商とは”御用聞き営業”である
ここまで読んできた人は、外商とはいわば「御用聞き営業」であることが理解できたと思います。
お得意様に喜んで頂けそうな商品を選び、提案するというソリューション営業ですが、これは仕事内容のほんの一部になります。
お得意様が「どうしても欲しい!」という商品があれば、デパートで取り扱いがない商材でも手配したり、取り寄せすることもしばしばあります。
ご家族のお誕生日やお祝い事など、イベント毎にコンシェルジュ的な役回りをしていくので、これだけを聞くととても大変そうな仕事に思えるかもしれません。
しかし、一つ一つの要望に出来る限り真摯に向き合い、お応えしていくことでお得意様との信頼関係は確実に強くなっていきます。
苦労をして提案するからこそ、お得意様もその姿勢を評価してくれて、結果的に商品を購入してくれるのです。
何でも揃っているデパート(百貨店)だからこそ、お得意様の要望を実現できるという強みがあります。
営業のやり方をお得意様ごとに変えなければいけないので大変ですが、その分商品を購入してもらった時の嬉しさはひとしおです。
また、さらに強い信頼関係を築くことができれば、世代を超えたパートナーにもなれるでしょう。
こうした観点では、百貨店の外商営業は究極の営業スタイルなのかも知れません。