豆を煮るに豆がらを焼く
豆は釜の中に在りて泣く
本是れ同根より生ぜしに
相煎ること何ぞ太だ急なる
訳)鍋の下では豆の茎が燃えて、鍋の中では豆が煮られて泣いている。豆も豆の茎も、元は同じ根から生まれた兄弟同士なのに、豆の茎はどうしてこんなにも激しく豆を苦しめるのだろう。
<曹植>
三国志で有名な曹操の息子には、曹丕(そうひ)と曹植(そうち)の二人がいました。
曹操の死後、王座に就いた兄の曹丕でしたが、父から愛されていた弟である曹植のことを恨んでいました。
そんな中、弟の曹植は、兄である曹丕を『豆の茎』に例え、弟である自分のことを『鍋の中の豆』に例えてこの ”詩”を読みました。
実の弟に対して酷い仕打ちをする曹丕に”詩”で抗議した結果、曹丕は大いに反省したそうです。
天地は万物の逆旅(げきりょ)にして、光陰は百代の過客なり。
訳)天と地は万物が一夜を過ごす旅館であり、時間は天地の間を旅する永遠の旅人である。
<李白>
とても美しい表現の詩ですよね。
人間の生命は『永遠の命を持つ時間と比べれば短くて儚い』と語ったのです。
年年歳歳 花相似たり
歳歳年年 人同じからず
訳)花は毎年同じように咲くけれど、花を愛でている人は毎年同じではない。
<劉希夷(りゅうきい)>
花は毎年美しく咲きますが、それを見る人間は入れ替わっています。
つまり生と死があるということです。
美しい対比の影に、人間の生命の儚さが隠れているのです。
歓楽極まりて哀情多し
少壮幾時(しょうそういくとき)ぞ 老いを奈何(いかん)せん
訳)幸せが絶頂に達すると、かえって胸の中に悲しみが湧いてくる。若くて元気でいられる時は、あとどれぐらい残っているのだろう。やがて来る老いをどう受け止めたらよいのだろう。
<漢の武帝>
頂点を極めてしまうと、後は下がるしかありません。
良い事が続くこともなければ、悪いことが続くこともないのです。
刀を抜きて水を断てば水は更に流れ
杯を挙げて愁(うれ)いを消せば愁い更に愁う
訳)流れる水を刀で断ち切ろうとしても、水はサラサラ流れ続けるように、酒で憂さ晴らしをしようとしても、悲しみは次から次へと湧きあがってくる。
<李白>
河島英五の「酒と泪と男と女」が脳内再生されるような名言ですよね。
色褪せない名曲なので、ぜひ聞いてみてください。
前に古人に見ず
後に来者を見ず
訳)自分が生まれる前に亡くなった人に会うことはできない。自分より後に生まれてくる人にも会うことはできない。
<陳子昂(ちんすごう)>
理解者を求める孤独感が漂ってくる言葉ですが、それが逆に腹をくくる要因にもなっています。
つまり『誰にも頼れない』と腹をくくれば、自分一人で成し遂げようと頑張るはずです。
そのような勇気をくれる名言だと思いますが、『勇気をくれる名言』が知りたい人は下の記事もご覧ください。
国破れて山河在り
城春にして草木深し
訳)戦争によって国は破壊されたが、山河は昔のままそこにある。街にはいつもと同じように春がきて、草木を青々と茂らせている。
<杜甫>
これはとても有名な詩ですよね。
たとえ国が朽ち果ててしまっても、そこには自然があり、強い生命力を感じることができるのです。
海内 知己存す
天涯 比隣の若し
訳)この国のどこかに真の友がいると思えば、地の果てに別れていようとも、隣同士みたいなものだ。
<王勃(おうぼつ)>
心の中で繋がっていれば、物理的な距離は関係ないということです。
「天涯(てんがい) 比隣(ひりん)の若(ごと)し」と言えるような友人を作りましょう!
人生 相見ざること
動(やや)もすれば参と商との如し
訳)離れ離れになった友人との再会は、夏の星座と冬の星座が夜空で出会うのと同じくらい難しい。
<杜甫>
参(オリオン座の星)と商(サソリ座の星)が夜空で出会う…
とてもロマンチックな表現ですよね。
昔は携帯電話がなく、インターネットもありませんでした。
手紙を送っても明日到着することはないので、この詩のような現実があったのでしょう。
君に勧む 金屈巵(きんくっし)
満酌(まんしゃく) 辞するを須(もち)いず
花発いて 風雨多し
人生 別離足る
訳)君に黄金の杯を勧めよう。なみなみと注いだ酒をどうか断らないでくれ。花が咲けば風雨に散らされてしまうように、出会いに別れはつきものだから。
<于武陵(うぶりょう)>
友人との出会いを楽しんでいる様子が伝わってきますよね。
昔は、一度離れるとなかなか再開できなかったので、『一緒の時間を大切にする』という気持ちが強かったのでしょう。
まさに”一期一会の精神”ですが、この気持ちを現代人も持つべきだと思います。
言わんと欲して予(われ)に和する無く
杯を揮げて孤影に勧む
訳)誰かに話しかけたいと思ったが、答えてくれる人がいないので、盃を上げて自分の影に酒を勧めた。
<陶潜(とうせん)>
真夜中、月に照らされた自分の影へ酒を勧める…
情緒溢れる酒盛りですよね。
個人的には、とても好きな詩です。
夫れ美は自ら美ならず。
人に因って彰(あらわ)る。
訳)美しいものは、最初から美しいものとして人々に認識されているのではない。誰かが、その美を発見することによって、初めてその美しさが人々に認識されるのだ。
<柳宗元(りゅうそうげん)>
なんとなく哲学的な名言ですよね。
パブロ・ピカソはキュビスム(キュビズム)の創始者として有名ですが、最初に見た時は誰もが「不細工な絵だ!」と思うはずです。
しかしキュビスムの奥深さを知ってしまうと、その美しさに感銘を受けるはずです。
このような事例は多いと思うので、『美』についての感性を磨いていきましょう!
中国には名言が多い
ここまで中国4000年の歴史が作り上げた名言集をご紹介してきました。
他にも有名な言葉や格言はたくさんあるので、もし座右の銘を探しているのであれば、下の記事もご覧ください。